Vol.33 いろはインタビュー 日本語教育研究所 春原 憲一郎さん 前篇

Vol.33 いろはインタビュー (特活)日本語教育研究所 春原 憲一郎さん 前篇



いろはインタビュー
 多文化共生分野において全国で活躍されている人物にスポットを当てて「多文化共生の今」を語っていただきます。
 第5回目は前篇・後篇に渡って、(特活)日本語教育研究所の理事 春原憲一郎さんに、「これからの日本語教育」をテーマにインタビューをしました。

プロフィール

春原 憲一郎 春原 憲一郎

春原 憲一郎(はるはら けんいちろう)
 1954年、東京生まれ。
 上智大学中退後、様々な経験を経て、日本アフリカ文化交流協会の事業によりケニアに滞在する。
 1980年から(財)海外技術者研修協会で技術研修生への日本語教育に従事し、国内外問わず多くの地域で、日本語教育環境の企画開発及び教師研修に携わってきた。その後、理事兼AOTS日本語教育センター長、(社)日本語教育学会常任理事、立教大学大学院特任教授、早稲田大学大学院兼任講師、法政大学兼任講師などを歴任。
 現在、(特活)日本語教育研究所理事。日本語教師や日本語ボランティアの研修などでも幅広く活動している。
 2008年第6回日本語教育学会賞受賞。
 著書に『わからないことは希望なのだ』(アルク)、『移住労働者とその家族のための言語政策』(ひつじ書房)、『生きる力をつちかう言葉』(大修館書店)、など多数。

いろはインタビュー動画


Q:現在、主にどのような活動をされていますか。

春原:
 2013年3月末で、32年間勤めた一般財団法人海外産業人材育成協会を辞し、半年ほどインドシナ半島で生活をしていました。帰国してからは、高校や大学、病院や地域などから招ばれると、コミュニケーションや多文化関係の講演や講義、授業をしています。


Q:日本語教育の現状と課題を教えてください。

春原:
 日本で多様な生活をしている外国人にとって、凝縮したカリキュラムで毎日勉強ができる人のために作られている「既存の日本語教育」というのは、うまくいきません。例えば、「○○してください」というのは初級前半の教科書の真ん中あたりにでてきます。国際交流基金や日本語学校など、恵まれた環境で学んでいれば、1ヵ月以内にそこに到達しますが、地域の日本語教室というのは、1週間に数回、数時間程度なので、「○○して」という、日常的によく聞いて使う表現が、1〜2年後にならないとでてきません。生活者は、今、直面している現実に必要なものを学ばなければならないので、リアリティをきちんと見据えた教材や教育方法を作っていく必要があります。

春原:
 さらに、生活者を取り巻く環境はひとりひとり異なります。子どももいれば、出産を控えたお母さんもいるし、男性の労働者もいる。家庭の状況や、どこで働いているかなど、生活の現場が本当に違うので、教育内容も均質化できません。家庭や学校や職場などで、どのような課題があるのか、それは外国人特有なのか、ということを考えながら、例えば、「資格を取るためには、試験を受ける分野の読み書き能力が必要である」とか、「転職を希望しているのであれば、面接のための能力が必要である」とか、現場と日本語教育を支援する人が連携をして、生活者を個別化しながらも、ある程度、共通のフォーマットみたいなものを作っていく必要があります。



春原:
 また、今までの日本語教育というのは、7〜8割が漢字圏の外国人に向けたものだったので、現在、読み書き能力の指導に関するメソッドというのは、ないに等しいのです。ところが、ベトナム、ネパール、スリランカ、EU諸国など、非漢字圏の人たちが増えてきています。
 加えて、学習だけに集中できる環境ではない成人の人たちに、日本人に並ぶぐらいの読み書き能力をどのように習得してもらうかというのは、まだほとんど理論化されておらず、そういった教材もありません。
 例えばEPAで来ているのは、30歳前後の非漢字圏の人たちが多いです。その人たちが現在行っているのは、ひたすら過去問題をして「ともかく根性で頑張る」というような方法です。
 今後、東アジアのごく一部の国だけではなく、世界中から成人社会人が日本に来て、働けるような環境を作るためには、リテラシーの教育をどうするかということは、特に日本語の場合、真剣になって考える必要があります。


春原 憲一郎

春原:
 そして、日本語は文字の多さも圧倒的です。アルファベットは26文字に対し、日本語は特殊拍(「きゃきゅきょ」など)を含めると、ひらがなとカタカナで218文字あります。さらに、常用漢字だけで2,136文字とあるわけです。これについて、「何カ月ぐらいで、どういうようなステップを経ていけば、日本人が普通に読んでいる文章を読めるようになるか」というのは、まだほとんど根性の世界なんです。

春原:
 現在、各地の施設などではタブレット端末を使って、たくさんの定型文を、まずは読む練習をして、それから「こういう状況だったら、この定形文」という学習をして、それで申し送り状などを書けるように工夫しているところも現れてきています。これからは、こういったテクノロジーを徹底的に駆使していくことも必要です。
 そして、本人や受け入れ側の施設の努力・頑張りも必要ですが、それだけでは限界があるし、一部の人しか成功しません。きちんと公的な制度として、システムを作っていかなければ、日本語は開かれた言語にならないと思います。


この続きは2014年2月3日(月)掲載予定のいろは通信Vol.34にてお届けします。
後編は春原さんが日本語教育に携わってきた中で、日本の多文化共生について感じていることなどをインタビューいたします。ご期待ください。
【春原さんお問い合わせ先】
kharuhara77@gmail.com

(企画部:徳山公美)


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