高等学校新学習指導要領 国語のおもな論点

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高等学校新学習指導要領 国語のおもな論点

Learn-S 教育情報

今回は、高等学校新学習指導要領「国語」に関する社内向けの研究会で、東京都立国際高等学校の沖奈保子先生にご講演いただいた内容をまとめました。カリキュラム編成のご参考になれば幸いです。

参考資料:高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 国語編(文部科学省)

高等学校新学習指導要領 国語のおもな論点

沖 奈保子先生
東京都立国際高等学校 教諭(国語)、島根大学非常勤講師。
「理念に基づく授業づくり」をモットーに、先生方一人ひとりの教育理念に寄り添った、国語の授業のあり方を提案している。現在は、新課程における「言語文化」から学ぶ生きる力の実現を模索中。著書に『高校国語 アクティブラーニング』(学陽書房 共著)。他、『高校の国語授業はこう変わる』(三省堂)、『高等学校国語科授業実践報告集』(明治書院)等に授業実践を掲載。

1.社会の変化と従来の国語教育(高校)の課題

教材への依存度が高い(読み取りが中心)
 → 指導内容の課題

主体的な言語活動(話すこと、書くこと)の軽視
 → 学び方の課題

講義型の知識伝達授業が中心
 → 指導方法の課題

2.高等学校新学習指導要領「国語」の方向性

「何ができるようになるか」(資質・能力)
 基礎的な知識と技能 = 読むために必要な知識
 思考力・判断力・表現力 = 話すこと・聞くこと、書くこと、読むこと
 学びに向かう力、人間性等 = 言語文化を生きる力へ

  1. 文章の内容や表現の仕方を(生徒が)評価する
  2. 文章の内容や表現を目的に応じて適切に活用する
  3. 多様なメディアから読み取る
  4. 読み取ったことを根拠に基づいて的確に表現する
  5. 国語の語彙の構造や特徴の理解(言語の構造の理解)
  6. 古典に対する学習意欲の向上(地続きの言語文化)

(必履修科目、全員履修)
実社会・実生活に密着した「現代の国語」
連綿とつながる言語文化、尊重、誇り~豊かな「言語文化」

3.新設科目「現代の国語」「言語文化」の特徴

文学的な文章はすべて「言語文化」で扱われる(現代文学も)。

「現代の国語」 「言語文化」
扱われる内容 論理的な文章、実用的な文章 文学的な文章(小説、随筆、韻文、古文、漢文)
思考力・判断力・表現力 話すこと・聞くこと、書くこと、読むこと 書くこと、読むこと

4.新設科目「論理国語」「文学国語」の特徴

簡単に言うと、「論理国語」は評論文を扱い、「文学国語」は文学的文章を扱う。

「論理国語」 「文学国語」
扱われる内容 近代以降の論理的な文章、実用的な文章。必要に応じて、翻訳の文章、古典における論理的な文章 近代以降の文学的な文章。必要に応じて、翻訳の文章、古典における文学的な文章、近代以降の文語文、演劇や映画の作品、文学についての評論文
思考力・判断力・表現力 書くこと、読むこと 書くこと、読むこと

5.新設科目「古典探究」の特徴

トータルで見ると古典の時間が減っている(6→5相当)ので、その分、密度が濃くなる。

6.各領域における標準時間数が示された

話すこと・聞くこと 書くこと 読むこと
「現代の国語」 20~30時間 30~40時間 10~20時間
「言語文化」 5~10時間 古典:40~45時間
近代以降:20時間
「論理国語」 50~60時間 80~90時間
「文学国語」 30~40時間 100~110時間

アウトプット、とくに「書くこと」に重点が置かれている。
「文学国語」での〝書くこと〟とその評価はどのようになるのか?
あくまで〝標準〟時間数だが、「現代の国語」は、実用的な文章で話すこと・聞くこと、書くことの指導ができるのだろうか。

「現代の国語」の指導はどのようになるのか?
・実用的な文章を用いたコミュニケーション中心の指導。
・「書くこと」の評価。
・「話すこと・聞くこと」の指導。
 

7.教育課程の編成 -どの科目を取ればいいのか-

科目 標準単位数 必履修
「現代の国語」 2
「言語文化」 2
「論理国語」 4
「文学国語」 4
「国語表現」 4
「古典探究」 4

高1は問題ない。新旧課程のいずれも4単位で収まる。

高2から「論理国語」「文学国語」のどちらを取ればいいのかという問題が起こる。
大学入試を考えると「古典探究」+「論理国語」では従来から教えていた文学は不要なのか……。

8.どの科目をだれが担当するのか -科目の枠組み-

いままで「国語総合」で現代文(小説)を教えていた先生が「言語文化」を持つと、古典も扱うことになる。また、分担して指導した場合、評価をどうするか。

9.共通テストの出題の検討状況(追加情報)

2020年10月末に、大学入試センターから次のような内容の文書が発信されました。

大学入学共通テストは、高等学校段階の基礎的な学力の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力について把握することを目的として、学習指導要領の改訂時には、その趣旨を踏まえた出題教科・科目を設定することとしている。

大学入試センターでの現時点での検討状況
新学習指導要領での共通テストは「現代の国語」と「言語文化」の内容を出題範囲とし、近代以降の文章(論理的な文章、実用的な文章、文学的な文章)と古典(古文、漢文)を扱うことで検討が進められている。

検討の考え方
新学習指導要領では、「現代の国語」と「言語文化」が必履修科目である。また、現行の大学入学共通テストでは、現行学習指導要領の必履修科目「国語総合」の内容を出題している。このため、新学習指導要領でも、必履修科目の「現代の国語」と「言語文化」の内容を出題する、という考え方。

2020年12月2日 公開


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『新高等学校学習指導要領 『言語文化』のバトンをつなぐ』