【AL】生徒が「学び」の主人公 - アクティブ・ラーニング型授業事例| 株式会社ラーンズ

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【AL】生徒が「学び」の主人公 - アクティブ・ラーニング型授業事例

Learn-S Report Vol.28 都立両国高等学校 アクティブ・ラーニング型授業事例

Learn-S Report Vol.28 生徒が「学び」の主人公 - アクティブ・ラーニング型授業事例

Learn-S Report(ラーンズリポート)

毎回、各教科のスペシャリストを招いて、対談やインタビュー形式で、各校の指導事例や先生方の熱い声をお届けする、ラーンズの連載企画「Learn-S Report(ラーンズリポート)」。

全国高等学校国語教育研究連合会・第50回兵庫大会(2017年11月16日)が新神戸で開催されました。その際、アクティブ・ラーニング型の授業用教材「Think and Quest」シリーズ「学ぶキミを引き出す国語」「キミが学びを深める国語」に執筆協力いただきました沖奈保子先生(東京都立両国高等学校教諭)にご講演をいただきました。
先生のプロフィール

沖 奈保子(おき なほこ)先生
東京都立両国高等学校 教諭(国語科)。
アクティブ・ラーニング型授業を始めて6年目。信頼感、安心感で支えられた場づくりで生徒たちが興味をもって「話す」「書く」授業をめざしている。


なぜ、アクティブ・ラーニング型授業を行うようになったのか?
アクティブ・ラーニング型授業 実践事例
気づきと発見から深い学びへ


なぜ、アクティブ・ラーニング型授業を行うようになったのか?

生徒が「学び」の主人公

Learn-S Report Vol.28 生徒が「学び」の主人公 - アクティブ・ラーニング型授業事例

沖先生
「予備校みたいな授業ですね。」私の授業を見学した先生方から言われた一言です。

 「受験に必要な知識」
 「計画された板書」
 「シナリオ通りの説明」

この授業で、生徒は「受け身」でした。教室で一番頭を使っているのは教師だったのです。
「生徒たちは社会に出た時に必要な力を本当に身に付けているのだろうか?」「自分たちで考えているのだろうか?」「そもそも私は何を目指していたのだろうか?」と疑問が湧き、原点に立ち返るべく、教育基本法を見直しました。

教育基本法の理念では、
「人格の形成」「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値を尊び、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期する」となっています。「人格の形成」といわれてもピンときません。そこでもう少しかみ砕いて考えていきました。
この授業を受けるとどんな力が身に付くのか。自分はどんな力を身に付けてほしいと思っているのか。自分の理想の教育とは何だろうか…。

「社会人として、主体的に生きていく力を身に付けてほしい」
「古文が楽しい・学ぶことが楽しいと思えるようになってほしい」

それが、私が出した答えでした。

これを実現するには、まず教師が授業の主役ではなく、生徒が授業の主役にならなければダメだと気が付きました。
「生徒が学びに向かう」「生徒が発見する」「生徒が解決する」生徒が主語の能動的な授業への転換です。

そこで学期の始まりに国語の授業の目標を伝えました。

1. 能動的な学習者の育成・学びの「主人公」になる
2. 「学び合う」集団づくり(誰かのベストティーチャーになる)
3. 「学ぶ」「わからない」をワクワクする力にして、知の探究者へ

教室は、失敗を恐れずに挑戦できる場。生徒一人ひとりの自己肯定感を上げるため教室内のルールも作っていきました。


アクティブ・ラーニング型授業 実践事例

実践事例(1)「城の崎にて」の冒頭の場面を再現してください

沖先生
「城の崎にて」の授業では、物語の冒頭部分の本文の読みを深めるために、実際に生徒たちに教室内を歩いていてもらいました。
生徒たちは「私」が散歩している動きをグループで話し合い再現していくことで、本文には書かれていない細かな体の動きに気づいていきます。
「元気よく歩いてないよ」「ゆっくり歩いているね」「下を見ているね」「上り坂だよね」。
「どこを見ているの?」と声を掛けると「下を見ている。」と答えます。
「そうだよね。下の何を見ているの?」と更に尋ねると「あ!」と気づくのです。
上り坂だから下を見ていて、普通の平面より上り坂だから、地面が近いから土の中のことを考えるんだ、というように解釈が深まっていきます。すると生徒たちは、他の場面でも「私」の視線が下だと気づいていきます。「やまめ・川蟹」「蜂」「ねずみ」「いもり」どのシーンでも視線は下です。でも、1箇所だけ違うことに生徒たちが気づきました。
「どうしてその場面だけ視線が下じゃないのだろうか」。
そこでこの疑問の解決をしていく授業を展開していきました。
生徒の気づきを中心とする授業事例です。


実践事例(2)「甃のうへ」を一行・一コマで描いてみよう

沖先生
「城の崎にて」の授業から「視点」に注目すると読みの世界が広がるという体験をしたので、今度は詩の教材「甃のうへ」で実践することにしました。
11行あるこの詩が描写しているものを、一行ずつマスに描いていくという作業です。
B4の用紙に四コマ漫画風のマスを全部で12マス用意します。その1マスに1行描いていきます。絵を描くとその生徒がどのように理解しているのかがわかります。
人物が一人足りなかったり、描写されるべき景観が欠けていたり…。
そして最後の1マスには題名「甃のうへ」の絵を描かせます。「甃のうへ」なので、石畳をそのまま描いている子もいれば、自分の影を描く子もいます。どのように主題をとらえているのかが、そのマスをみるとわかるのです。
描き終ったら最後に色を塗ってみます。そうすると、ここでも生徒は気づきます。
「前半と後半で色合いが違うね。」「前半は動いているのに、後半は止まってない?」「あれ、なんか季節が変わっているってことなのかな?」など、会話が続いていきました。
こんなふうにして互いに話しながら、生徒同士が、どのようにこの詩を読み取ったのか、その理解の深まりに気づいていく授業を行いました。


実践事例(3)漢詩・ポスターツアー

沖先生
漢詩では、ポスターツアーを行いました。扱うのは8つの漢詩について、互いに説明をする授業です。授業の流れは以下のとおりです。

1. 班ごとに発表する漢詩を決め、準備を行う。
2. 各班、ポスターとレジュメ、試験問題を作成する。ポスターを教室の四方に掲示する。
3. 各班から一人ずつ出る形で、ツアーグループを再編成する。
4. 掲示されたポスターをツアーグループで発表しながらまわる。
5. 自分の作成したポスターの前にきたら、グループ内に向けて発表をする。発表者はポスターやレジュメを用いて、わかりやく説明する。
6. 全ポスターを廻り終えたら、評価を行う。
7. 次の時間に試験問題を解き、復習を行う。

ポスターツアーの特徴は、必ずクラス全員が自分の担当した漢詩についての発表を担当することです。生徒たちは自分の担当した班の漢詩について、責任をもって調べ発表します。
発表が上手な生徒もいればそうでない生徒もいますが、ツアーグループのメンバーに迷惑をかけないように、調査した班の仲間と協力をして準備をする姿がみられました。
生徒は皆、教員の話よりもよく聞きます。生徒同士の方が、こういう時、お互いさまなので助け合ってよく聞いていました。
授業後生徒からは、「楽しかった」「調べれば調べるほどわからなくなって、漢詩の奥深さを感じた「新たな疑問が出てきた」「疑問を解決しながら取り組めた」「そうだったのか!とわかった」というような感想があがりました。


気づきと発見から深い学びへ

沖先生
今度の学習指導要領では、「主体的、対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の視点からの授業改善が求められています。
しかしそれは、あくまでも教育を実現するための「手段」であり、「目的」ではありません。
先生方が目の前の生徒たちにどうあってほしいのか、またどのような授業を理想とするのかを軸に据えて、授業を実践していくのはいかがでしょう。
「○○力を身につけてほしい」「○○○について興味をもってほしいな」など、それぞれの先生が大切にしている理念を日々の授業に結び付けていく。
今、さかんにアクティブ・ラーニングが取り上げられ様々な方法論が紹介されていますが、方法の優劣を問うのではなく、まずは生徒にどのような力を身に着けさせたいのかを考えられるようにしたいものです。
先生方、一人ひとりが大切にする授業理念は、アプローチの仕方は違っても、どれも「人格の完成」につながるはずです。理念の実現のための方法(授業の型)は、多様なのだと思っています。

最後に、生徒はもちろん、先生自身もワクワクするような授業が全国に広まることを願っています。


2018年2月9日 公開



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