【英語】研究会レポート「主体的・対話的で深い学びについて」| 株式会社ラーンズ

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【英語】研究会レポート「主体的・対話的で深い学びについて」

アクティブ・ラーニング 英語

【英語】研究会レポート「主体的・対話的で深い学びについての実践例・意見交換」

研究会の概要
ラーンズ 研究会レポート Vol.017 アクティブ・ラーニング 英語@岡山
2018年3月27日に岡山で「2018年度高校1年生の教科指導を考える」研究会を開催しました。
2020年度の教育・入試改革では、要求される学力が大きく変化すると予想されます。2018年度の新入生が最初の入試改革に該当する学年ということもあり、新入試を見据えた指導・育成の計画に苦慮されていると伺います。
今回は、先生方の悩みの解消のヒントに少しでもお役に立てればと考え、現場の第一線で実践・研究しておられる先生をお迎えし、現状の課題の解決につながる研究会を実施させていただくことにいたしました。

研究会 テーマ
主体的・対話的で深い学びについての実践例・意見交換
今、要求されていること
事前アンケートへの回答



先生のプロフィール
先生のプロフィール

山岡 大基(やまおか たいき)先生
広島大学附属中学校・高等学校(英語科)
英語科教諭。英語指導は「まずは話してみる」「まずは文章を書いてみる」ことからの気づきを大事にしている。アクティブ・ラーニング型授業の学習観,英語コミュニケーション能力の育成を追求しながら授業改善に取り組んでいる。新刊『英語ライティングの原理原則(テイエス企画)』など多数執筆。

主体的・対話的で深い学びについての実践例・意見交換

【英語】研究会レポート「主体的・対話的で深い学びについての実践例・意見交換」

「深い学び」は一通りではない

What do you say to playing tennis next week?
この1文を使って、先生方ならば何を指導なさいますか。教師個人の志向によって違いが出てくると思います。たとえば、「ツールとしての英語」を重視されるタイプだと,What do you say to –ing? を使って提案や勧誘をしてみよう、という活動を考えるかもしれません。
あるいは、「文化としての英語」を重視される方だと、日本語では「どう?」とか「どう思う?」と言うところに英語ではsayを使っている、ということに着目されるかもしれません。
はたまた、「テスト科目としての英語」を重視される方なら、このtoは不定詞のtoじゃなくて前置詞だぞ、後ろは原形じゃなくて動名詞だぞ、みたいなことを強調されるかもしれません。

今回刊行させていただいたラーンズ『キミが学びを深める』のテキストでは、どの単語にストレスを置いて言うかによってコミュニケーションの意図が違う、ということを扱っています。いずれにせよ、この1文から「広げ」たり「深め」たりする方向は、決して1つに決まっているわけではないということを強調しておきたいと思います。

では、「学びの深さ」とは何なのでしょうか。京都大学の松下佳代先生によると「深い学び」には大きく分けて3つの系譜がある、とのことです。「深い学習」「深い理解」「深い関与」です。What do you say to playing tennis next week? の指導でも、この3つを出発点にして考えてみると、いろいろな「深め方」がありそうです。


学びをどう発動させる?

ラーンズ新教材の『キミが学びを深める』のUNIT3「先生と留学生のトラブルをどう解消する?」に取り組んでいただきました。担任のスズキ先生と留学生のEmilyの間にトラブルがあり、2人の行き違いをというものです。

山岡先生
英語の教材の中に、こういった対立であるとか不協和であるとか、ネガティブな要素というのはあまりないと思います。それをあえて入れています。多分、人生がすべて順調に行っていて、幸せだなって思う人は、何かを表現しようとはあまり思わないと思います。ですが、何か問題が発生してそれを解決したいとか、意見が対立して何か言わないとおさまらないとか、そんなときには表現意欲が湧くという面があると思います。学びをどう発動させるか、英語をどう使わせるように仕向けるかと考えると、このようなネガティブな要素を取り入れてもいいのではないかという提案です。

次のグループワークとして、「ラーンズに作って欲しい教材を10個以上書き出してください。その中でラーンズが1つだけ作ってくれることになりました。話し合って1つ選んでください。」という題材に取り組んで頂きました。

山岡先生
10個アイデアを出す段階では、思考を拡散させています。それを、書き出していくのは、思考を可視化するということです。そして1つだけ選ぶというところで、思考を収束させます。
1つだけ選ぶに何らかの基準がなければなりません。その基準を明確にしていくところで思考が構造化されていきます。『キミが学びを深める』のWhat you need in your classroomという章は、この考え方で取り組むことができます

『キミが学びを深める』のUNIT4「ソックスを履かない村でソックスは売れるのか?」のActivity3に取り組んでいただきました。靴下を履く習慣がないNosox Villageという村で、靴下メーカーの担当者が営業予測を立てる話になります。

山岡先生
「靴下を履く習慣がないから売れない」というのがRedsoxという会社、「靴下を履く習慣がないからこそ売れる」というのがWhitesoxという会社です。
Activity1のところに、根拠と結論と前提を記載出来るようしています。結論というのは、Redsoxは「靴下は売れない」、Whitesoxは「靴下は売れる」です。
それに対して、根拠というのは、「Nosox Villageの住人には靴下を履く習慣がない」で同じになります。問題は前提になります。前提としてRedsoxは「習慣がない=必要性がない」。一方、Whitesoxは「習慣がない=潜在的需要がある」です。物の考え方として、生徒はおそらく前者はすぐにわかると思います。後者「靴下を履く習慣がないからこそ売れるのではないか」で、生徒は「どういうこと?」となると思います。そのときに、なぜそうなるのかを考えてもらって、前提が違うよねという気づきが生まれ、それを言葉で表現できるようになればよいと思います。


今、要求されていること

【英語】研究会レポート「主体的・対話的で深い学びについての実践例・意見交換」

今、我々が要求されているのは、こういうことなのではないかという私の理解です。今までの、知識の土台をしっかり作って積み上げていくやり方であれば、知識は分厚くなっても,運用力の面では頂点はあまり高くならなかった。3単現のsであるとか、この動詞が従えるのは動名詞だ、とか、そういった知識を覚えさせる指導は丁寧にやってきたが、その反面、そういった知識を実際に使う場面は、それほど多く設けてこなかったのではないか、ということです。よく言われるように、日本の英語教育では、土台となる知識の部分はしっかりとしているので、留学などで実際に使う場面を経験すれば、その知識が活かされてくる、というのは、そういうことかと思います。

これに対して、今要求されているのは、土台固めのウェイトを少し減らし、その分を、アクティブ・ラーニングの考え方で、実際に英語を使う学習に充てて運用力の頂点を高くしましょうということではないでしょうか(必ずしも、アクティブ・ラーニングが運用ばかりを志向するものでないことは、この講演でも触れてきたことではありますが)。
これについては、アクティブ・ラーニングをやっていれば、土台もしっかり出来てくるとおっしゃる方もいます。私はそう都合良くは行かないと思っていて、どんどん使うことを優先してやっていくと、その分、今まで土台で繰り返しやっていたところに手が回らなくなり、知識の面がいくらか弱くなってくるというのはあると思います。時間は限られていますから、今までやってきたことをすべてキープしたまま、新しいこともやるというのは無理だと思います。

ただし、知識をないがしろにしてよい、という意味ではありません。生徒に実際に英語を使わせてみると、どんな知識が足りていないかということが見えてきます。運用力の面で上に伸びていこうとすれば、自然と土台の部分も広げざるを得ません。土台を作ってから積み上げるのではなくて、積み上げながら土台を広げていく。その途中では、今までよりも土台が弱く感じられる瞬間もあるだろうけれど、そこをある意味我慢しながらやっていく、という発想が求められているのだと思います。
今までのやり方で得られていた結果、たとえば模試の偏差値などを、そのまま出し続けることを第一にするならば、発想を変えるのは怖いことだと思います。しかし、より大きな結果を出そうとするならば、つまり、生徒の運用力を高めよう、英語を実際に使う力を高めようとするならば、今までの「財産」をある意味、一時的に「捨てる」「省く」ということが必要になってくるのではないかと思います。
ただ、それはずっと捨てておいていいというのではなくて、先へ進んでみて、必要な分を後からまた持ってくる、という考え方がいいと思います。


事前アンケートへの回答

【英語】研究会レポート「主体的・対話的で深い学びについての実践例・意見交換」
今回のイベントの前に参加頂く先生から、アクティブ・ラーニングについての疑問や課題についてアンケートを頂きました。山岡先生には、アンケートの内容にもご回答頂きましたので、いくつかご紹介致します。

Q.基礎知識の習得とALのバランスが難しい。

A.
基礎知識の習得が講義や座学であり、応用・活用がアクティブ・ラーニングだと考えると確かにバランスが難しくなると思います。ただし、私はそうではないと考えています。
アクティブ・ラーニングの私のイメージですが、授業中に扱える知識の総量を100と仮定します。先生が授業をすべて講義に費やすと100の知識を伝えることが出来るとします。そして、生徒は先生から教わったことの100全ては身につけられないが、その半分は習得すると仮定します。
生徒に学習を預けたときに生徒がどれだけ身に付けることが出来るのか。先生から教わって身につけた量の,さらに半分くらいの量は自力で身につけることができると仮定します。

先生が授業時間すべてを講義に費やして100を教えたとしたら、生徒が自分で学ぶ時間は0なので身につく量は、先生から教わった100のうちの半分50です。
ここで、もし先生が90だけを教えて、残りの10を、生徒に「自分でやってごらん」と預けたとします。そうすると先生が教えたのは90なので、生徒が身につけるのは45です。
そして、生徒は10預けられていますので、結果的に55のことを学べます。自力で身につけられる最大値は45の半分の22.5ですが、実際に預けられているのは10だけですので、45+10=55と考えます。

同じ考え方で、もし先生が80を教えたとしたら、生徒は40のことを身につけます。残りの20を生徒に預けるとしますと、自力で身につけられる最大量は40の半分の20で、それを全部自力で身につけることができますから、先生の講義で身につけた40と併せて、結果的に60の知識が身につくことになります。

先生:生徒 = 100:0の場合、身につくのは50
        90:10の場合、身につくのは55
        80:20の場合、身につくのは60

つまり、すべてを先生が教えるよりも、生徒に預ける部分を残した方が結果的に身につく量が増えるというのが、アクティブ・ラーニングがいいですよという考え方だと思います。
だったら、全部生徒に預けてしまった方が良いのではないか、という話になるのですが、そういうわけでもありません。

もし先生が60教えて、40を生徒に預けるとします。すると、生徒は先生の講義からは、60の半分の30を身につけます。そして、そこで生徒が身につけた30の、さらにその半分、15は、生徒が自力で身につけられるとします。すると、結果的に身につける知識の量は、30+15で45になります。こうなってしまう、先生が全部講義で教えた方がまだまし、ということになります。
あくまでも、わたしの勝手な、ものすごく雑なイメージですが、アクティブ・ラーニングとはそのようなものだと考えております。


Q.基礎となる知識が不足していると対話が深まらない

A.
たしかに、その通りだと思います。やはり、知識は知識として身につけていないと、深めるどころの話ではないというのは正しいと思います。
ただし、その一方で、「基礎となる知識を仕入れる活動を、対話的に深める」という可能性はあると思います。中教審の資料の中に、『基礎的・基本的な知識・技能の習得に課題が見られた場合においても、「深い学び」の視点から学習内容の深い理解や動機付けにつなげたり、「主体的な学び」の視点から学びへの興味や関心を引き出すことなどが重要である。』とあります。
ものすごく乱暴な言い方をすれば、基礎知識がなくてもアクティブ・ラーニングを行いなさい。アクティブ・ラーニングをやったら知識が身につきますよ、という話だと思います。

例えば、中学2年生に現在完了を教えるときに、こんなことを行いました。用法の違いを教えるときに、英文の用例を並べて提示します。用例事典から持ってくるので、中学2年生には分からない英文も含まれるのですが、おかまいなしに200文くらい見せます。そして、「継続用法で気が付くことは何」とか、「経験用法で気が付くことは何」と生徒に話し合わせました。また、高校1年生では、現在完了形と現在完了進行形の違いをどう感じてもらおうかと思い、同じ動詞を使った単純系と進行形をペアリングした用例を並べて、最小限の文脈と併せて提示しました。それで、生徒には、両者がどう違うかということを考えさせ、話し合わせました。
知識を仕入れるために講義で行った方がいいところは講義で行った方がいいですし、一方で、こういった活動を通じて、生徒が自分なりに知識を深めていくことも、場合によってはできるのではないでしょうか。


Q.生徒が内面で静かに学ぶのはアクティブ・ラーニングではないのか

A.
少なくとも、今、話題にしている「アクティブ・ラーニング」ではないと思います。
やはり、生徒同士がお互いに持っているものを出し合って、対話的に学びを深めていくというのが「アクティブ・ラーニング」の要諦だと思っています。
ただし、それは「アクティブ・ラーニング」の定義に当てはまるかどうか、という話であって、「内面で静かに学ぶ」という学びに価値があるかないか、という話ではありません。私の知る範囲ですが、そのような学びの価値は、誰も否定していないと思います。


研究会の感想
ラーンズ マーケティング・営業部より
具体的な指導方法と、その指導が何に結び付くのかということが大変分かりやすく参考になりました。それと共に、英語を使いながら考える、考えたことを英語で伝えることが、自然と楽しみながら出来るようなアクティブ・ラーニングへの期待感も頂きました。今回のレポートには書ききれませんでしたが、教科書を使った場合やGTECの素材を使った場合などもご発表頂きました。身近な題材でも、何を学ばせるかを考えるだけで、生徒へのアプローチの仕方も様々な形に変化するのも非常に興味深かったです。

※先生方のプロフィールは研究会当時のものです。


2018年7月4日 公開



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