【国語】研究会レポート「評論文を『窓』に生徒の学びを社会につなげる」

アクティブ・ラーニング 国語

【国語】研究会レポート「評論文を『窓』に生徒の学びを社会につなげる」

研究会の概要
ラーンズ 研究会レポート Vol.016 アクティブ・ラーニング 国語@岡山
2018年3月27日に岡山で「2018年度高校1年生の教科指導を考える」研究会を開催しました。
2020年度の教育・入試改革では、要求される学力が大きく変化すると予想されます。2018年度の新入生が最初の入試改革に該当する学年ということもあり、新入試を見据えた指導・育成の計画に苦慮されていると伺います。
今回は、先生方の悩みの解消のヒントに少しでもお役に立てればと考え、現場の第一線で実践・研究しておられる先生をお迎えし、現状の課題の解決につながる研究会を実施させていただくことにいたしました。

研究会 テーマ
グループワーク
学びの主体性はどのように生まれるか
評論を『窓』に考えてみる



先生のプロフィール
先生のプロフィール

佐々木 宏(ささき ひろし)先生
東京都立日野台高等学校 指導教諭(国語科)
生徒が、自分主語で現在/未来の社会/世界についてワクワク語り、自ら学びはじめる/学び続けるために、教師は、国語の教科/学校で、何ができるのか? その方向/可能性を、実践と認識を往還しながら日々考えたいと思っています。

グループワーク

【国語】研究会レポート「評論文を『窓』に生徒の学びを社会につなげる」

グループワーク(1)

鷲田清一さんの「身ぶりの消失」など4つのテキストを素材にどんなことが出来るか、模擬授業を行っていただきました。ご参加の先生方には、鷲田清一さんとそれ以外のテキストを4つ読んでいただいて、この4つのテキストに共通する考え方を、短冊に1人1〜3枚くらい書いていただきました。「Think&Quest」の誌面では、最初に個人ワークでそれぞれの文章の筆者が何を言いたいかを考え書かせた後、グループワークで4つのテキストに共通する点をまとめて書かせる流れになっています。

今回ご参加頂いた先生方には、グループワークの部分も個人で行って頂きました。グループワークがいいのか、個人ワークがいいのかについてなど、授業デザインの仕方についても考えて頂きました。

佐々木先生
普段の授業ですと、まず生徒各自で4人の筆者が言いたいことをそれぞれまとめます。そのあと、生徒同士で読み合います。教師は解答例を示しません。生徒同士で、他の人が書いたものを読んで、「どこが良くて、どこが悪い」ということをジャッジして、相手に伝えることで、自分自身で批評的に読む力を養うようにと普段から伝えています。また時には、一つの入試問題について、様々な出版社の解答例を生徒たちに示して、どの解答例が良いかを考えてもらったりします。こうした作業を繰り返すことで、生徒が、自分の頭で、論理的に読み、考え、表現する力をつけていきます。


グループワーク(2)

続けて、「Think and Quest」の次のワークに取り組んでいただきました。あなたが暮らす町に合った「単独者が他者と暮らせる住宅」を考えて発表しようというテーマで、先生方には自分たちの住んでいる町を想定しながら取り組んで頂きました。

佐々木先生
生徒の学習は授業デザインに沿って進みます。「Think and Quest」のワークには目標が提示されステップが刻まれて全体が構成されています。全体としては、最初に目標を提示し、最後に目標に対しての振り返りを行うことが大事です。ですが、学習活動のすべてを目標に紐づけながら行うことはマイナスにもなると考えています。予め教師が設定した目標の枠組みの中でしか発想が生まれなくなるという危険があります。
教室には様々な生徒がいます。また実際の授業では、当初教師が設定した枠に収まらない発想や思考が生まれます。そういった部分を大事にしないと創造的な学びが生まれない。なので授業には、どれだけか遊びの要素が入っている方がいいと思います。
生徒と目標は共有する。けれど、途中で忘れてもかまわなくて、最後の振り返りで戻ってくればいいと思います。つまり、授業全体の中で、振り返りの部分が一番重要になるかと思います。目標に対する評価とあわせて、目標にはなかったけれども生まれた疑問や発見なども含めて、学習活動全体を通じて自分の思考や感覚の変化変容を言語化することでメタ認知することが大切なのだと考えています。


学びの主体性はどのように生まれるか

【国語】研究会レポート「評論文を『窓』に生徒の学びを社会につなげる」

「主体的・対話的・深い学び」が次期学習指導要領に書かれていますが、では、この3つの関係はどうなっているのでしょうか。実際どのようにしたら、それらが生まれるのでしょうか。これは仮説ですが、教師が出来ることは、「対話的な学びの場をデザインすること」かなと思っています。

対話的ということですが、これは、文字テキストなどに限定しないテキスト全般との対話、教師や生徒、それ以外の人、つまり他者との対話まで含めて広く考えたいと思います。
対話的な場を教師がデザインすると、あるとき深い学びが生まれます。では何をもって深いと言えるのか。私の仮説ですが、深いとは生徒自身の既有の世界観や自己イメージなど、生徒の中にある知識や感性のネットワークがどれだけか変更されることじゃないかと思っています。だから「深い学び」は、授業の中で全ての生徒に一斉に等しく生じるわけじゃないし、教師が予めデザインした通りに生じるわけでもない。またその「深さ」についても、人生観や世界観が変わったという場合もあるでしょうし、自分の無知や無力を痛感するといった場合もあるでしょうし、古典ってちょっとおもしろいかもといった場合だってあっていい。

そして、自己や世界への認知の枠組みが少しでも変容したとき、つまり深い学びが生まれた時、生徒の思考や感情が揺さぶられ、生徒の中にもっと学びたいという欲望が生まれ、その瞬間瞬間に学びの主体性というのが形成されていくのではないでしょうか。そうすると、「学びの主体性」というのは、常に形成され続けていく過程、現在進行形として存在しているのではないかと思います。主体性とは、予め固定したものとして存在するのではなく、対話的な学びの体験の中で生まれる深い学びを通じて、そのつど変化形成されていくものだと思います。それぞれの生徒が、自分が、何のために、何を、どのように、学ぶのかを考え行動できる力を、生涯にわたって獲得し続けていく、そのプロセス自体が、主体性の形成過程なのだと思います。このように考えますと、「主体的な学び」というのは、3つの中で最後に来ます。最後に来るというのは、一番の目的であり、生徒が自分で、何のために、何を、どのように学ぶのかを考え実践し続けていく人になっていく、このことが私たち教師の目指すことなんじゃないかと思います。


評論を『窓』に考えてみる

【国語】研究会レポート「評論文を『窓』に生徒の学びを社会につなげる」

「新学習指導要領」の「社会に開かれた教育課程」と実際の授業がどのようにつながってくるのか考えてみます。生徒から、「評論って授業以外に何か役に立つのか」とか、「難しくて楽しくない」などの声が聞こえますでしょうか。生徒がこのように言うのは、新学習指導要領に沿って言うと、授業が社会に開かれていない、あるいは、生徒の中で授業の学びが社会や他者とつながっていないからではないかと感じます。 それでは、社会や他者って何なのでしょうか。『つながる』とはどういうことなのでしょうか。 社会というのを、ちょっと身近に実感できるコミュニティと言い換えてもよいかと思います。私たちは、様々な社会つまり、コミュニティに所属しながら生きています。家族や、学校、サークル、会社、国家など一人が様々なコミュニティに所属していますよね。他者というのは、自分と所属するコミュニティが異なる人のことと考えればよいのではないでしょうか。所属するコミュニティが違う人、自分の言葉が通じにくい人のことだと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

それでは、社会や他者と繋がるとはどういうことなのでしょうか。繋がるためには、まず出会いが必要です。出会いから対話が始まります。対話が始まると、今まで自分が知らなかった社会や他者に対して、もっと知りたいという欲望が生まれます。仮説ですが、人間は、これまで多様な社会や他者を、それぞれの欲望に合わせて多様に受容し意味づけてきたのだと考えます。たとえば評論のテキストもまた、多様な社会と他者を受容し意味づける、つまり言語化することで、人と人、人と世界をつないできたのだと思います。評論のテキストを媒介にして、わたしたちは様々な他者つながれるのではないかと思っています。

教科書に載っている評論のテキストを考えてみます。多くの国語の授業では、テキストの読解が中心です。少しだけ筆者についても触れたりします。ただ、その教科書の中に納められているテキストは、実際には様々なものと関係している。例えば他の分野のテキストや社会的な出来事が筆者に影響を与えてそのテキストを書かせたかもしれません。またそのテキストが影響を与えて新しい思想が生まれたり社会的実践が生まれることもあります。 このように、リアルな社会においては、一つの評論テキストの周囲にはそのテキストと関係し合う多様なものやことが存在しています。それを「評論の世界」と呼びたい。たとえば教科書に載っている一つの評論テキストを「評論の世界」につなげて読みたい。評論のテキストを読むことの本質的な意味は、それを読む者が、自分の欲望に添った形で社会や他者に関わろうとする、その通路を発見することにあるのだと思います。教室や学校よりも社会は広く、他者は多様です。「評論の世界」を通じて、生徒は広く多様な社会や他者とつながることが出来ます。ここで私が大切だと考えたい点が、教室の中だけで仮想されたつながりではなく、リアルなつながりを設定するという点です。

人は、自分が本当に解決したいと感じ考える課題に出会った時に本当に考え始めるんだと思います。それは生徒も同じはずです。そして教師は、テキストの持っている社会とのつながりを見つけて授業をデザインすることができます。授業の中に、生徒と社会とのアクセスポイントを多様に作ることが大事なのだと思います。 今回の「Think&Quest」では、自分が生活する地域社会で、将来、どんな人が単独者世帯を営むかを考えてもらいました。次に、想定される単独者が他者と一緒に暮らせる住宅について、理想の住宅と地域社会にあるリソースや課題とを結びつける「何か」を考えてもらい、「フューチャーワード」として言語化するということを、鷲田清一さん他の評論テキストを手掛かりに、具体的にやって頂きました。たとえばこのように、授業としてのシミュレーションだけで終わるのではなくて、授業で考えることが、実際にリアルな社会へつながって考えられ実践されていく通路をデザインできると良いと思います。


研究会の感想
ラーンズ マーケティング・営業部より
深い学びは生徒の中で、それぞれに生まれるものという言葉や、目標を示しながら自由に楽しく授業を進めていくという言葉は、納得とともに、それで良かったのだと勇気を頂ける言葉でした。その中で身近なことと繋げていくことは、生徒としてもイメージがしやすいと感じましたし、そこから新しい欲望を生み出していけるのではないかと思いました。

※先生方のプロフィールは研究会当時のものです。


2018年6月8日 公開



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