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【AL】【生物基礎】多様なコースの生徒たちの学びを引き出す

Learn-S Report Vol.32 多様なコースの生徒たちの学びを引き出す

Learn-S Report Vol.32 多様なコースの生徒たちの学びを引き出す Think and Quest(アクティブ・ラーニング型教材)

Learn-S Report(ラーンズリポート)

毎回、対談やインタビュー形式で、各校の指導事例や先生方の熱い声をお届けする、ラーンズの連載企画「Learn-S Report(ラーンズリポート)」。

今回はThink and Quest(以下、TQ)を使用してアクティブ・ラーニング型の授業に取り組まれている愛媛県の済美高等学校の先生方に、お話をうかがいました。

学校紹介

学校プロフィール

済美高等学校
済美高等学校は、1901年に「心身ともに健全な良き社会人・家庭人を育成する」という教育理念のもとに女学校として開校した。


開校101年を迎えた2002年には男女共学に移行し、校訓を従来の「教養・健康・誠実」から、新しい校歌(学園歌)の中の一節を取った「やればできる」に改訂するとともに、開校以来の教育理念に加えて、「自己を鍛え、確かな学力(知)、豊かな心(徳)、健康・体力(体)を育てる」という2つ目となる新たな教育理念を掲げている。

また、日頃の学校生活がより充実したものになるよう、「個性を伸ばす教育~進学の済美、スポーツの済美、文化・芸術の済美~」のスローガンのもと、学習活動・部活動・学校行事などを通して、生徒一人ひとりが持つ優れた個性を磨き、発揮できる教育にも取り組んでいる。


取組みのきっかけは、「本校のアクティブ・ラーニング」を考え始めたこと
多様なコースでも、使用教材をそろえた指導ができる
正解がない問いにも取り組み、全員が授業に参加するようになる


取組みのきっかけは、「本校のアクティブ・ラーニング」を考え始めたこと

Learn-S Report Vol.32 「本校のアクティブ・ラーニング」を考え始めたこと Think and Quest(アクティブ・ラーニング型教材)

左から小林先生、齋藤先生、濱本先生

小林先生
アクティブ・ラーニング(以下、AL)という言葉を聞くようになった2015〜2016年に、教員研修や学校訪問などで「ALはどのように行っていますか?」という質問をよく受けるようになり、「本校のALとは?」を考え始めたのがきっかけです。私は育休明けで、濱本先生も新任1年目で、世の中の新しい流れについて知っておきたいという気持ちもありました。

濱本先生
私は2016年に、本校の初任者研修の一環で年間を通して行う研究において「思考力・判断力をはぐくむためのアクティブ・ラーニング型授業」と題してALを取り上げて実践して発表しました。


新しいことではなく、従来の取り組みの延長として

Learn-S Report Vol.32 「本校のアクティブ・ラーニング」を考え始めたこと Think and Quest(アクティブ・ラーニング型教材)

小林先生
私はその翌年、私学教育研究所の委託研究員になり、ALについて調べました。当時、本校には7名の生物教員がおり、ALについては、おもしろそうという先生もいれば、懐疑的な先生もいました。ただ、みんな私よりも若く(笑)、他校にくらべても若い先生が多く、わりと柔軟な姿勢だったと思います。

濱本先生
もともと、本校の理科は高大連携で実習を行ったり課題研究に取り組んだりしていましたし、授業でも反転授業をされたり、ICTを取り入れたりと、創意工夫してきている印象を受けました。だから、ALについても、従来の取り組みの延長と捉えていました。


転機となった研究会

小林先生
2017年11月26日に岡山で行われた研究会(ラーンズ主催「授業改善に関する研究会」)に、すでにALに取り組んでいた私たちと、いわゆる従来型でガンガンに教え込んでいた齋藤先生とで参加させていただきました。このとき、一番刺激を受けたのが齋藤先生でした。

齋藤先生
東京都立国立高校の大野智久先生(「Think and Quest生物基礎」ご執筆)の事例発表や、参加された先生方のお話をお聞きして、「世の中は変わろうとしているんだ、いままでの私の授業はなんだったんだろう?」と強く思いました。

小林先生
齋藤先生は、もともと授業改善に熱心な先生なので、研究会で新たな視点を得たのだと思います。研究会の帰路では、一人興奮気味だったですよね。(笑)

齋藤先生
もっと生徒の考えや意見を引き出せるようになりたいと思いましたね。また、本当の知識を身につけさせたいと思いました。「Think and Quest」を使うとそれを確かめることができるんです。テーマごとに何が大事であるかをつかむことができる。最近は、教科書を全部教える必要はないのかなとも思っています。


多様なコースでも、使用教材をそろえた指導ができる

Learn-S Report Vol.32 「本校のアクティブ・ラーニング」を考え始めたこと Think and Quest(アクティブ・ラーニング型教材)

小林先生
本校はコース制で学年にもよりますが1学年20クラス近くもあり、生物の教員はさまざまな学年・コースの授業を行います。なるべく使用教材はそろえたいと思い、「Think and Quest 生物基礎」を採用しました。

濱本先生
試しに「TQ」を使ってみて「これならできる!」と感じました。従来の教材とは「問い」が異なり、生徒が自由な発想で答えられるんですよ。だから、どのコースの生徒でも能動的に取り組めるのだと思います。

小林先生
AL型授業に慣れないクラスでは、1学期は「普通の授業がいい」という声も出ていましたが、2学期には考えることに慣れてきて積極的に参加するようになりました。もちろん、その間いろいろ試行錯誤しましたが、「TQ」があるおかげで授業研究に時間を割くことができました。

濱本先生
「TQ」ではニワトリマークのアイコンが便利です。オープンクエッションであることが生徒にもわかりやすいです。「自分の答えは間違いではないですよ、人の意見で気になるのは取り入れましょう、正解はないですよ」と言っています。

小林先生
AO・推薦入試で受験したり、専門学校に進学したりする生徒が多いクラスでも活用しています。どちらかというと理科が苦手な生徒が多いクラスです。そのなかで「TQ」を使い始めて、真剣に考えて、楽しく授業に参加する生徒が増えたのには、私たちもビックリしています。

齋藤先生
進学コースでは最初に講義形式で教えて、そのあと「TQ」を使って班活動で取り組ませています。講義したことの内容を、何が幹で何が枝かを整理しています。従来の教材とは「問い」が異なるので、生徒たちはもう一度考えて教科書を見ながら話し合っています。テーマによって、実験や探究活動につなげているところもあります。

濱本先生
「生物の共通性と多様性」や「生態系」の単元は、細かい知識がなくてもいろいろな意見が出やすいので、まず「TQ」を活用して生徒に考えさせておいてから、後で解説講義をしています。逆に「呼吸」「光合成」などの項目や、「体内環境の維持」の単元では、しくみや現象、細かい知識など、覚えることが多いので、先に講義をしておいてから後で「TQ」を活用しています。「TQ」の問いが深いので、理解できているようで理解できていなかったことに生徒が気づくんですね。いずれにしても、生徒はよく考えるようになりました。真剣に話し合っていますよ。

ラーンズ 編集部
「TQ」では、各単元の最初のテーマは、単元の導入として、中学校までの知識でこれから学習することについて考えたり、経験したりできるようにデザインしました。また、各単元の最後のテーマは「日常生活との関連」で、単元で学習してきたことが、自分のことにつながっているかを確認できるようにデザインしました。


生徒の反応がよく、コミュニケーションが活性化する

Learn-S Report Vol.32 「本校のアクティブ・ラーニング」を考え始めたこと Think and Quest(アクティブ・ラーニング型教材)

齋藤先生
「TQ」の活用で、生徒とのコミュニケーションがいままで以上にできるようになりました。生徒の反応がよく表れて、それに対して返せるので、お互いに考えていることがよくわかります。これまでは先生が主体だったのが、いまは生徒が主体になっている雰囲気ができていると思います。

小林先生
クラスによって反応が異なることも、この教材を使うとよくわかります。考えることに慣れていないクラスもある。考える前から「わからん」とか。正解がない、時間がかかることも嫌なようです。このようなクラスに対しては、こちらも工夫して、2学期からは自分たちで考えるようになりました。

濱本先生
食物科学コースで「TQ」を使っていますが、「今日はTQしないの?」「えー、残念!」という声が聞こえてきたのにはビックリしました。使う前はできるかどうか不安がありましたが、このクラスは調理実習でもともと班活動をよく行っているためか、生徒たちは真剣に考えて、楽しく取り組んでいます。

小林先生
講義形式のときには定期テストの点数が低い答案もありましたが、AL型授業ではそういう答案は出なくなりました。これには私たちも驚きました。

齋藤先生
講義形式にくらべて日常生活に関連した内容や深い内容を扱えることもメリットです。生徒の声や反応が出やすいので、そこで出た疑問を試験で取り上げています。

小林先生
答えの自由度が高いので、さまざまな意見が出てきて、得意分野を見つけて伸ばすこともできます。生徒が自己肯定感をもてる場面が多くなることもメリットですね。


正解がない問いにも取り組み、全員が授業に参加するようになる

Learn-S Report Vol.32 「本校のアクティブ・ラーニング」を考え始めたこと Think and Quest(アクティブ・ラーニング型教材)

濱本先生
生徒には、これからは自分の意見を持ってそれを相手に伝えることや、相手の意見を聞くことが大事になることを言っています。昨年は講義形式で授業を行っていたクラスを、今年はAL型授業で行っていますが、生徒たちは今の方が授業に参加できて楽しいと言っています。人と対話するのが苦手な生徒も「振り返り」を見ると、意外とびっしりと書いていて、能動的に授業に参加していることが窺われます。自分たちで考えることができるし、まわりの意見も聞くことができるのが、生徒にとってもいいみたいです。

小林先生
受け身の授業では、仮に頭の中が授業に参加していなくても先生にはわからないけれど、AL型授業ではディスカッションする場面も多いので、参加しているのがよくわかります。従来は、受験に関係ないから勉強しないとか、テスト前に一週間だけ勉強するということもあったと思いますが、AL型授業ではそれはないですね。

濱本先生
定期テストでは授業で考えたことについて自分の意見を述べる問題も出しています。何を書いても正解になるので、全員が書いてきます。普段のAL型授業でこのような問いに自分の意見を持つことが大事だとわかったようで、4行5行と書いてきます。「受験に使う、使わない」は関係なく、全員が授業に参加するようになりました。


※先生のプロフィールはインタビュー当時のものです。



2018年11月02日 公開



Think and Quest(アクティブ・ラーニング型教材)

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