新しい授業スタイルへの挑戦と実践報告 ー先読みラーニング+αー
ラーンズ マーケティング・営業部です。
2017年7月8日(土)に福岡で「九州の数学指導を考える ~教科指導を通じて生徒の学ぶ力を引き出し、成果につなげる~」と題する研究会を開催しました。
菰田 清先生に、前任校までの指導経験から確立した授業スタイル「先読みラーニング」(板書をノートに取らせず、声を出し、常に考えさせる授業法)をベースに、現在の勤務校である長崎県立諫早高校でさらなる改善を加えた授業の実践報告をお話しいただきます。
研究会 テーマ
・口加高校での新しい授業スタイル
・諫早高校での取り組み(3年生・東大京大クラス)
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菰田 清先生
長崎県立諫早高等学校。
長崎県出身。大学院修士課程修了後、2年間の高校講師を経て、個人塾を開業。
3年目に生徒が約80人に増え、地域で評判の塾となる。30歳から9年間、私立高校に勤務。39歳で長崎県立高校の数学科教師に転身。長崎県立口加高校勤務の後、平成27年4月より現職。「教え子全員が数学を好きになるまで授業を改善し続ける」を信念としている。
口加高校での新しい授業スタイル
着任当初、従来の授業スタイルである「予習→授業→復習」では、ほとんどの生徒がついてこれない状況でした。そこで、授業スタイルを先読み授業にしました。
先読み授業とは、「予習を仮定しない」「ノートを取らせず、板書することを先に生徒にしゃべらせて、一緒に板書を作っていく」「理解できる・わかるを全員に体感させる」というものです。
先読み授業のねらい
「予習を仮定しない」ことで、興味わくわく感を引き出します。次に、「ノートをとらせず、先読みをさせる」ことで、生徒は頭を使います。そして、問題を全員解き終わったのを確認して先読みをさせることで、不得意な生徒も自信をもって取り組むことができます。
先読み授業の効果
声を出させることによって、授業に参加しているという意識を持たせることができ、学習意欲が出ます。また、繰り返し繰り返し声を出しているので定着し、そのことがやる気につながります。
一番いいところは、声がそろっていれば生徒全員が理解している、声がそろわないと理解が十分できていないことがすぐにわかります。
生徒の反応
「先読みするときに、すらすら言えるのがすごく楽しい」「先読み授業で声を出すので、問題を解くときに、自然と頭の中で声が浮かんでくる」と言っています。また、「頭を使うので眠たくならない」と言っています。何より、数学が好きになったという子が増えました。
口加高校での先読み授業以外の取り組み
模試で点を取れることを目標に、「日々課題」と「小テスト」をさせていました。
日々課題では、生徒に身につけてほしい、落とせない問題をパターン化し、それらの類似問題も複数作成し、繰り返し取り組ませて定着させます。
小テストは、日々課題で扱えなかった内容や、生徒の引っかかりやすいところを、日々課題と同じように反復して取り組ませます。「模試で点を取れる→学校を信用し、授業、日々課題を頑張る→次の模試で結果を出す」というスパイラルで自信をつけさせます。
また、苦手な生徒には、ベネッセの教材「ベーシックパワトレ」を渡しました。宿題が増えて嫌がっていましたが、簡単でたくさん丸がつくので、最後は喜んで取り組んでいました。
口加高校の授業で大切にしていたこと
生徒との信頼関係を築くということ。そのために、下位層の生徒を見捨てないように、次のことを大切にしていました。
授業では、全員が解き終わってから次へ進むことを徹底しました。また、授業は基本的にすべて振り返りです。「これ、この前の授業でやったよね」と言って進めることは一切やりません。そして、数学の初期指導を大切にしました。なぜそうするのかをきちんと説明してあげ、小中学校で習ったことへも立ち返りました。
諫早高校での取り組み(3年生・東大京大クラス)
授業では、1日1題、いまの入試にあった問題を扱い、一つの問題でいろんな解答方針、パターンを見せるようにしました。一通り終わると、似た思考を使う問題で実戦テストを行いました。
朝補習では4月から1年間、定石をたくさん教えられ、一番思考力を鍛えられる整数問題を扱いました。
また、センター試験が終わってから30日間、小テストを毎日行いました。3人ずつのグループにして、問題と解答を配り、なぜこういう解答が思いつくのか、なぜこうなるんだろうというのを最初の10分話し合いをさせます。そのあと、問題だけを配って解答を再現させました。
京都大に受かった生徒は、朝補習の整数問題と、この小テストがすごく良かったと言っていました。
諫早高校での取り組み(1年生・上位クラス)
現在、1年生では、教えない授業、思考力を高める授業をテーマにしています。「先読みジグソー」と言い、以下のような流れの授業も適宜取り入れています。
1)
小テストの問題と解答を配り、まずは1人で考えます。その後、グループ内で全員合格できるように協議します。
2)
問題だけを配って小テストをし、グループ内で答え合わせをします。
3)
メインの問題(本日のお題)をグループで考え、発表させます。わからないところがあれば、クラス全体で協議します。
4)
発表が終わると、各自ノートにまとめます。その後、関連する問題(京大や北大など)を提示し、次回までにどの解法が適切かを考えてきます。
思いつくことをいろいろ試して、生徒の反応を見て、よかったらさらに工夫を重ね、だめなら別の方法を試す。目的は目の前の子どもが理解できることであって、今の指導に捉われることなくどんなことでも試せばいい。その思いで授業改善を重ねてきました。
新しい授業スタイルのきっかけから現在チャレンジしていることまで、多くのお話しをうかがい、なぜそういう取り組みをしているのか、その取り組みの根底には「生徒との信頼関係」があることがよくわかりました。
とくに「『目の前の生徒が理解できるように』との思いで授業改善を重ねてきた」という菰田先生の言葉が非常に印象に残りました。常に工夫改善を行っていくことの大切さをあらためて学ばせていただきました。本当にありがとうございました。
※先生方のプロフィールは研究会当時のものです。
2017年09月12日 公開