新高等学校学習指導要領『言語文化』のバトンをつなぐ 連載企画 第3回

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高等学校新学習資料要領 『言語文化』のバトンをつなぐ 連載企画 第3回

教育情報

2022年度よりスタートする、新「高等学校学習指導要領」。その中でも、国語の『言語文化』に注目し、ドルトン東京学園中等部・高等部の沖奈保子先生に情報や指導のポイントなどをまとめていただきました。全6回の連載でお届けする予定です。
第3回の今回は、「資質能力をベースにした『言語文化』の単元づくり」について、具体的にご紹介いただいています。ぜひ参考になさってください。

『言語文化』のバトンをつなぐ

沖 奈保子先生
ドルトン東京学園中等部・高等部 教諭(国語科/探究コーディネーター)。島根大学教育学部嘱託講師。「古典はおもしろい!」を合言葉に、古典作品と現代社会をつなぐ授業実践を日々模索中。
著書に『高校国語 アクティブラーニング』(学陽書房 共著)。他、『高校の国語授業はこう変わる』(三省堂)、『高等学校国語科授業実践報告集』(明治書院)等に授業実践を掲載。また、国立教育政策研究所『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』において、評価規準、評価方法等の工夫改善に関する調査研究に協力。

連載企画 第3回

4月にむけて準備開始!―「言語文化」の単元づくり

1.「言語文化」の年間計画は?

年を新たにして、いよいよ今年から始まる「現代の国語」「言語文化」の年間計画を立ててみようと、今年1年の見通しを立ててみようとカレンダーを見ながら考えてみると……。
あれれ? 予想以上に、授業時間数が少ないのでは……?

実際には、4月は授業開始までにオリエンテーション、5月は連休、さらに行事に定期考査が入るため、実際には26単位分確保することも難しいかもしれません。

この時間数の中に、昨年までのように「小説、古文、漢文」と教材を当てはめていくとしたら、自然とパンクしてしまいます。

小説は、1学期中に「羅生門」を扱って、古文は入門教材と最低でも教材を1作品、文法は動詞の活用までは終わらせたい。7月には模試があるから模試の範囲はそれまでに定着させたい、となると用言の活用まで扱わないと! 漢文も訓読のルール確認をして、故事成語などを最低でも1作品くらい読んで、その時に再読文字、否定形などの基本の句形は触れておきたい ――――

などと教材を並べていくと、あっという間にキャパオーバーになってしまうのです。

2.「教材を教える」から「教材で教える」へ

このように「国語総合」の「古典」として扱っていた時間を、「言語文化」にスライドして行おうとすると、扱う教材が山盛りになってしまいます。これまでと同様の感覚で教材を並べて、新学期から順に授業を行うと、自然と授業は駆け足で進んでいきます。予定していた内容が終わらず大型連休や週末に予習・復習など課題が増え、その提出や点検に追われるなどして、先生にも生徒にもお互いに負荷がかかってしまいます。宿題が多く消化不良の事柄が重なれば、おのずと古典嫌いや文学嫌いを生み出しかねません。

では、どうすればよいのでしょうか。第1回でもお伝えしたように、私たち授業者のコペルニクス的転換が求められているのです。「『羅生門』を教える」、「『児のそら寝』を教える」のではなく、「『羅生門』で」「『児のそら寝』で」教える――、という発想が重要になります。その時に、「教材」で「何を」教えるのか、生徒たちは、「教材」で、どのような能力を身につけるのか、何ができるようになるのか。「身につける力」を中心にした授業の構成が求められるのです。

具体的に上記表のように、まずは単元テーマを軸に考えていきます。

たとえば、「言語文化」のスタートとして、これから本格的な古典学習への理解を深めるために「言葉」そのものへの理解が必要だと考えたとします。そこで、古語の延長線上に現代の言葉があることを学ぶ単元とし、テーマを「古典と現代の言葉のつながりを知ろう」にします。
次にこの単元を通じて、生徒たちは最終的にどのような力を身につけるのかを設定します。今回は、古典と現代の言葉のつながりについて説明している文章や、古語と現代語を比較できる二つの素材を扱うことにして、それらの文章の内容を的確に捉える力の習得を目指す、と設定してみました。そのうえで、これらの力を身につけるために適切な具体的な教材を決めていくわけです。
このように、「単元テーマ → 目標(ゴール)設定 → 教材」の順に単元を構成していきます。そうすると設定した目標を達成するために教材を扱うので、言葉のつながりを理解できるかどうか、文章の読解場面においては文章の種類に応じて叙述を的確に捉えられるかどうかが評価の軸になり、それらを踏まえて学習活動を組み立てていくわけです。だから、扱う教材の隅々まで、毎回毎回精読する必要がなくなるのです。

このように、単元のテーマから目標を設定し、目標を達成するために扱う教材を決めていく。そうすることで、教材で教えることが実現可能になります。

3.古典から現代へ――現・古・漢のジャンルを混ぜた単元案

「教材を」教えることを少しずつ手放し、「教材で」を意識できるようになると、さまざまな単元学習の可能性が見えてきます。資質能力をベースにした単元案を作ろうとする時、これまで存在していた「古文」「漢文」「現代文」の間の境界線は自然と解消され、文章の種類やジャンルを超えて自在に組み合わせられるようになります。

たとえば、単元のテーマに即して、以下の表のような単元目標を設定した時に、考えられる教材の組み合わせは、一つだけではなく1.~4.のように複数の可能性がみえてきます。

これらの単元を年間指導計画の中のどこに設置するのかによって、扱う教材も異なってくるでしょう。また、それぞれの学校における生徒たちの特性に応じて最も適した教材は何か、を考え、単元で扱う教材を決定していくことも大切です。

その時に、単元目標に到達するために最も適したものを選定できるのが、他でもない私たち国語教師です。「〇〇〇の力を身につけるなら、△△△の教材が最も適しているだろう、なぜなら……だから」と、説明できる教材研究が今後ますます重要になってきます。

そしてこれら資質能力をベースにした「言語文化」の単元づくりこそが、実は共通テスト問題対策にもつながってくる――というのは、また次の回にお話ししていきます。

2022年1月25日 公開


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