【AL】生物基礎のカリキュラム・デザイン| 株式会社ラーンズ

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【AL】生物基礎のカリキュラム・デザイン

Learn-S Report Vol.29 生物基礎のカリキュラム・デザイン

Learn-S Report Vol.29 「Think and Quest」を軸とした生物基礎のカリキュラム・デザイン

Learn-S Report(ラーンズリポート)

毎回、各教科のスペシャリストを招いて、対談やインタビュー形式で、各校の指導事例や先生方の熱い声をお届けする、ラーンズの連載企画「Learn-S Report(ラーンズリポート)」。

2017年11月26日に岡山で開催いたしまた弊社主催の理科研究会にて昭和女子大学附属中学・高等学校 山下兼彦先生に『「Think and Quest」を軸とした生物基礎のカリキュラム・デザイン』と題してご講演いただきました。
山下先生の2017年4月からの実践(工夫や試行錯誤)と、それに伴う生徒の変容を 授業を変える勇気 アクティブ・ラーニング などのキーワードでお話しいただきました。
先生のプロフィール

山下 兼彦(やました かねひこ)先生
昭和女子大学附属中学・高等学校 教諭。
教職歴26年。同校に赴任して27年目。進路指導部。
アクティブ・ラーニングの実践は1年目(講演時)になる。


授業を変える勇気をお伝えしたい
「Think and Quest」を軸とした生物基礎のカリキュラム・デザイン
生徒自身が変化に気づいて変容していく


授業を変える勇気をお伝えしたい

Learn-S Report Vol.29 「Think and Quest」を軸とした生物基礎のカリキュラム・デザイン

山下先生
今回は、私のような普通の生物教師でも、自分の授業を変える勇気があればここまでやれるということをご紹介したくて、参りました。

そこには素晴らしい先生や、「Think and Quest」という教材との巡り会いもありました。本日は、参加いただいた先生方に、勇気を持ち帰っていただけるように発表させていただきます。


学校紹介 -昭和女子大学附属中学・高等学校-

山下先生
簡単に学校紹介させていただきます。
東京都世田谷区三軒茶屋にある、中高一貫の女子校です。ゼロ歳児保育のこども園から大学院博士課程までがすべてキャンパス内にあり、最長で27年通うことができます。2020年に創立100周年を迎えます。ボストンに学園の施設があり、中2では全員が春休みにボストン研修に行きます。今年の中3生からスーパーサイエンスコースがスタートします。


「Think and Quest 生物基礎」との巡り会い

山下先生
生徒たちには「Think and Quest」を略して「TQ」とよんでいます。「TQ」を知ったのは2017年1月6日・7日に東京学芸大学で行われた日本生物教育学会でした。母校開催ということで、生物教育を学ぼうとではなく、懐かしさからたまたま参加して、その会場でラーンズさんが「TQ」を展示しており、たまたま目にしたのが「TQ」でした。偶然の巡り会いが、私の人生まで変えたのです。


「生物基礎」の概念を身につける

山下先生
「TQ」は各テーマが見開き2ページで、プリント1枚相当で授業1時間分というつくりになっています。見開きの左側には「本時の目標」「考える材料」、そして「活用する知識」としてのキーワードとキーセンテンスを示しています。右側にはグループワークで取り組める「基礎課題」「発展課題」という構成です。
いままでの教材にはない「TQ」の特長は、これらの構成がよく練られており、生徒たちは取り組むことで、「生物って何だろう」「細胞って何だろう」といった、生物基礎の幹になる概念をもてるようになることです。そのうえで授業を行うと、より深い学びにいざなうことができます。


「Think and Quest」を軸とした生物基礎のカリキュラム・デザイン

山下先生
私は以前からグループ学習を行っていましたが、学習内容に合ったテーマ探しや、その集団に適した課題作成が難しく、かなりの労力と時間を費やしていましたが、その苦労が「TQ」を活用することでゼロになりました。

また、「TQ」の企画には、以前から注目していた都立国立高校の大野先生(大野先生のご紹介および Think and Quest 執筆者座談会の記事)が関わられており、これを機会に授業見学をさせていただきました。そこで、大野先生と板山先生の授業を見させていただいて、大げさではなく、本当に素晴らしい授業で、私の授業観・教師観・人生観まで変わりました。本当に感動したので「TQ」を使ってさらに大野先生、板山先生の授業のいいところを融合した授業をしてみようと思ったわけです。

大野先生の授業の素晴らしいところは、学び方の習得、社会人基礎力につながる授業、リフレクションを大切にされていることとかで、ご自身のホームページで公開されている授業プリントもバンバン使わせていただきました。

板山先生授業の進め方がまた素晴らしくて、先生が「さぁどうぞ」と言うと、生徒たちはおもむろに1人、2人、なかには4人で、教科書を読んで「自分の参考書」をつくり始めるんです。とても雰囲気のいい授業で、生徒が黙々とやっていて、終了のチャイムが鳴ってもやめようとしない。それで板山先生はどうするかというと、そっと無言で教室を去っていく……。かっこいいなと思って。

このような授業をやってみたくなり、今年の生物基礎のカリキュラムを考えました。本校では高2で2単位必修でやっています。まず「TQ」が全部で27テーマあるので、そのテーマに関係する実験を10個に絞りました。そして通常の授業では「自分の参考書づくり」で、関連することを自分でまとめていく、わからないところは友達どうしで教え合い、学び合う。そんな感じで授業をデザインしました。

例えば、「TQ」のテーマ2「細胞の共通性と多様性-細胞って何?-」のときには、「細胞って何?」というところで、実際に細胞を観察して(市販のお新香を一晩培養すると乳酸菌と酵母を観察できる)、いろいろな細胞の大きさ、共通点や違いを見つけることをしています。そうすると、振り返りシートに「細胞には共通点があるとか、違いがあることがわかりました」と書いてきます。そしてこの細胞の概念を使って、次の授業で「イシクラゲとオオカナダモを進化の観点で考察しなさい」という課題に、「オオカナダモの葉緑体は進化の過程では、シアノバクテリアが細胞内に共生することで生じた」。私は授業で一切教えていないんですが、自分で調べて書いてきます。
このような形で、まず「TQ」で概念をつかみ、実験観察で実物を見て、授業では教科書を読んでノートに「自分の参考書」をまとめていきます。

お気づきでしょうか。私はほとんど授業をしていません。


生徒自身が変化に気づいて変容していく

山下先生
このような形で4月に授業をスタートしました。ところが、生徒たちからは猛反発です。振り返りシートには「普通の授業をしてください」とか、「先生は何もしないんですか」とか、他教科の先生には「あの、山・何とかマジで無理」(名前すら呼んでもらえない)とか……。

5月の後半ぐらいから変化が見られ始め、授業態度も変わってきました。振り返りシートには、

「TQが深イイ!」
「何だか内容も頭に入っているし、意外と楽しいかも」

といった前向きなものが出始めました。さらに、質問に来る生徒が次第に減り、テスト前でも自分たちで教え合い、学び合い始めました。教室を見に行くと、黒板をいっぱいに使って、自分たちで教え合っていました。

6月になると「楽しい」「がんばろう」と書いてくる生徒もいて、中には学年で一番数学ができるのですが、生物の授業がきっかけで、進路を生命科学に決めた生徒もいます。物理の先生はすごく悔しがっていました。

ただ、7月の段階でも抵抗している生徒もいました。

「私には先生のやり方は合わない」

そこで、生徒自身が理解して納得しない限りは変わらないだろうと思い、いま自分たちが取り組んでいる授業のかたちが、将来どう役に立つのか、そのことを伝えるようと、「BB通信」(BBはベーシック・バイオロジー)という通信を発行することにしました。「BB通信」は私から生徒へのメッセージです。

テストでは、本校では平均70~75点を目標にしているので、73点ぐらいになるように作成するのですが、平均点が78.8点とか、80点以上のクラスも出て、赤点のつく50点未満も減りました。生徒も結果を出せるようになると、「TQ」を使った授業に納得するようになりました。前期の終わりごろには、次のような感想が見られるようになりました。

「自分で実験内容を考えるのが楽しかった」
「疑問があったらすぐ教科書を見て友達に聞く」
「教科書をじっくり読むようになった」
「聞くだけでないから理解が深まった」
「TQが楽しい」
「家でノートをまとめ、わからなかったところを授業中に友達や先生に聞く」
「自分でノートにまとめることで、テスト前にあせって勉強する必要がない」

また、生徒の安心感も考えています。例えば、講義をほとんどしない授業なので、どうしても講義が聞きたかったらNHKの高校講座を薦めています。4月時点では視聴率は13.5%でしたが、前期の期末考査の頃には40%になりました。「家政婦のミタ」並みの視聴率で、生徒はよく見ているようです。


「模範解答」よりも「納得解」

Learn-S Report Vol.29 「Think and Quest」を軸とした生物基礎のカリキュラム・デザイン

山下先生
「TQ」の基礎課題、発展課題では、ヒントは与えますが最終的な答えは言いません。なぜなら、模範解答を示すと、その時点で生徒は考えることをストップし、その答えを覚えることに走るからです。
しかし、生徒からは「正解を知りたい」という声が根強かったので、7月から「納得解トレーニングシート」というものを取り入れました。基礎課題や発展課題で、これが自分の答えだと思うことをシートに書いて提出します。提出すれば、私がコメントを書いて返します。これが生徒には好評で、テスト前に大量に提出してきましたが、やめるわけにはいかず、困ったなと思ったところに、生徒の方からいい意見がありました。

「最も模範解答に近い生徒を教えてほしい」

この方法を取り入れてからは、生徒たちだけで解決しています。


※先生のプロフィールはインタビュー当時のものです。



2018年4月6日 公開



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