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【数学】研究会レポート「主体的に学び続ける人材を育てよう」

主体的に学び続ける人材を ー数学の学習指導についてー

ラーンズ 研究会レポート Vol.005 主体的に学び続ける人材を

研究会の概要
ラーンズ 研究会レポート Vol.005 数学@福岡
ラーンズ マーケティング・営業部です。
2017年7月8日(土)に福岡で「九州の数学指導を考える ~教科指導を通じて生徒の学ぶ力を引き出し、成果につなげる~」と題する研究会を開催しました。
東京都の進学指導重点校である都立西高校において、学年主任として、生徒が主体的に学ぶ姿勢となるように意識改革を行っている実践例、数学科教師として授業方法、定期考査等の問題作成にあたっての観点や、それを校内資料として活用し、生徒の学力を高める学習指導について、豊富なご経験からこれまでの取り組みをお話しいただきました。

研究会 テーマ
凡事徹底、自己管理能力の向上からスタート
部活動と受験勉強
数学の授業



先生のプロフィール
先生のプロフィール

寺島 求先生
東京都立西高等学校、主幹教諭。
東京都出身。東京都立四谷商業高校を皮切りに、数学科教員として東京都立高校で勤務。東京都の進学指導重点校である八王子東高校での進路指導主任を経て、平成21年4月より現職。

凡事徹底、自己管理能力の向上からスタート

学力を支えるのは総合的人間力です。当たり前のことが当たり前にできる人間でなければ難しいことはできません。挨拶、掃除、授業に集中、学校行事への積極的な参加など、当たり前のことが当たり前にできること、つまり「凡事徹底」によって、自立して何事にも一生懸命頑張れる生徒こそが、自己管理能力の高い生徒、優先順位付けのできる生徒となり、結果として学習時間を確保できるのです。そして,最終的に学力が伸びるのです。これに基づいて、都立西高校では、生徒の意識改革を行ってきました。

自己管理能力の向上については、「忘れ物をしない」「提出物の期限を守る」からスタートして、「学習計画を立てられる」「振り返りを活かして次の行動を考えられる」などを掲げて生徒を指導してきました。


自己教育力を育む

高い志をもつ、より高いものに挑戦するという姿勢が、2年生後半からの学力の伸びに影響してきます。「好奇心をもって、多くのことに疑問をもつ」「学習スタイルも含め、自分のスタイルを見つけようとする」、「主体的に学ぶ」など、受験勉強を乗り越えていくためには自己教育力を育むことが大切です。

「主体的に学ぶ」については、例えば、板書をただ写すのではなく、自分の疑問点をもってメモを取ることも「主体的に学ぶ」第一歩だと思います。

高い志をもたせるために、職業から考えるのも、一つの方法であると思います。進路指導の観点で「これからの日本に関心をもつ」ことが、高い志、主体的な学びに繋がると思い、学年集会などで取り上げてきました。社会の課題をあげ、大学で何を学ぶか、研究させるかを考えさせ、その興味関心を高い志に繋げていくことを試みました。


育てたい力と意識改革

変化するのが当たり前の社会で育てたい力は、「決断力」「脳みその瞬発力」「自分の目標に向かって粘り強く努力する力」です。

生徒・保護者・教師の意識改革も必要です。

・よく生きるために学ぶのではなく、これからの社会を支えるために学ぶ
・大学で何かを教えてもらうのではなく、大学を使いこなす
・学力(ガクリョク)を育てるのではなく、学力(マナブチカラ)を育てる

という、意識改革です。

そして、生徒には「やらされる。与えられる。」という受け身の気持ちではなく、「伸びるぞ。伸ばすぞ。」という気持ち、「もっと高めよう。自らやる。」という高い志と主体的な学びへの意識改革で、粘り強く頑張れる人材になってほしい、だから都立西高の教員も生徒とともに頑張ってきました。


学年主任として3年間言い続けたこと

「授業の延長上に大学入試はある。」「学習の中心は授業である。」と3年間言い続けてきました。都立西高には、熱意溢れる教師集団、レベルの高い授業・教材、優秀な仲間すべてがそろっているので、「とにかく授業を大事にしなさい」と言ってきました。
途中で伸び悩んでいた生徒が最後まで自分の意志を貫き、筑波大学医学部合格を勝ち取りました。その合格体験記には、励ましてくれる先生、心の底から応援し合える友人への感謝の気持ち、学校で勉強することの大切さが綴られていました。


部活動と受験勉強

ラーンズ 研究会レポート Vol.005 主体的に学び続ける人材を

部活動を通しての人格形成、あるいは人間関係の構築はとても大事だと思います。ただ、勉強時間への影響は出ます。ハンドボール部に所属して、東京工大に合格した生徒の合格体験記では、「授業中にしっかり理解し、覚えられるところはできるだけ授業中に覚える心掛けをし、疑問点は授業後に先生をつかまえ、できるだけ早く解決することが大切です。決められた試験日に向かって、自分には何が足りないか、どの分野を重点的に学習すべきかを考え計画的に勉強する練習として定期考査を大事にするべきです」と書かれていました。「授業」と「定期テスト」を大切にすることは生徒に言い続けてきました。そして、部活動をしている生徒には「人間は、楽なときは進歩しない。部活動をして苦しいときに、どうやって工夫したら、自分の志を遂げられるのか、それを考えることで、進歩していく。だから部活動はやめてはいけない。部活動で苦しい状況を敢えて作って、その苦しい状況の中で何とか打開する。そういうことで強い人間になっていって欲しい」と言ってきました。

1年、2年での「授業」と「定期テスト」の学習習慣が身についている生徒は、部活動引退後の勉強時間への割り振りで、志望大合格を勝ち取っています。


数学の授業

ラーンズ 研究会レポート Vol.005 主体的に学び続ける人材を

1つの単元を1回授業で行い、演習授業でさらに2回、計3回の授業のレベルを徐々にあげていくスパイラル授業をしています。また、次の定期テストまでの進度をあらかじめ生徒に見せることで、生徒が主体的に学べる学習計画をたてられるようにしています。
発問によって生徒の頭の中を活性化させるという、考える授業も大切です。
定期考査、実力考査では、ひとりひとりの弱点の見極めとその改善を考え、指導に活用しています。全体として弱かった分野、テーマは次の定期考査でも敢えて出題し、スパイラルで力をつけるようにしています。定期考査の素点から基礎学力がついていない生徒には再テストを課し、再テスト不合格の生徒には課題を出しています。

個別試験に向けて受験学力を仕上げるために、都立西高の場合は進研模試2年11月をターニングポイントとして折り返しています。ここを機に、「量」から「質」へと学習スタイルをかえていきます。戦略としては、センター試験でC判定以上をとり、前向きな気持ちで個別試験に挑むことです。


数学の学習指導について

・予習について
数学はよく考え手を動かし試行錯誤により上達するものです。結果として解けなくても考えた時間は貴重です。予習で自分なりの問題点を発見する、ただし、数学が苦手な生徒には予習よりも復習に時間をかけるように指導しています。

・復習について
基本事項を身につけ、自由に使えるために
(1)自分の解き方との比較検討 (2)類題を解く (3)時間をおいて解き直す
という指導をしています。

・入試演習について
基本事項の選択とその使い方の実戦トレーニングです。ここでも、手を動かし、場合によっては調べる、今までの学習法を続けるよう指導しています。なぜその解法 (発想法)に結びついたかを考えること、出題意図を考えることも含めて入試演習をするように指導しています。


数学のよい授業を成立させるために

よい授業を成立させるために行っていることは
(1)入試問題研究、教材研究の深化 (2)授業スタイルの確立 (3)カリスマ性の確立
です。
(1)については、自分で解いてデータベース化しています。③については、すごいと思わせる授業を心がけています。

授業内容については、目標を明確にし、レベルを考えて、50分を起承転結で演じきることでよいものになると思っています。また、教材の準備としてはできるだけ入試問題を使うようにしています。
授業スキルとしては、話術、板書、スピードなどです。板書は丁寧に、発想法は必ず書くようにしています。


数学の問題を作るにあたって心がけていること

生徒の印象に残る問題を心がけています。目新しい設定がある問題、ストーリー性、流れがある問題などです。
生徒の学力を把握するには適切な作業量がある問題がいいのではないかと思います。それから、結果がさわやかであり、達成感が味わえるというのも大切な観点です。
出題にあたっては、基本問題30点、標準問題50点、応用問題20点の比率で作成しています。


論述力・記述力をつけるためには

丁寧に答案を書くように指導しています。定期考査、実力考査でも「とにかく丁寧に答案をつくりなさい」と言い続けています。東京大では「答案用紙を通じて生徒ひとりひとりがこれまで培ってきた学力や生徒のもつポテンシャルを見落とすことなく、歩み寄りながら評価している」ことを伝え、丁寧に答案をつくるように言っています。東京大に合格した生徒の合格体験記では、勝因について

(1)夏までに青チャートを一通り終わらせたことで基礎固めができた
(2)過去問を25か年分ちゃんとやったこと
(3)過去問や模試を通して、問題を解く戦術をたてていたこと
(4)なんでもいいから書いて部分点をもらいにいったこと
(5)計算ミスをなくす努力をしたこと(計算の確認)

と書いていました。「先生の言葉を信じて授業を受け、課題を頑張ってきたから今回の成功があった」とも書いていました。

今の高校生が社会に出て活躍する時代、社会は、グローバル化、人口知能などさまざまな面で大きく変わっていきます。数学教師として生徒の数学の学力を養成するとともに、数学を通して、社会の変化に対応でき主体的に学び続ける生徒を育てていきたいと思っています。


研究会の感想
ラーンズ 企画制作部 数学編集課 米田 幸より
寺島先生の一言一言には,経験と実績による重みがありました。生徒ひとりひとりの未来を考えて指導されてきたことが,生徒の合格体験記からも伝わってきました。
「授業」「定期テスト」を大切にするという生徒の姿勢は「教師への信頼感」から生まれることにも気づかされました。
今回は数学の研究会でしたが,教科を越えて,教育に携わるひとりの人間として多くを学ぶことができました。私自身も「生徒の主体的な学び」を後押しする教材制作をめざしていきます。ありがとうございました。

※先生方のプロフィールは研究会当時のものです。


2017年09月08日 公開