特別対談「新課程における数学の指導について」

特別談話「新課程における数学の指導について」

 「BRIDGE高校シリーズ」(高校学習準備教材)で行ったアンケート結果から,新課程では「大学入試がどう変わるのか」「言語活動の充実を授業にどう取り入れていくのか」について先生方の関心が強いことがわかりました。
 また,初期指導では「自主的・自律的生徒の育成」「学習スタイルの確立」「入学時の意欲の維持」について特に関心が強いことがわかりました。
 今回は,新課程における数学の指導について,甲南女子中高等学校の谷口昭男先生に伺ったお話しをご紹介します。
新課程で留意しておきたいこと - 数学における言語活動の充実とは - 新課程入試に向けて考えられる授業の進め方 授業を中心とした学習スタイルを確立させるための取り組み

新課程初年度の1年生を教えられた先生への進度・指導法に関するヒヤリング結果報告
新課程「気になること」「初期指導のポイント」アンケート結果報告


第二回:新課程入試に向けて考えられる授業の進め方

新課程入試について今後の展望など,考えられていることはありますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男 甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 大学入試がどのように変わるのかということがはっきり見えていない,というのが本音です。ある程度はこうなるのではないかという考えはありますが,その考えにもとづいて授業で実践できているのかと言われますとできていないのが現状です。例えば,センター試験で言いますと,今回新しく加わった「データの分析」はどのように出題されるのかと考えた時に,出題のカタチが見えないと,どこまで教えておけばよいのかということになります。「整数の性質」についても同じことが言えます。
 必答と選択,得点配分などフレームは変わるとは思いますが,問い方は変わらないと思います。新課程だからといってセンター試験が大幅に変わることは考えにくいと思います。
 また,言語活動について大学入試で何か変わるようなことは考えにくいです。推薦試験での口頭試問,教員採用試験のような模擬授業をすることなども考えられますが,実現はされないように思います。

大学入試を見据える中で,授業を進めるうえで気をつけることはありますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 おそらく1年生を担当されている多くの先生方が一番悩まれているのが,数学Aの履修をどのように選択するのかということではないでしょうか。「整数の性質」を扱うのか,「図形の性質」を選択するのか,「確率」は入試を考えると必要になるのかということだと思います。3分野をすべて授業で指導するとなると,気付けば授業時間が足らず,予定通りに教科書が進んでいない,例年より遅れているというのが現状では無いでしょうか。先ほど申しました通り,大学入試のカタチが見えていない状況ではどこまで教えるべきか,つねに迷うところでもあります。私の経験から伝えられることがあるとすれば,まず教科書に書かれていることをまんべんなくさらっとこなしていく,それが重要ではないかと考えます。

もう少し具体的に教えていただけますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 数学Aについては3分野のうち2分野を選択することになっていますが,生徒の知見を広げてあげるという意味で,また3年後の大学入試を考えた場合でも,3分野をすべて扱う授業時間が確保できるのであればできるだけ3分野を選択される方がいいと思います。1年生では2分野のみを扱って時間に余裕ができた3年生や,大学入試のカタチが見えだしてから扱おうという考え方は避けた方がいいと思います。その学年で教えることは当該学年できちんと教えてあげることが大切ではないかと思います。数学は繰り返し学ぶことで定着していく部分もありますから,その問題に触れる機会があればその時期に触れておくことで,のちの演習時に指導を行ったり復習をしたりする時間を多く割く必要が無くなります。また、後回しにすることで結局指導をする時間を確保できなかったということが,新課程では今まで以上に起こり得る可能性があると考えるからです。


3年間の計画的な指導のスタートに!BRIDGEシリーズ

数学Aをまんべんなく,さらっとこなすために「サクサク完成ノート」


どのような進め方が考えられますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 「整数の性質」を扱うのか,それをどのように指導するのかということにはあまり気にせずに,教科書に書いていることだけを,まんべんなく流していくということです。本当に深く学びたい生徒に対しては,補習やプリントなどを用意してあげて手当てをしてあげるなども考えられます。最初から全員対象に,しっかり指導をすると1年生で数学嫌いを増やすようなものです。そういう意味での流していくという意味です。


谷口
 例えば,「図形の性質」では証明に深入りせず,今後「ベクトル」で扱うとか必要性のあるところをしっかり指導する。言葉の定義,これだけでもきちんと教えることが大切ではないかと思います。「方べきの定理」「メネラウスの定理」「チェバの定理」などの言葉が入ってきます。数学Bで「ベクトル」を学ぶ際に,数学Aの教科書持ってきてそこまで戻って復習するということは,できないと思います。
 「整数の性質」については,他分野に大きくつながらないので,同様に知識と言葉だけをしっかり習得させる。例えば「不定方程式」などは軽く触れておく程度でいいと思います。




扱う内容が増え,授業時間の確保もなかなか難しいとは思いますが。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 授業時間の関係などで,数学Aで3分野すべて選択できない学校もあるかと思います。その際に教師側が「整数を教えるのが好きだから,『整数の性質』を選択しよう」という選択の仕方ではいけないということです。それでは数学嫌いの生徒を増やすようなものです。高校入学時はどの生徒も意識が高く,苦手な数学でも授業に頑張ってついていこうとします。苦手と嫌いでは大きく意味合いが違います。教師側の指導のモチベーションの1つとして,アンケートでも「大学入試がどのように変わるか知りたい」という意見が多かったように,大学入試の出題分野にあると思います。しかしそれは教師が大学入試に向かうのではなく生徒が向かうものであります。生徒が何に興味を抱いて,進学をしようとしているのか,ということを欠落させてはいけません。教師側の判断だけではなく,今まで以上に生徒に目を配り授業を進めていくことが大事ではないかと思います。
 今の段階で色々考えても前には進みません。どの学校も同じ悩みを抱え,与えられた条件は変わらないということを忘れず,大学入試のカタチが見えてくるまで,まずは限られた授業時間の中で,教科書に書かれていることを,特定分野に深入りせず「まんべんなく進める」,これが大事ではないかと思います。数学嫌いの生徒を増やさないように。


大学入試のカタチがある程度見えてくるまで,条件はどの学校も一緒なので,教科書を一通り
当該学年で進める事が大切であるということですね。どうもありがとうございました。


→「第三回:授業を中心とした学習スタイルを確立させるための取り組み」を読む


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この度は,ラーンズリポートをご覧いただきありがとうございました。
谷口先生へのメッセージをお待ちしております。また新課程に向けての取り組みやご意見等ご自由にお寄せください。
今後こんな情報発信をしてほしい等のご要望もあわせてお待ちしております。
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