研究会レポート(今未来手帳)『学びに向かう力をどう評価するのか ~ICT×手書きによる振り返りの重要性~』

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2022年2月3日(木)開催 研究会レポート(今未来手帳)
『学びに向かう力をどう評価するのか ~ICT×手書きによる振り返りの重要性~』

2022年2月3日(木)、非認知能力研究においての第一人者である岡山大学准教授中山芳一先生と、ICTと手帳(手書き)の併用を実践し成果をあげていらっしゃる札幌山の手高等学校佐藤革馬先生をお招きし、オンラインにて「学びに向かう力をどう評価するのか ~ICT×手書きによる振り返りの重要性~」を開催いたしました。その配信内容についてレポートいたします。

研究会の詳細

講師紹介

中山芳一先生
岡山大学全学教育・学生支援機構 准教授(教育方法学)
「今未来手帳」監修者。初年次キャリア教育を岡山大学全1年生に提供。近著(共著)『「ドラゴン桜」に学ぶやりたくないことでも結果を出す技術 東大メンタル』は、出版後数週間で再版。2018年11月に発刊された著書「学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす」は、1年あまりで五版に至っている。最近では「教育動向2022」において非認知能力について執筆。全国の産学官民の機関から講演や委員就任の依頼が引きも切らない。

佐藤革馬先生
学校法人西岡学園 札幌山の手高等学校(学年主任)
これまで様々な学校で手帳を活用した指導を実施。札幌山の手高等学校では一人一台iPadを導入し、本格的なICT活用が始まる。ICT活用の有用性と手書きの重要性を以前から考えており、両方を活用した指導をスタート。その有効性や事例を校内にとどまらず他校にも研究会等において伝えてきた。新教育課程で重要視される学びに向かう力を、ICT×手書きの活用でどう育成するかを日々学校現場で実践・研究している。

研究会

研究会 学びに向かう力をどう評価するのか
ICT×手書きによる振り返りの重要性
日時 2022年2月3日(木)17:00~18:30
対象 全国の高等学校・中高一貫校(中等教育学校)の先生
開催形式 ZoomでのLIVE配信

研究会レポート

講演:学校法人西岡学園 札幌山の手高等学校/佐藤革馬先生

アナログとデジタルの強みをいかして、生徒の成長につなげたい

現在、佐藤先生が勤務されている札幌山の手高等学校では、「セルフコントロール(自己管理)能力」と「タイムマネジメント(時間管理)能力」の2つのスキルを高める『理想の状態』を明確に設定し、生徒にも伝えているそうです。同時に、メタ認知力を高めるために、日々の振り返り活動を重視しているとお話しいただきました。

アナログツールの今未来手帳は「いつでも、どこでも」「記憶」することに主眼を置き、デジタルツールの授業支援アプリ・ロイロノートは「共有」「記録」に主眼を置いています。アナログは「記憶するツール」で、デジタルは「記録するツール」だと明確に目的を分けているそうです。

生徒たちにはメタ認知力を高めて主体的な学習者になってほしい、と考えながら日々の指導に当たっておられる佐藤先生。そうするために、アナログとデジタルを融合させ、2つの強みをいかした指導でより生徒の成長につながるようにしていきたいと、力強く語っていただきました。

講演:岡山大学全学教育・学生支援機構/中山芳一先生

振り返りの質を高め「メタ認知力」を鍛える

近年、「メタ認知力」の重要性はいたるところで語られるようになってきました。新しい学習指導要領でも、振り返りとメタ認知力の重要性が明確になっていると、中山先生はお感じになられているそうです。

新しい学習指導要領では、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点が評価の対象となっています。国立教育政策研究所は、「主体的に学習に取り組む態度」の評価の方法について『自分の学習状況を把握し、学習の進めかたについて試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら学ぼうとしているかどうか、意思的な側面を評価することが重要』と提示しているそうです。

中山先生は、主体的に学習できたかどうかについて、教師は主観的に評価するのではなく、生徒の学習過程を生徒自身が一人称でどれだけ言語化できているか(生徒自身の振り返りの質)を評価することが重要なポイントだとお話しくださいました。ただし、評価するということは、指導することとセットでないといけないそうです。

ある大阪の公立中学では1年生からの積み重ねによって、どの生徒も高いレベルで振り返りができています。振り返りにこだわり続け、日常的に生徒が自走できる仕組み作りがあるからだそうです。中山先生ご自身も監修された「今未来手帳」は、生徒が自走でき、振り返りの質を高めながらメタ認知力を鍛えるリフレクティブポートフォリオ型の手帳教材となっているともお伝えいただきました。

対談:学びに向かう力をどう評価するのか

「主体的に学習する態度」のグレーディングの難しさ

佐藤先生
教員は「主体的に学習する態度」について、成績をつけるための評価をしなければなりません。ぜひ中山先生に、生徒自身の一人称の評価と教員側の指導・評価を結び付ける方法や事例を教えていただきたいと思います。
中山先生
評価についての持論ですが、基本的には学校現場における評価はグレーディングとエビデンス、そして最も「アセスメント」が重要だと思っています。しかし、「主体的に学習する態度」についてはアセスメントをするべきですが、グレーディングするものではないということが前提ではないでしょうか。
しかし、そうすると先に進めなくなるため、今は主体的に学習する態度を教師が評価するのではなく、生徒自身が主体的に評価しているそのものを評価することでしかグレーディングはできないと思っています。
佐藤先生
「主体的に学習する態度」のグレーディングは慎重にやっていきたいと考えています。自己言語化の能力を丁寧に育て、その善しあしではなく、その過程の努力を見てあげることしかないのかなと思います。その過程を見るのは大変ですが、生徒の変容を理解するほうに教員が変化していければと思っています。

メタ認知力を高めると、自己評価は安定する

中山先生
基本的には、本人の自意識の問題もあるので、自己評価は難しいと思います。例えば、幸福度調査も誕生日だったら高くなるし、その日の朝に喧嘩していたら低くなりがちではないでしょうか。しかし、本人のメタ認知力が高ければ、自己評価は安定しています。またそのために、振り返りをしやすくするしかけも大事だと思います。
講演でご紹介した大阪の学校では、毎回の授業で、自分がこの授業をやるにあたってどんな非認知能力を意識するか設定し、それを踏まえた振り返りをするようにされているそうです。
佐藤先生
すばらしいと思います。生徒に評価基準を提示し、生徒自身にやらせている。毎回マインドセットしていて、授業に臨んでいる。この仕掛けが良くてとても参考になります。
中山先生
フィンランドで8割以上の中高生がダウンロードしているアプリも、一日が始まるとき、自分が学校にいる間何を意識するのかなどの目標設定をして、その観点で振り返りをするそうです。こういったものをセットでやっていくと、振り返りの質を高めていけるだろうなと思っています。

振り返りの言語化トレーニングは「振り返りと常にセットの指導」

佐藤先生
しかし学力が低い生徒は、振り返りの言語化自体が難しいとも感じます。
中山先生
岡山のある学校でも試験的に、二学期の間ずっと「今未来手帳」で日々の振り返りをしていきました。その中で、生徒は目に見えて変わっていきました。ルーブリック、振り返りの質も高まっていきました。必ず振り返りがセットになると、自分が今どうしているのか、どういう状態で授業を受けているのかを意識するようになります。
佐藤先生
以前、手帳指導を失敗したのは、やらせているというような負担感も大きく、生徒もいやになっていく負の連鎖でした。教員からの声のかけ方も大事だと感じました。
中山先生
仕組みだけではなく、生徒と先生との関係性の中で築かれていくことがありますね。今後は先生の働きかけ方にもフォーカスしていきたいと思います。

まとめ

この他にも、メタ認知力について、教員の負担削減についてなど、先生方の興味のある話題が多く、研究会は大盛況に終わりました。

弊社では今後も教材をご採用いただいている先生に向けた様々なユーザー会を企画してまいります。

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研究会を終えて

本研究会にご参加いただいた先生方からご感想をいただきました。

導入校の声
関東地区
S高等学校
T先生

今まで、認知能力と非認知能力が何なのかもわからずに生徒に指導してきてしまいました。ただ、暗記に頼ったり、解法を覚えるだけ、教員が一方的に話をするだけの授業では、入試やその後の人生で通用しないということは感じ取っていました。生徒同士で理解を深め合う試みも始めていたのですが、今回の中山先生のお話を伺い、その先のアプローチのヒントを頂けた感じがします。

導入校の声
九州地区
O高等学校
H先生

手帳導入時の思いや導入後の様子を見守る様子から、佐藤先生のお人柄を感じることができました。手帳の機能やおすすめポイントなどの話はよく聞くしWebサイトなどでも色々と見て知れますが、実際に導入する際の学年主任の思い、担任の負担になってしまうことを回避すべき点などが知れてよかったです。

導入校の声
中国地区
I高等学校
K先生

佐藤先生のトライ&エラーから学ばれたまさに知恵の詰まったお話でした。また、私も生徒につづらせるのは手書きの手帳がいいと思っていますが、それでは教員の点検や記録の整理や保管、持ち運びの面で難があると感じていました。しかし、ページを写真にとって送るというのは目からうろこのアイデアで、これならば「記録」として生徒との受け渡しもスムーズで、保管に場所も要さず、かつ後から生徒の成長も順を追って確認でき良いアイデアだと思いました。


2022年2月 開催
2022年3月8日 公開

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