Learn-S 指導事例【英語リスニング】共通テスト対策指導 ~前編~

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Learn-S 指導事例【英語リスニング】共通テスト対策指導 ~前編~

Learn-S 指導事例 vol.011

毎回、各教科のスペシャリストを招いて、対談やインタビュー形式で、各校の指導事例や先生方の熱い声をお届けする、ラーンズの連載企画「Learn-S 指導事例」。

今回は、共通テストに向けた英語リスニング指導について、高校3年生ご担当の3名の先生方にお話をうかがいました。これから共通テスト本番までの英語リスニング指導のご参考になれば幸いです。

【英語リスニング】共通テスト対策指導 ~前編~

共通テスト 英語(リスニング)の出題ポイント
  1. 試験時間はセンター試験と変わらないが配点が大きく変わり、「リーディング」「リスニング」それぞれ100点で均等配点となる(センター試験の筆記200点、リスニング50点から変更)。
  2. リスニングの音声問題が流れる回数は、1回読みのものと2回読みのものとで構成される。
  3. アメリカ英語に加えて場面設定によってイギリス英語が使われることもある。リスニングの読み上げ音声については、多様な話者による現代の標準的な英語を使用。

2018年度 試行調査問題リスニング音声

服部 雅史先生
愛知県・私立滝中学校・滝高等学校 教諭。
教職歴18年、同校に赴任して19年目。現在は高校3年生を担当している。中学1年生から持ち上がっており、6年一貫の英語指導を目指し取り組んでいる。

田野 雅人先生
岡山県立岡山芳泉高等学校 教諭、進路指導主事。
教職歴23年、同校に赴任して4年目。現在は進路指導主事と英語科主任を担当している。新入試1期生となる学年を受け持ち、意欲的な試みに多く取り組んでいる。

松村 秀機先生
熊本県立済々黌高等学校 教諭。
教職歴33年、同校に赴任して9年目。現在は進路指導部に所属し、3年生の英語の授業を担当。好きな言葉は、The sky's the limit. ~可能性は無限大~。

01. 低学年のリスニング指導

外部検定のスコアアップがモチベーションになる

ラーンズ編集部
今年の高校3年生から共通テストが導入されますが、この学年の高1・高2での指導で工夫されたことをお教えください。
田野先生
本校のカリキュラムでは、英語はほぼ1日1時間です。コミュニケーション英語を4単位、英語表現を2単位で行うと、リスニング指導を単独で行うことが難しく、1年生ではこれといったリスニング指導を行っていませんでした。
初期指導で留意していることは、英語嫌いをなくすために、リスニング指導の前に、授業でのスピーキング活動で英語を話すことが楽しいと感じてもらうようにしていることです。他校ではどのようなリスニング指導をされているのでしょうか。
松村先生
昨年の高3生は、高1から持ち上がり3年間指導しました。センター試験最後の学年でしたが、英語外部検定試験(以下、外部検定)は私大入試でも生かせるので、低学年のときから外部検定の指導に力を入れていました。本校では「前の学年を超えよう」という意識があり、今年の高3生はさらに力を入れてきました。外部検定のスコアが生徒のモチベーションになっているようです。高スコアの生徒が増えており、前の学年と比較してもリスニングの力はついているようです。
服部先生
本校では、高1・高2のときに、生徒が興味を持ってくれたらよいと思い、授業の合間にTED(Technology Entertainment Design,TED talks)を視聴させて、いろいろな国の人の英語に触れさせるようにしました。

試行調査の問題を見て、今までの指導を変える必要があると感じた

ラーンズ編集部
共通テストに向けた指導はいつから始められたのでしょうか。
服部先生
本校は中高一貫校で、外部検定については、中学から指導しており、高校低学年ではおもにライティングの指導をしてきました。リスニングの指導は変える必要がないと思っていましたが、試行調査のリスニングの問題を見て難化したと感じたので、対策を早めにすることにしました。センター試験のときは高3の2学期から自宅学習で対策していたのを、今年はスタートを早めて、学校が再開した高3の6月から授業で対策しています。授業では大問別に特徴を解説しており、例年よりかなり手厚く指導しています。また、例年より多くのテキストを使って演習させています。
田野先生
私も試行調査の問題を見てこれは大変だと思ったのと、コロナ対策で自習の時間が増えると思い、例年より4・5か月前倒しで自学に適した教材を持たせました。
松村先生
本校では、今年の1年生は、共通テスト本番形式の問題集にすでに取り組んでいます。
一同
高1生が共通テスト本番形式の問題集に取り組んでいるのですか(驚き)。
松村先生
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」ということで(笑)。最初に目標を見せるということです。1年生でもスクリプトが読めれば理解できるので、必ずしも無理ではないと思います。
服部先生
次のサイクルでは何をやっていけば共通テスト対策になるのかなと考えています。英語の基礎力をつけるということに立ち戻りますが、また一からやっていくなら、何をすればリスニングの力をつけられるか、お二人の先生にお聞きしたいです。
松村先生
私は、バランスの取れた英語4技能の指導に尽きるのではないかと思います。学校としても個人としても力を入れてきたのは、外部検定の活用です。生徒たちは外部検定のスコアアップを目指して頑張り、授業でもそれを意識して指導します。たとえハイスコアが取れなくても、スコアアップを目指して勉強していたら、共通テスト模試でも高得点を取ってくるので、外部検定をうまく活用するのはよいと思います。
田野先生
国のGIGAスクール構想では、生徒一人ひとりが端末を持つようになるので、それをうまく使うことができないか考えています。低学年から生徒自身が自分の課題に気づける仕掛けができればいいと思います。1年生のときに音声を重視した単語の勉強が大事なことに気づかず、3年生になってあわてても遅いのです。
低学年のリスニング指導のポイント
・外部検定を活用して生徒のモチベーションとリスニング力を高める。
・共通テストの形式・問題に早めに触れさせて目標を見せておく。
・バランスの取れた英語4技能の育成、生徒自身による課題の把握。

02. 共通テスト模試の結果から見えた課題

外部検定のリスニングとは異なる力が求められる

ラーンズ編集部
模試の結果から、リスニングでは学力上位層と下位層の差が大きく、「できる・できない」がはっきりしているように見えたのですが、先生方はどうお感じですか。
服部先生
共通テスト模試では、高校で習う文法事項が散りばめられており、語彙も高校ならではのものが出題されているように思います。また、リーディングともつながりますが、聞いたり読んだりしてすぐにイメージできることが必要です。外部検定は一部分が聞ければ解答できる場合が多いですが、共通テスト模試では複数箇所を正確に押さえなければ引っかかる問題があります。30分間集中して聞き続けなければならないし、外部検定とくらべてもタフだと思います。
田野先生
本校の場合、外部検定のリスニングセクションで同じ点数でも、共通テスト模試のリスニングとの比較では、±20点程度のばらつきがありました。ある程度の相関はありますが、外部検定と共通テスト模試では、同じリスニングでも異なる力が必要なのではないかと思っています。
服部先生
田野先生がおっしゃるように、共通テスト模試では単に英語を聞くだけではない部分があると感じます。本校でも、外部検定が満点の生徒でも、共通テスト模試では満点が取れませんでした。
田野先生
共通テスト模試になって問題自体は大幅に変わったとは思いませんが、メモを取りながら、講義形式のワークシートの空所を埋め、解答を考えるなど、作業が複雑になったと思います。解答の根拠となる箇所が音声のどこに出てくるかわからないので、解答するのがとても難しい場合もあります。今までよりも、処理速度が求められる問題が多く、音声を正確に聞かなければならない問題も多くなったと思います。さらに、解答の鍵になる単語がシビアに要求され、その単語を聞き逃したら答えられない問題もあります。それでも、できる生徒はできています。できる生徒は、1文1文をきちんと理解して、正確に読めるから正確に聞けて、スピード負けしていません。
ラーンズ編集部
学力層ごとの指導はどのようにされていますか。
田野先生
60点を安定して超えない生徒には、1~2行の英文を1回聞かせて、正確な意味把握の確認、それから多聴です。問題音声で聞こえたものに引っかからない、選択肢での言い換えに気づけるかどうかもポイントです。あとは精読も必要です。読解の授業でも、言い換えを意識させます。本文中のcaringが選択肢でconcerningになっているなど、具体例を挙げて意識を高めます。そして、成績上位の生徒には、メモを取りながら、概要を把握し、設問に答えるというマルチタスクに慣れさせます。また、直接答えになりそうでないところが問われて差がついていたので、細かい部分にも注意してメモを取る練習が必要です。概して、中学受験を経験した生徒は、このような問題に強いように思います。
服部先生
本校は中高一貫校ですが、確かに中学受験を経験している生徒は得意だと思うことがありますね。
田野先生
高校でもしっかり演習させて、マルチタスクに対応できる力をつけさせたいです。
ラーンズ編集部
第5問・第6問は1回読みで難易度が高く、内容を理解し、読み上げられた表現から言い換えられた正解選択肢を見抜く力も必要です。この点について、どのようなご指導をされているのでしょうか。
田野先生
解き方の細かいテクニックは、こちらからは極力言わないようにしています。出題が変化したときに対応できない場合があるからです。共通テスト本番ではそもそもどのような出題がされるかわからないので、本質的な力をつけさせるのが大切だと思います。quite a fewとかkeep track ofなど、知らない表現が出てくるとリスニングは解答できない。曖昧な理解だと対応できないことを認識させて、そこから努力させることが大切だと思います。
松村先生
模試の事後指導で、正答率が低かった問題を分析して、演習問題で似たような問題が出たときに合わせて解説しています。共通テスト模試の結果を分析すると、1学期は1回読みが苦手な生徒が多かったのですが、2学期は全国的に改善していたようです。リスニング受験中のポーズの時間、つまり考える時間、準備する時間の使い方について指導が施された学校が増えたのだと思います。音声面では、音の連結や脱落に注意することですね。
服部先生
共通テスト模試になって、第4問~第6問など、問題形式自体が複雑になっています。問題を解く前にある程度自分で考えておくことが必要です。ポーズの時間をどう使うかも大事です。生徒は音声が流れるまで何もせずに待っていることがあるので、音声が流れるまでの時間の使い方を、生徒と一緒に取り組んで教えています。生徒はいったん聞けないと諦めるのですが、問題によっては音声内に解答の鍵になることが言い換えられて再度述べられる場合があるので、そこを丁寧に教えて、同じ形式の問題に当たらせています。授業内では最初は丁寧に、あとは自分で、という指導を行っています。
田野先生
第6問は問いがざっくりしているのでそこまで難しくはないですが、細かいところを問われる第5問の指導に困っています。授業では、一度解いた問題をもう一度聞かせています。苦手な生徒には、1回スクリプトを読んでからリスニングに取り組ませることもあります。第5問は、音声の英文の内容を理解できていない生徒が多いようですが。意外と第1問・第2問にも苦戦している様子です。1回読みになった第3問も易しくはないです。音声が長くて、どこが解答の根拠になっているかがわからないような問題は厳しいですね。
松村先生
リスニングもリーディングも思考の流れは同じで、リーディングができない生徒はリスニングもできません。語彙も日本語との1対1の置き換えでやっていると対応できません。たまたま、数社の模試で「almost」が出てきて、正解率が低かったようですが、単語の理解がきちんとできていないとリスニングはできないということです。速読力と、正確に読む力がより一層、大事になると思うので、リスニングとリーディングの指導を今まで以上に力を入れて行います。低学年から、リスニングの力とリーディングの力を一緒に高めていくことが大切です。
問題形式で言うと、生徒はイラスト問題には強く、選択肢が英文になると苦手で、さらに選択肢の英文が長くなるとできなくなっています。また、講義形式のワークシートを完成させる問題は弱いようです。このような生徒の傾向を見て指導をするようにしています。1問1問を解けるようになることが大切です。1回読みの問題では確かに学力層によって正解率に差が出ていますね。
ラーンズ編集部
イギリス英語への対応についてお教えください。
松村先生
本校のALTの先生は、現在はアメリカ人2名ですが、6月までイギリス人の先生がいらっしゃいました。共通テストの話者は必ずしもアメリカ人ではなく、イギリス人の場合もあるし、英語を母語としない話者の場合もあります。そのことへの対応は大事だと思います。
服部先生
普段の授業でも、いろいろな国の人の英語に触れさせるようにしました。
松村先生
慣れが必要だと思うので、本校では、イギリス人のALTの先生に自作のテキストに音声を吹き込んでもらって、それを用いてリスニングの演習をしています。
田野先生
共通テスト模試では、解答に必要な部分がイギリス英語になっていたら差が出ています。話者が非ネイティブでも、問題が難しくなければ、そんなに難しくないようです。解答に必要な部分が短い音声で、確実に聞かないといけない場合は厳しいです。これについてはなかなか対策が難しいと思っています。
共通テスト形式のリスニングのポイント
・複雑な作業、処理速度、正確な聞き取りなど、外部検定とは異なる力が求められる。
・ポーズの時間、音声が流れるまでの時間の使い方の指導。
・マルチタスクへの対応と、とにかくメモを取ることの指導。
・話者がイギリス英語、非ネイティブの場合への対応。

「英語リスニング 共通テスト対策指導 後編」は11月20日(金)に掲載予定です。
後編では、「これから共通テスト本番までの対策指導」をテーマに、生徒によって異なる課題への対応や、リスニングが苦手な生徒への指導内容、共通テスト直前期のご指導についてなどおうかがいしています。ご期待ください。

学校紹介

愛知県・私立滝中学校・滝高等学校
普通科、1学年約340名、おもな進路状況:国公立大 約150名(うち難関国立大 40名)

岡山県立岡山芳泉高等学校
普通科、単位制、1学年320名、おもな進路状況:国公立大 約240名(うち難関国立大 21名)

熊本県立済々黌高等学校
普通科、1学年約400名、おもな進路状況:国公立大 約260名(うち難関国立大 45名)

編集後記

英語編集
湯浅

共通テストのリスニングでは、音声を正確に聞き取る力、情報処理の力など、センター試験よりも高度な英語力が求められ、マルチタスクへの対応やメモを取ることの練習が重要であることを教えていただきました。また、低学年からのバランスの取れた4技能指導が、リスニングの力につながるのだということをあらためて感じました。服部先生、田野先生、松村先生、どうもありがとうございました。

2020年10月 取材
2020年11月5日 公開


ラーンズから
リスニングの共通テスト対策には、「2021共通テスト対策【実力完成】直前演習」がおすすめです。全問新規のオリジナル予想問題集で、2018年11月に行われた2回目の試行調査の問題に、音声の語数・速度、ポーズなどすべて準拠しています。また、第3問の1回読み音声をダウンロードしていただくこともできます。
総仕上げには、6教科21科目を収録した実戦テスト形式の「2021共通テスト対策【実力完成】プレパック」を準備しています。全問オリジナルの予想問題で構成しており、最終確認をすることができます。

『共通テスト対策【実力完成】直前演習 英語』