特別対談「新課程における数学の指導について」

特別談話「新課程における数学の指導について」

 「BRIDGE高校シリーズ」(高校学習準備教材)で行ったアンケート結果から,新課程では「大学入試がどう変わるのか」「言語活動の充実を授業にどう取り入れていくのか」について先生方の関心が強いことがわかりました。
 また,初期指導では「自主的・自律的生徒の育成」「学習スタイルの確立」「入学時の意欲の維持」について特に関心が強いことがわかりました。
 今回は,新課程における数学の指導について,甲南女子中高等学校の谷口昭男先生に伺ったお話しをご紹介します。
新課程で留意しておきたいこと - 数学における言語活動の充実とは - 新課程入試に向けて考えられる授業の進め方 授業を中心とした学習スタイルを確立させるための取り組み

新課程初年度の1年生を教えられた先生への進度・指導法に関するヒヤリング結果報告
新課程「気になること」「初期指導のポイント」アンケート結果報告


第一回:新課程で留意しておきたいこと - 数学における言語活動の充実とは -

新課程において,数学の指導法に変化はありますでしょうか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男 甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 まず初めに思ったことが数学も言語活動を導入しなさいという点。国語や英語などの言語習得教科については,指導の中でどのように取り入れるかイメージしやすいですが,数学の授業の中で取り入れるとしたらどのような指導になるのかということです。
 授業の進め方や履修範囲についての声は聞きますが,言語活動についてどのように取り入れるのかの声はあまり聞かないです。評価観点がないのでどのように実践すればよいか難しいというのが本音です。

それでは,谷口先生がお考えになる数学における言語活動とはどのような指導をイメージされますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 数学での言語活動の部分は,答案力だと思います。
 いわゆる解答を導く力。答案が組み立てられていてしっかり書けている状況が言語活動になるのではないかと考えます。そう考えると,以前から実践していることではないかという意識です。新課程でなくてもそれは重要なことではないかと思います。知り合いの教師がよくおっしゃるのですが「恋人に読んでもらうような答案を書きなさい」と指導していると。いわゆる心のこもったという意味です。そういうことではないかなと思います。

授業でどのようなことを心がけていらっしゃいますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 例えば前任校で実践したことは,演習の時間に生徒が問題を解き,その解説を生徒自身が行う。クラスのみんなに発表するわけです。「こうやって僕はこの問題を解いて,こういうふうに解答して,こういう結果を得ました。この時にこういう公式を使って」というように。そうすると,その説明を受けている他の生徒から「次の行に書かれている式の理由がわからない」などの質問が投げかけられる。説明している本人は自分の解説ですので,自分自身ではわかっているつもりですが,説明を受けている生徒には伝わらないのです。「ここはこういう理由です」と説明が入り,「その説明は書くべきじゃないですか」などのような,授業を実践したりしていました。
 大学入試においても,採点者に伝わる解答を書くことが重要です。自分では理解していてもその意図が試験官に伝わらなければ,それは解答したということにはならないのです。このような場を与えてあげることで,自分の意思を伝える勉強にもなりますし,大学入試で必要な答案力も養成できるのではないかと考えます。

その時の生徒さんの反応はいかがでしたか。

谷口
 低学年で基礎学力が固まり,入試レベルの問題を解き始めると解法に変化があらわれます。
 もちろん答えが出ない生徒もいます。その時は「もう少し見方を変えてみよう」とか,誘導をかけてあげながら説明をしていきます。決して私からは解答を書かない。ヒントを与えながら自分で解答を導くプロセスを身につけさせる。授業時間の制限などから教師側ですべて説明して終わりということもあるかと思いますが,それは生徒のためにはならないと考えます。1問を解くのに1時間かかることもあります。
 問題の数をこなすことも重要ですが,生徒の力を本当に伸ばしてあげようとするならば,このような時間もあってもいいのではないかと思います。



3年間の計画的な指導のスタートに!BRIDGEシリーズ

数学Aをまんべんなく,さらっとこなすために「サクサク完成ノート」


生徒さんを主役にして授業を展開されているのですね。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 生徒同士の学びあいを大切にしたいと思っています。先ほどの例の続きではないですが,AくんとBくんを事前に指名して,授業が始まる前に黒板に解答を書かせておき,授業の中でそれぞれに説明してもらう。
 「僕はベクトルを使いました」「僕は図形と式でやりました」と。お互いの解法を見比べながら,どっちがいいって,説明を聞いた他の生徒にアンケートまですることもあります。決して私はその解説に対し批評もしません。クラスのみんなに説明することで新たな気づきがあり,知識が深まる。また「他の解き方はないですか」と私から生徒に聞き,出てこなければ説明する。するとさらに気づきを与えてあげることができます。そのように生徒自身が身に付けた知識は最後の最後に大きな力になります。
 新たな気づきを与えてあげることはすごく大事なことだと思います。

もう少し具体的に教えていただけますか。

谷口
 例えば「3次方程式  の実数解の個数を調べる」という問題で言いますと,「どんな解法が思いつく」「因数分解ができるかどうか着目してみよう」「グラフの利用も考えられるね」「微分してみよう」と生徒に投げかけます。黒板に私が答えを書くのではなく,解法の途中で生徒を指名しながら解答を一緒に作りあげていく。これが最初に言いました言語活動につながるのではないかと思います。
 もちろん数学Ⅱの範囲ですから,文系と理系のどちらのクラスでも学ぶ範囲です。この内容を習う時期にはある程度クラス選択が決まりつつありますが,どちらのクラスにも数学Ⅲの範囲で解ける「定数分離  」という解法にもふれるようにしています。そうすることで,文系の生徒には「こんな解き方があるのだ」,理系の生徒には「このあともっと深い演習があるのだ」というと気づきと学びへの意欲を与えることができると考えます。もちろんすべての分野で行うわけではないですが,私自身も生徒にとって刺激のある授業を展開していきたいと思っていますので,機会があれば実践することをこころがけるようにしています。
 「今教えても理解できない」,「このあとの授業で詳しく触れるから今は扱わないでおこう」と言うのは教師側の判断であり,生徒にとっては「もっと知りたい」と思っているかもしれません。大事なことは学ぶ機会があれば,その機会をきちんと与えてあげるということです。教師側で摘み取ってしまってはいけないということです。




進路指導の観点で実践されることはありますか。

谷口
 核となるような生徒,牽引してくれるような生徒をクラスに1人育てると数学の力は一気にあがります。その生徒をきっかけにクラスがまとまりますから,他教科へもいい影響を与えてくれます。
 数学でいいますと,核となる,クラスを牽引してくれるような生徒を育てる方法として,例えば学力コンテストに参加させるというようなことをします。
 難関大学を目指すような生徒に問題を渡します。「この問題解けるかな。みんなで相談して取り組んでみたら」と投げかけるのです。そうするとその生徒を核にして2,3人生徒が集まりその輪が4,5人となる。それが楽しいみたいです。言いあいながら解く中で「学力コンテストに出したらいいよ」と伝える。「学力コンテストってなんですか」と生徒とやりとりをしている中でそのクラスに核ができてきますね。その核が2人が3人,3人が4人,4人が5人になってくると,そのクラスの数学力が上がる。そのようにしてクラス運営をしていくこともあります。



3年間の計画的な指導のスタートに!BRIDGEシリーズ

数学Aをまんべんなく,さらっとこなすために「サクサク完成ノート」


クラスの核となる生徒を育てるために気をつけることはありますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 やはりコミュニケーションです。教師と核となる生徒と。その生徒は生徒同士との。
 教師側からすべて説明して,答えを与えるだけではいけないですし,まかせきりもいけません。
 生徒との距離感を保ちながら,任せるところは任せて,進行度合いをみながら声をかける。例えば「先生になりたい」と将来考えている生徒をクラスの核に育てるということも考えられると思います。クラスの前で発表する機会を設けてあげることで,先生の気分を少し味わえたという感覚が,積極的にクラスをまとめてくれたりします。生徒にそのような体験をさせてあげるには、生徒との対話をもとに,日頃からどのようなことに興味を抱いているのかを気にかけておくことが重要だと考えます。

新課程で気をつけておくことなどありますか。

谷口
 新課程1年目はとくに高校入学前の中学校での学力格差が広がる可能性があるという点は気になります。中学校によって発展的な学習まで扱っている学校とそうでない学校があります。どこまで扱うかは各中学校が決めますので,高校入学時点で履修範囲に差がついているというのは仕方のないことです。その見極めをどうするのか課程が変わる度に課題を感じていました。私は,多くの先生も実践されているかと思いますが,高校入学前に宿題を与え,春休み明けのテストを行い,テストの出来を見ながら面談を実施します。しかしこれは新課程に関わらず,生徒の学力把握は課題であり,教師が気になるところでもあります。課程が変わると何か大きな変化の波にのまれて,指導法を変えなければいけないのではないかという危機感に迫られますが,私が思うことは,さほど変える必要はないのではないかということです。
 ですので,新入生には「中学4年生じゃないよ。高校1年生だよ。変わらないとだめだよ。まずは変わることをしてください」というメッセージをきちんと伝えること,このことが今まで以上に大切ではないかと思います。


甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 また,授業を進めるうえで気をつけておきたいことは,今回の新課程では特に数学Ⅰ・Aでは分量が増えましたので,シラバスをきちんと作るということが重要になると思います。単位数に比べて教科書の内容量をみると明らかに例年どおりで予定をしていると,大きく変更しなければいけないことが発生すると思いますので,今までの授業展開を見直して,新課程用に組み立て直す必要があるのではないかと思います。これまでと同じ授業の進め方では通用しなくなるかもしれないという感覚を持たなければならないということです。


課程の変化に関わらず,教師と生徒,また生徒と生徒のコミュニケーションを大事にしながら,今まで以上に生徒に目を配りながら学ぶ意欲やモノの考え方,気づきを与えてあげることが重要であるということですね。どうもありがとうございました。


→「第二回:新課程入試に向けて考えられる授業の進め方」を読む


3年間の計画的な指導のスタートに!BRIDGEシリーズ

数学Aをまんべんなく,さらっとこなすために「サクサク完成ノート」


この度は,ラーンズリポートをご覧いただきありがとうございました。
谷口先生へのメッセージをお待ちしております。また新課程に向けての取り組みやご意見等ご自由にお寄せください。
今後こんな情報発信をしてほしい等のご要望もあわせてお待ちしております。
 谷口先生へメッセージを送る

ページトップへ