特別対談「新課程における国語の指導について」

ラーンズリポート特別対談 Vol.3「新課程における国語の指導について」 第二回

 「BRIDGE高校シリーズ」(高校学習準備教材)で行ったアンケート結果から,新課程では「大学入試がどう変わるのか」「言語活動の充実を授業にどう取り入れていくのか」について先生方の関心が強いことがわかりました。
 また,初期指導では「自主的・自律的生徒の育成」「学習スタイルの確立」「入学時の意欲の維持」について特に関心が強いことがわかりました。
 今回は,新課程における国語の指導について,広島女学院中学高等学校の那須泰先生,上宮太子中学校・高等学校の福田和憲先生に伺ったお話しをご紹介します。



第二回「生徒の国語を学ぶ意欲を育てるために」

生徒の学ぶ意欲を継続させるために、工夫している点を教えてください。
上宮太子中学校・高等学校 福田 和憲 上宮太子中学校・高等学校 福田 和憲

福田
 私は昨年、高校3年生の担当をしていて、センター試験の模擬問題でグループワークをしていました。現代文も古文も漢文も、全ての問題に対して、みんなで答えを導き出していくわけです。「ここのところを論理的に考えたら、これが根拠になって、答えは2になるんじゃない」「いや、2のこの記述はどうなんだ」というやりとりを、教師は一切入らず、生徒たちに時間を与えて取り組ませます。そうしたら、「いや違う、絶対これ4だろ」「いやこれは2だ、絶対譲れない」のように言い合いみたいになるんですけど、それがまた、彼らの中での勉強になるんですよね。それに、議論するために、予習も完璧にやってきます。

福田
 それから、賞品を出したりもしました。これはあまり誉められた教育法ではありませんが(笑)。200点のうち、1番できたグループには、ステーショナリーの何か、100円ショップでちょっと買ってきてあげて。一人ひとりがくじを引いて、選べるみたいな感じにします。「何だ、合格はちまきなんかいらねー」とか、要らないものも入れたりして楽しませながらやっていると、子供たちは学習に対して能動的になり、意欲が出るんですよね。加えて、「しっかり発言しないと」という責任感が出てきます。そして、周りのメンバーの意見も参考にしながら「自分はこうやって考えたから、この解答はこうなったんだ」と言えるところまでできるようになれば、自分たちでめざすところの、最終到達点が確認できるんです。つまり、国語というのは、初見の問題に対して「自分が先生になれる力」というんですかね。それが必要であり、意欲を継続させ、同時に受験に必要な能力を理解させるためには、このグループワークの取り組みが適していると思うんです。


広島女学院中学高等学校 那須 泰 広島女学院中学高等学校 那須 泰

那須
 現代文、特に評論を読むにあたっては、全体の論理構成や具体と抽象の関係、対比の関係を意識しながら読み進めることが大切です。現代文が得意な生徒の多くは、「冒頭に主張があるから、次はその主張の正当性を具体例か何かを挙げながら論証してくるぞ」といった感じで、全体の論理構成を予測しながら読み進めています。しかし、個々の頭の中でどのように文章を読み進めているかについては分かりにくいですよね。評論の読解が苦手な生徒は、先に挙げた「読むための方法」を知りません。あるいは、意識できていません。

那須
 ですから、評論の授業では、まず、@全体の論理構成を押さえた上で、A具体・抽象の関係やB対比の関係、C因果の関係を図式化し、基本的な読み方を徹底して確認していきます。設問の答えを考える時も同じですね。とにかく「意識」です。「『どういうことか』と問われているから、傍線部が抽象で、答えはそれを具体化していくことが求められる。では、どの部分を具体化する? 本文で該当する箇所がある?…」といった感じで、読み解くプロセスを徹底して意識させます。こうした作業を何度もやっていると、生徒はだんだん「読み方」を意識して文章にアプローチするようになっていきます。また、設問に対する答えも、福田先生の取り組みのように「こうだからこうだ」と、論理的に導こうと意識するようになりますね。ただし、教師サイドからの一方的な講義では、「分かったつもり」になってしまい、「実践」する力は身につきません。その意味で、反復練習に加え、主体性が芽生えるグループワークは効果的です。私もグループワークをかなりの頻度で授業に取り入れています。グループワークの中で生徒たちは、「『どういうことか』と設問に書かれていたら、それはイコールの関係でしょ。ということは、これがどこなのかを本文の中で明らかにしなきゃだめだよね」と話し合っています。さらに「それって、ここじゃない?」「いやいや、ここは違う関係だよ。だって、○○って書いてあるじゃん」などと議論しているグループも出てきます。自分の意見を言おうとして、生徒は文章と向き合い、思考を整理しようと必死になっています。その中で、自然と「思考」の「反復」をしています。「こことここがイコールで、この対比を踏まえて、こう主張している…」という頭の中では、先に挙げた@〜Cの思考を自然と繰り返しているわけですね。こんな姿を見ると、私のほうがワクワクします。生徒たちが、お互い刺激し合いながら、「読む」「書く」「話す(述べる)」「(他者の考えを)聞く」という言語活動を行っている。「これこそが、国語という教科が培うべき力だよな」と思いながら、生徒たちの姿を見守っています。
 あっ、もちろん、見守っているだけではなくて、講義をすべきところはしますよ。ただ、教師が解説ばかりしている授業では、生徒の主体性に火はつかないし、本当の意味での国語力も身につかない。それは、間違いないということです。



ステップ学習で段階的に取り組み、読解力育成!基礎からの総合トレーニング(ソウトレ)


新課程における国語について教えてください。
上宮太子中学校・高等学校 福田 和憲 上宮太子中学校・高等学校 福田 和憲

福田
 私は、入試という観点では、それほど変わらないと思っています。国語という教科も、基本的に何を充実させたいのかというと、英語などと関係していて、やはり言語活動だと思うんです。確か、ラーンズリポートの木村先生と山原先生の対談にもあったように、おそらく英語では、グローバルな人材を養成したいというのが新課程の狙いではないかと。それは、実は国語にもあてはまるのではないかと思うんです。学習指導要領をよく見ると、言語活動の充実というのは、自国の文化についてより深い認識を得ようというところに一つの目的があるということ、さらに中学校の方ではより読書に力を入れるべきだということも明記されていますね。高校に関しては、さらに論理的な力の養成にも言及しています。総括すれば、自分自身が発信する力というのでしょうか。そこを高めたいというのがよくわかります。最近よく指摘されているように、日本人は知識はあるけれども、ディベートの能力が外国人に比べて非常に弱い、欠けていると言われています。だからこそ、何とか今の若い世代には、海外に出ていけるグローバルな人材となってほしい、という英語の狙いとの関係性の中で、国語としては、自分自身を表現できる、自分の考えを表現できる人間というのを増やしたいというところが狙いなんだろうと思います。

広島女学院中学高等学校 那須 泰 広島女学院中学高等学校 那須 泰

那須
 その通りですね。木村先生の講演や授業を何度か拝聴していますが、その中で木村先生は、英語力のベースには、絶対的な日本語力(国語力)が必要だとおっしゃっています。第2言語として英語を学ぶという環境にある以上、絶対的な日本語力があってこそ、英語力も伸びていくのではないでしょうか。中学生のころ、実は、私は国語が苦手でした。今思えば、他者意識のない自分勝手な読みをしていたからなのですが、当時は、ただただ活字を読むのが苦痛で、よく分かりもしないのに適当に読み流していました。しかし、これじゃダメだと、高校生になってからは、教科書や模擬試験、通信添削の評論などを、その内容が理解できるまで徹底して読み込んでいました。接続語を□で囲んだり、イコールや対比の記号を入れたりして、文章の構成をつかめるまで何度も読みました。分からない語句も徹底的に調べていましたね。

那須
 半年くらい経った頃でしょうか、評論が「読める」ようになってきたのです。某社の模試で校内成績優秀者賞をもらったんですね。しかも、苦手だった国語で。今、授業で教えるベースは、この時の経験によるところが大きいです。また、同時に驚きだったのは、国語力が伸びるのと他教科も比例してグングン成績が伸びていったことです。その一番の恩恵を受けたのが、英語でした。それを思うと、木村先生が言われていることも納得ですし、すべての学力のベースは、やはり日本語力(国語力)だと感じます。先にも言いましたが、「読む」「書く」「話す(述べる)」「(他者の考えを)聞く」という言語活動を、新学習指導要領が国語においても重視している背景には、言語を言語として扱えるグローバルな人間が、今の日本に求められているということだと思います。



ステップ学習で段階的に取り組み、読解力育成!基礎からの総合トレーニング(ソウトレ)


各教科の基礎となる国語の能力を高めるためにどのようなことを行えばよいでしょうか。


福田
 非常に月並みなんですが、私は、国語の総合的な力を養うベースの部分は、やはり読書に尽きると考えます。読書は、先人の知恵の集まりで、そこから得られるものが非常に多くあります。しかも、純文学に限らず、例えば、スポーツ、科学、被服、食物、古典、生物などなど、本には無数のジャンルがあります。いろんな知識、私たちが日常生活の中で得られないものも本から得られるということは、非常に大きなことだと思います。だから、生徒たちにこの機会を増やしてあげなければいけない。本を読まないなんて、もったいないんです。私の学校では、この読書指導をもう一度考え直す取り組みを始めることにしています。実は、私は当初、「読書させて、その読書感想文を応募させるのはどうか」という少し安易な考えを教科会議で披露してしまって、先輩にいさめられました。「読書があって、読書感想文。福田先生は子どものとき、嫌じゃなかったか」と。確かに、友人から、「あぁ、もう、感想文があるから読書は嫌いなんだ」という声を聞いたこともありました。「だったら、同じことをして、読書嫌いにさせてどうするんだ。その流れはもう断ち切らなきゃだめだ」と。そこで、「今必要なのは何なんだ?」と考えたら、生徒がいかに読書に対するハードルを下げながら楽しんで読めるか。そして、いろんな知識を得られる機会が持ちたい、と能動的に思えるかどうか。これに尽きると気づいたんです。そういった点から、多くの先生方に意見をいただきました。ある先生は、「パートナー読書」を教えてくれました。例えば、同世代だけではなくて、中学生と大学生を組ませて同じ本を読ませ、それに対しての感想を手紙でやり取りさせるんです。そうすることで、大学生は大学生なりの感性を中学生に、中学生は中学生なりの感性を大学生に送るんですが、世代の違う人の意見を目にすることによって、ガツンと自分に響くものがでてきます。そして、またそれを伝えたいという気持ちがわいて、手紙で表現するようになる。新課程では、表現する力が大事になってきていますけれども、そこにもつながってきます。だから、読書感想文のように、書かされるじゃなくて、こういう取り組みだと自然に書くというのが姿勢として出てきます。


広島女学院中学高等学校 那須 泰 広島女学院中学高等学校 那須 泰

那須
 その方法は面白いですね。いい意味でのプレッシャーの中で、責任感も育ちますね。女学院でも提案してみます。私の学校(中学校)では、読み終えた本の紹介文を書いています。中学校には、それぞれの学年に「女学院の100冊」という選定図書があり、各クラスに学級文庫として置いています。長期休暇や連休などを利用して、その中の1冊を選び、読んだあとにクラスの仲間に向けて紹介文を書くという取り組みです。紹介文のいくつかをプリントして配り、次に読む本を考えさせたりもしています。選定図書の中には「モンテクリスト伯」の上中下もあったりして中学生には結構ハードですが、名作を生徒それぞれの視点から切り込んで紹介しているので面白いですよ。

上宮太子中学校・高等学校 福田 和憲 上宮太子中学校・高等学校 福田 和憲

福田
 これともう1つ事例としていいなと思ったのは、本の帯を作るということです。感想文ではなくて、ワンセンテンスでその本の中身をバンと出す、その帯を生徒たちに考えさせるんです。そして、それを学校内に掲示したら、自然と他の生徒の目にもふれます。すると、「あいつの読んでる本、面白そうだな、読んでみようかな」というような相乗効果も期待できます。また、他の先生からは、「先生方が今まで読んだ本から、生徒にあげてもいいものを提供してもらったらどうだ。いろんな本が集まるじゃないか」という意見も頂きました。例えば、国語の先生は純文学、理科の先生はサイエンス、体育の先生はスポーツ関係の本、というふうに、集まった様々なジャンルの本から、子供たちが身につけたいというものが出てくるかもしれない。そういったところから、彼らの知識に対する意欲ですよね、知識欲、まさに、それが能動的にわいてくれば理想的です。それから、私は現在中学1年生の担任なのですが、読書が自然と生徒たちの日常の中にあってほしいという考えから、毎日の始業前の「早朝テスト」の中に2日間、早朝読書の時間を設けています。ただ、中学生になったばかりのうちのクラスには、「小学校のときにも自分から図書室へ行ったことがない」という生徒も多いので、本に対するハードルを下げたくて、このようにして文庫を作っています。文庫の中身は、いわゆる純文学から流行りの作品、芥川賞作家の作品までいろいろ。私が小・中学生だった頃の本も入れています。すると、生徒はこれにはまって、すごくみんなが本を読んでいるんです。

那須
 活字離れが叫ばれて久しいですが、どんどん厳しくなっていますね。ケータイやスマートフォンの普及で、今、子供たちを取り巻く言語環境は、感覚言語に頼るものとなっています。そんな時代の中で、読書の面白さを伝え、生徒の行動を変えていくには、本当に工夫が必要ですね。福田先生の取り組み、まねさせてもらいます。今、感覚言語と言いましたが、グローバル社会で求められる論理的言語能力との違いにも着目しなければなりません。子供たちの多くは、「あれ見た」で通じるような小さなコミュニティの中で生活しています。この環境下で求められる感覚的言語能力だと、普段の日常会話を交わす気心の知れた友達とはコミュニケーションできたとしても、グローバル社会では全く相手にされません。グローバル社会では、論理的言語能力に基づいて「読む」「書く」「話す(述べる)」「(他者の考えを)聞く」という言語活動を行えるかが求められています。その点をしっかり意識した上で、国語の授業は展開されなければなりませんね。論理的言語能力を培う上でも、先程から何度も取り上げているグループワークは、非常に効果的な学習形態だと思います。活字を「読む」こと(読書)によって、作者という他者を理解しようとうする。そのうえで、自分の考えをまとめてみる(書く)。その後、グループワークを通じて、他者の意見に耳を傾け(聞く)、それを踏まえた上で自らの意見を述べる(話す)。グループワークには、すべてが入っていますからね。気心の知れない他者とコミュニケーションをとる中で、人間は社会をつくっていきます。日本という社会を超え、グローバル社会になったとしても、コミュニケーションをとるための方法は同じです。もちろん、日本語か英語かの違いはありますが…。コミュニケーションをとるために、また、グローバル単位で社会を築き上げるために、論理的言語能力が欠かせない。ならば、国語という教科の担うべき役割が、必然的に高まってくると考えます。



ステップ学習で段階的に取り組み、読解力育成!基礎からの総合トレーニング(ソウトレ)


この度は,ラーンズリポートをご覧いただきありがとうございました。
那須先生,福田先生へのメッセージをお待ちしております。また新課程に向けての取り組みやご意見等ご自由にお寄せください。
今後こんな情報発信をしてほしい等のご要望もあわせてお待ちしております。
 那須先生,福田先生へメッセージを送る

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