「新課程における生物の指導について」(前篇)

特別座談会(コラム Vol.1)

「新課程における生物の指導について」(前篇)

「新課程における生物の指導について」(前篇)

今回は、新課程における生物の指導について、「進研WINSTEP生物基礎」(2012年11月発刊),「進研WINSTEP生物」(2013年9月発刊)で執筆協力いただいた駿台予備学校の4名の先生方に,新課程「生物」の特徴やご指導について,お話しをうかがいました。

高学年用「生物」の指導について

「新課程における生物の指導について」(前篇)

編集担当
今回の学習指導要領の改訂では,生命科学の急速な進展への対応から「現代化」が考慮され,とくに高学年用「生物」では,現在研究が進んでいる内容が多く教科書に扱われるようになりました。そこで,新課程の教科書内容や,最近の入試傾向,予備校でのご指導などについて,お気づきのことを教えてください。

山下先生
この分野に限らず,新課程では物質レベルの内容が多くなりましたね。教科書の図もかなり詳しくなっています。従来は概要・概念までしか示されていなかったものが,新課程では物質名をはじめ,より詳しく示されています。

河崎先生
特にタンパク質が詳しくなりましたね。

山下先生
そうですよね。膜輸送タンパク質が「輸送体」と「チャネル」っていうように分かれたので,タンパクの種類が細分されて増えましたね。ほかに「細胞接着」や「細胞骨格」も詳しくなっています。

佐野先生
従来の教科書では「チャネル」と「ポンプ」までで,「担体」という語はなかったけど,大学入試ではすでに「担体」「輸送体」「トランスポーター」などと,問題で扱われていましたね。

河崎先生
詳しくなった教科書をみると,生物というよりも,化学に近い感じですよね。タンパク質に限れば,いままでの「化学U」の教科書と変わらないですね。

一同
うーん,なるほど。嫌だな(笑)。

山下先生
大学入試で出題されるので,講義では教えていたけれど,それがきっちり教科書に載るようになったっていうのが私の印象ですね。

河崎先生
うかつな絵を描けないですよね。ナトリウムポンプとか,教科書に描かれているような詳しい図はとても黒板に描けない。描くだけで時間が経っちゃうし(笑)。

「新課程における生物の指導について」(前篇)

佐野先生
私は,むしろ好ましいと思えることもあります。従来の教科書で学習した学生は,生命現象を静的(静止的)に捉えており,例えば細胞だったらゴルジ体などの細胞小器官をそれぞれバラバラに静的に捉えているために,「何でそうなっているの?」と疑問を抱くことがよくありました。それが,新課程の教科書では,それぞれが連携しながら働いているっていうように,より正確に伝えようっていう意図が感じられるんです。例えばモータータンパク質にしろ,細胞骨格にしろ,実際は小胞が動いてみえるのは,実はこういう仕組みがあるからなんだよと,正確に伝えようとしている。出てくる物質が増えたことでも,より精度の高い説明ができるようになった。いままでの高校生物ならではの「曖昧さ」がなくって,より正確な表現,ほかのサイエンス(科学)と同様にきちんと伝えていこう,という意図がくみ取れるんです。これからは「生物は理科の中の文系科目」などと,訳のわからないことは言われなくなりますね(笑)。

山下先生
例え話で講義を終わらせていた私にとっては,とてもつらいんですけれど,これからはきっちり教えなきゃいけないですね。

編集担当
仕組みを正確に捉えさせようと思ったら,必然的に詳しくなったということですね。

「新課程における生物の指導について」(前篇)

佐野先生
従来の教科書では断片的な知識で概要だけを扱っていたのが,新課程ではこういう仕組みがあるよね,だからこうふうになるんだよねって,ちゃんと理屈から教えてあげられるなって思います。

河崎先生
そうですね。先日も講義で,小胞が動くことについて学生が質問に来たときに,「モータータンパク質を学習したし,細胞骨格も学習したし,考えられるよね?」って応えたら,納得していました。彼らは知識をつなげることで現象をイメージできるようになったのだと思います。

編集担当
なるほど。正確に理解させるという点では,新課程の教科書は内容がしっかりしており,適しているということですね。ただ,あの分厚い教科書を読み切れるかどうか……。

山下先生
頑張って読みこなしてほしいと思いますが……。登場人物がすごく増えたので,それぞれの性格や,人物間の関係を理解しつつ,全体的なストーリーも捉えていくことになるので,きついだろうなぁと思います。

一同
なるほど。

「新課程における生物の指導について」(前篇)

編集担当
「WINSTEP生物」のSTEP1「重要語句」は,「教科書が読み切れない」ことを解消したいという思いから,従来版より企画を立て直しました。従来版「WINSTEP生物T」のSTEP1(840個),「WINSTEP生物基礎」のSTEP1(600個)では,各社教科書で扱われている用語を「くり返して取り組んで覚える」ことをねらいとしていましたが,「WINSTEP生物」では「読んで理解できる」ことをねらいにしました。具体的には,執筆いただいた橋本先生からご説明いただきます。

橋本先生
とにかく,扱われる内容が多いので苦労しました。各社の教科書を読みこんだ上で,今までの入試傾向を踏まえて,重要な事項を網羅しました。学生が「読んで理解できる」ように,従来版に比べて次の3点を工夫しました。
 1)「読んで理解」できるように,穴埋めの数を絞り込んだ(940個)。
 2)ストーリー性を重視し,理解しやすい順番で項目を並べた。
 3)細かく箇条書きにして,テンポよく読めるようにした。
「WINSTEP生物」のSTEP1は,教科書よりも読みやすく,取り組みやすくなっています。また,従来版と同様に,理解を助ける図版を盛り込み,各ページの右段には授業で先生が触れられるような関連トピックスを載せています。たくさん出てくる登場人物を理解するとともに,一通り取り組むことで全体ストーリーが捉えられると思います。

編集担当
ありがとうございました。
各社教科書の重要事項を網羅する「教科書横断」のコンセプトは「WINSTEP生物T」から始めて,「WINSTEP生物基礎」「WINSTEP生物」でも引き継いでいます。各教材のSTEP1「重要語句」は,学校用版下としてラーンズWEBサイトからダウンロードできるので,是非,先生方に活用いただきたいと思っています。


内容にバラつきがみられる教科書

河崎先生
「教科書横断」といえば,教える側としては各社教科書のバラつきも気になりますよね。例えば,第1章「生命現象と物質」では,各社教科書の全ページに占めるこの分野のページ数の割合は,少ないところは26%,多いところは34%となっています。

佐野先生
各社どの分野に重点をおいているかで,どうしても扱いに差がでてきますね。教科書でご指導されている先生は,自分の使われている教科書を中心に授業を進められるでしょうね。

河崎先生
そもそも,教科書によって扱われていたり,扱われていなかったりもあるし,同じ生物用語でも教科書によって表記が異なるものもある。膜輸送タンパク質でみても「チャネル」「ポンプ」「担体」のがすべて載っている教科書もあれば,「チャネル」と「ポンプ」だけのものもある。また表記も教科書によって「担体」とあったり,「輸送体」とあったりする。

山下先生
教科書のページ数は少ないですが「生態と環境」の分野は,バラつきが特に大きいという印象がありますね。「絶滅の渦」って,2社しかないけど,これ京大の問題で出ていましたね。

佐野先生
学習指導要領の改訂にもかかわられた首都大学東京の松浦克己先生が「高等学校生物用語 重要度試案2013」とい資料をまとめられており,各社の扱いがよくわかります。

編集担当
「教科書のバラつき」について,高学年用「生物」の教科書を執筆された先生から,次のようなお話をうかがっております。
「従前課程までは,踏み込んだ内容は「発展」にして検定に出していましたが,歯止めがなくなった新課程では「発展ではないことは発展に載せてはいけない」という検定指導が入った。このようなことは初めてで,検定前には各社「発展」に入れていたことが,検定後に本文で掲載されるようになった。各社本文のバラつきが大きくなったのは,このためだと思われます。」

橋本先生
編集担当の方から,「教科書横断」は自社の教科書をもたないラーンズの弱みが転じて強みになり得ることだと聞いたので,STEP1の執筆では注力しました。4社すべての教科書を読み込んだ上で,入試傾向をふまえてバラつきを取捨選択し,重要なものを取り上げました。STEP1の「重要語句」は,単なる「穴埋め問題」にはない付加価値になっていると思いますよ。

編集担当
「WINSTEP生物基礎」と「WINSTEP生物」では,教科書によって表記が異なるものは「担体(輸送体)」のように併記して示しています。また巻末に索引を設けているので,生徒の学習もはかどると思います。いままでの教材に比べて見本請求の反響が大きいので,学校の先生方の新課程入試に対する関心の高さがうかがえます。

2013年9月19日 取材



著者紹介

佐野 恵美子 先生(駿台予備学校 生物科講師)
講師歴25年以上。
暗記ではない、理解させる講義・解説を心掛けている。
いろいろなことへの興味がエネルギー源になっている。
おもな著書は「生物考える実験問題50選」(駿台文庫),「短期攻略 センター生物基礎」(駿台文庫),「短期攻略 センター生物T」(駿台文庫),「問題タイプ別 大学入試センター試験対策問題集 生物T」(実教出版),「10日あればいい大学入試 センター試験生物T、生物」(実教出版) いずれも共著。


橋本 大樹 先生(駿台予備学校 生物科講師)
講師歴十余年。
受験生だった自分自身が受けたかった授業を提供し,読みたかった本を著すことを目指している。
おもな著書は「生物理系問題 −標準編・発展編−」(駿台文庫),「短期攻略 センター生物基礎」(駿台文庫),「問題タイプ別 大学入試センター試験対策問題集 生物T」(実教出版),「問題タイプ別 大学入試センター試験対策問題集 生物基礎」(実教出版) いずれも共著。


山下 翠 先生(駿台予備学校 生物科講師)
指導のモットーは「得点アップのためにはまず楽しむこと」で,論理的でストーリー性のある講義・解説を心がけている。趣味はランニング。生徒の合格報告がフルマラソンの記録更新と同じくらい嬉しい。
おもな著書は「書き込みサブノート生物基礎」(旺文社),「解説が詳しい頻出重要問題集 生物T」(旺文社),「センター試験 生物T「考察問題」の点数が面白いほどとれる問題集」(中経出版)。


河崎 健吾 先生(駿台予備学校 生物科講師)
指導のモットーは「まずは一番大事なことをしっかり伝えること,そして考える習慣を身に付けてけてもらうこと,知識は最後に」で,1講義1講義で受講生の記憶に残る指導を心掛けている。日本の美味しい食べ物と新幹線が大好き。原稿を片手に毎月のようにこっそりどこかに遠征している。


ページトップへ
SSL GMOグローバルサインのサイトシール ラーンズのサイトでは、個人情報の入力をお願いするページは全てSSLセキュアページで保護しております。
ISO27001
IS538539 / ISO 27001:2013
ラーンズではISMSの国際標準規格「ISO27001」を取得。情報資産を適切、安全に保護するため、情報セキュリティ向上に努めております。
えるぼし認定企業
ラーンズでは、えるぼし3段階を取得。女性の活躍推進法に基づき、取り組みの優良企業として厚生労働大臣の認定を受けています。