特別対談「新課程における数学の指導について」

特別談話「新課程における数学の指導について」

 「BRIDGE高校シリーズ」(高校学習準備教材)で行ったアンケート結果から,新課程では「大学入試がどう変わるのか」「言語活動の充実を授業にどう取り入れていくのか」について先生方の関心が強いことがわかりました。
 また,初期指導では「自主的・自律的生徒の育成」「学習スタイルの確立」「入学時の意欲の維持」について特に関心が強いことがわかりました。
 今回は,新課程における数学の指導について,甲南女子中高等学校の谷口昭男先生に伺ったお話しをご紹介します。
新課程で留意しておきたいこと - 数学における言語活動の充実とは - 新課程入試に向けて考えられる授業の進め方 授業を中心とした学習スタイルを確立させるための取り組み

新課程初年度の1年生を教えられた先生への進度・指導法に関するヒヤリング結果報告
新課程「気になること」「初期指導のポイント」アンケート結果報告


第三回:授業を中心とした学習スタイルを確立させるための取り組み

学習習慣の確立について何かご意見はありますでしょうか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男 甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 私自身の指導法は教育課程が変更されても変わってはいません。多くの先生方がアンケートでお答えになられているように,「自学自習の習慣」や「授業を中心とした学習の確立」については,どの教育課程でも教師の気にかかるテーマです。それは教師も生徒も何をすればよいのか,具体的な答えをもっていないからだと思います。例えば「予習」にしても,「生徒が何をすればよいですか」と相談されて「教科書を読みなさい」と指導されている教師を見てきました。しかし「苦手としている生徒が,教科書を開いて読むだろうか」そんな思いを抱いておりました。

谷口先生がお考えになる予習とは。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 数学の場合は,予習を習慣化させることはなかなか難しいと思います。例えば英語のように,辞書で単語の意味を調べて,英文を読むなどのことが数学ではなかなか出来ません。書いていることがわからないですから。「方ベきの定理」と書かれているのを見て「???」になると思います。これからのことを勉強してきなさいと言われた時に,生徒たちは何をすればいいのか,迷うのではないかと思います。

予習や復習を習慣化させるために具体的に実践されていることはありますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 「予習・授業・復習のサイクルが大事」と最初に指導をしますが,実際に継続して行うのは4月,5月ぐらいまでではないでしょうか。逆にサイクルができれば習慣化していきます。そのために私が実践していることは,入学後,最初の授業で生徒に対し「私の授業はプリント学習法です」と言い,使い方とあわせて生徒へ説明します。また「中学と高校では勉強の早さと量が大きく変わるから意識を変えるように」とあわせて伝えます。

図1 PDF(図1)を開く

谷口
 実際に生徒へ配るプリントは(図1)です。「予習」で何をすればよいのかわからないと言う生徒がいる一方で,予習を行ってきた生徒たちの理解力が高いということは授業をしていて感じる部分でもあります。ですので,何か作業をさせないと予習はできないのではないかと思い,プリント学習を実践しています。


3年間の計画的な指導のスタートに!BRIDGEシリーズ

数学Aをまんべんなく,さらっとこなすために「サクサク完成ノート」


具体的な活用方法を教えていただけますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男 図2 PDF(図2)を開く

谷口
 この「予習プリント」では,生徒が教科書を見ると空欄が埋まるようになっています。このプリントを次の授業の前に生徒へ渡し,生徒はこのプリントを切ってノートに貼って予習を行う。教科書を見ながら空欄を埋める作業です。授業を行う前に何名かの生徒のノートを見れば「今日の授業は説明まで深くせずに進めていけそうだ。問題演習を少し多めにしよう」「あまり空欄が埋まっていない。少し丁寧に説明しよう」など授業のメリハリをつけることが可能です。授業中に生徒から「もうここの空欄は埋まっているから,もっと他のことが聞きたい」などの声があがる時もありますので,発展的な内容を少し入れたります。このプリントは最低限の内容でこれだけは理解しようという位置づけにしています。後は私が生徒の反応をみて,応用問題を入れたり今日はこちらでいこうとか,ここは理解してないからもう一度反復練習を入れようと,決めたりします。
実際の生徒さんのノート:図2



指導される時のポイントは何かありますか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 生徒へは「予習はこのプリントを取り組むだけでいいよ」と伝えること。
 教師としては生徒のプリントの出来具合をきちんと把握すること。言い換えると生徒がどれだけ理解しているかということになります。プリントが出来ていないのにどんどん授業を進めると,知識が定着しないまま進めることになりますので,苦手分野を作ることになります。予習の段階で理解できていなくても,授業で習った時に,「あ,そういうことか」というふうにつながります。最初は作業で始めたことが,習慣化し定着していきます。「これだけをこなせば大丈夫」というものを提示することは難しいですが,予習で何をすればよいのかわからない生徒には,方法とあわせて指導してあげることが重要ではないでしょうか。

復習について何か実践されていることはありますか。

図3 PDF(図3)を開く

谷口
 私は数学に関して言えば復習重点だと考えています。予習と同じように復習用のプリントも生徒に配布します。「予習プリント」は私が授業を行うクラスだけで使用しますが,「復習プリント」は学年共通でこれだけは身につけておこうという到達点を示したもので,指導に組み入れていただいています。(図3)このプリントを「やってきなさい」で渡し,次の日の授業で解答を配ります。そして5分間の時間を与えて答え合わせをさせる。必ず。5分間取ります。これがポイントですね。

なぜ5分間なのでしょうか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 取り組んできていない生徒がすぐにわかります。白紙の生徒を見つけたら、「やって、答え合わせして提出しなさい」と指導できます。答え合わせが終わったら、「この問題難しいから説明するよ」と言って指導する。
 宿題を課して、答え合わせをして提出をさせるだけでは、定着しないのではないかと考えます。この5分間を取ることの意味がそこにあります。多くの生徒が理解できていない問題に対しては時間をおかず、すぐに手当てをしてあげることが大切です。そうすることで出来るだけ苦手分野を作らないように指導できます。
 これを実践することで復習への意識も高まり、内容もしっかり定着するようになりました。


3年間の計画的な指導のスタートに!BRIDGEシリーズ

数学Aをまんべんなく,さらっとこなすために「サクサク完成ノート」


生徒さんの目線で常に指導されているのですね。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男 図3 PDF(図4)を開く

谷口
 加えて答案力をいかに身につけさせるか,ということも常に意識して指導しています。試験を行い,生徒の答案を採点している時に,きちんと書けている場合,"○(マル)"をつけるだけではなく,"good"と一言入れるようにしています。(図4)「普通の○(マル)の10点」と,「goodの10点」では点数は変わらないのですが,生徒はその"good"がもらえるように丁寧に答案を作成しようとします。生徒にとってはモチベーションにつながっているようです。ポイントは「きれいに書けていること」。字がきれいなことは当然ですが,「読みやすさ」が重要ですね。『式の羅列になっていない』『"つまり""よって""ゆえに"などの「つなぎ言葉」が入っている』『答えの最後のまとめ方も,「答え」と最後にきちんと書いて何を問われたかに対しきちんと説明している』
 このような要素がある答案には"good"を与えます。端的に言いますと模擬試験の解説のような解答が書けていることですね。これで答案力が本当につけられたのではないかと実感しています。

生徒さんとのコミュニケーションを大切にされているのですね。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男 図5 (図5)

谷口
 生徒とコミュニケーションをとる機会は授業以外にも,課題を与える時,答案を返却する時など作ろうと思えばたくさん作れます。生徒にとって試験は1つのモチベーションでもありますからその機会を大事にする。先ほどの"good"に加えもう1つメッセージを私から送ります。定期テストには偏差値はつかないので,問題が難しければ最高得点80点という時もあります。定期テストでは平均点が60点になるように作りますが場合によっては,上位層がいなくなったりします。しかし生徒にとってはこの80点の価値がわからない時があります。100点ではなかったと。しかしその時は必ず1クラスに40人の生徒がいれば,上位4人に,"Aという判子"を押すようにしています。そうすることで上位4人に入っていると生徒は理解できる。たとえ85点であっても。「先生,85点で,今回"A"ですか」と言うので,「そう,"A"やで」と伝えてあげる。そうすると自信にもなります。そして「5回集めることができたら,あなたの数学はほんまもの」と言ってあげます。そうするとその生徒は"A"をもらいたいからモチベーションを高めながら勉強に取り組める。(図5)

"Aの判子"がもらえなかった生徒にはどのように手当てをされるのですか。

甲南女子中高等学校 谷口 昭男

谷口
 逆に点数の低い数学を苦手としている生徒には,"D"(「ダメですよ」の"D")と押して返却するようにしています。「あとで復習試験をしよう」「今日の放課後,"D"の人残って。試験するから」と言って。「もう"D"はいやだ」と言って頑張ってくれますね。また "Aの判子"をもらっていた生徒がもらえなくなる時もでてきます。生徒は悔しい思いをしていますから「次,頑張ろう」と声をかけます。
 この"AやD"という"判子"が生徒にとっても私にとっても大事なのです。私の授業は生徒とのコミュニケーション。色々なタイミングで仕掛けることが大切です。そうすると,授業を中心に予習,復習などの家庭学習とのサイクルができあがってくるのではないかなと思います。

最後に何かメッセージをお願いします。

谷口
 いろいろお話させていただきましたが、教師側から生徒にメッセージをきちんと伝えること、そして機会を見つけてコミュニケーションをはかりその中に仕掛けをつくりながら生徒と楽しみながら学ぶ、これが新課程でもそしてこれからも変わらず大切なことではないでしょうか。私の指導法が少しでも先生方の参考になれば嬉しいです。


谷口先生今回は「新教育課程における数学の指導について」というテーマについて
大変貴重なご意見どうもありがとうございました。


3年間の計画的な指導のスタートに!BRIDGEシリーズ

数学Aをまんべんなく,さらっとこなすために「サクサク完成ノート」


この度は,ラーンズリポートをご覧いただきありがとうございました。
谷口先生へのメッセージをお待ちしております。また新課程に向けての取り組みやご意見等ご自由にお寄せください。
今後こんな情報発信をしてほしい等のご要望もあわせてお待ちしております。
 谷口先生へメッセージを送る

ページトップへ