多文化共生事業への想い

インタビュー記事

多文化共生事業への想い

誰もが住みやすい社会を考える

ラーンズが目指す多文化共生社会

日本に暮らす外国人をサポートし、在住外国人の「よく生きる」社会づくりをめざすラーンズの多文化共生事業。ここでは、日本語教育の専門家であり、ラーンズの事業開発アドバイザーも務める神吉宇一さんに、この事業にかける想い、これからの夢などを語っていただきました。


インタビュー

神吉 宇一 キーメッセージ
神吉 宇一准教授

神吉 宇一(かみよし ういち)准教授
武蔵野大学大学院言語文化研究科言語文化専攻准教授、公益社団法人日本語教育学会副会長などを務める(2018年12月現在)。小学校教諭、日本語教師、一般財団法人AOTS日本語教育センターにて留学生就職支援事業などに従事。これまでに、全国200以上のビジネス日本語教育の現場を訪問した経験を持つ。



マイノリティを経験した不安感が住みやすい社会を考えるきっかけに

Q:多文化共生という分野に興味をもったきっかけは?

神吉
子どものころから父の影響で外国に興味があり、日本語教師をめざしたのですが、その前後にあった2つの出来事が影響していると思います。
ひとつは、27歳の時に、教員として勤めていた小学校を辞め、大学院をめざすために1年間無職になったこと。それまでは「先生、先生」と呼ばれて、まわりからチヤホヤされていたのに、急に世間の見方が変わり、肩書きによってこんなに扱いが違うのかと肌で感じました。


もうひとつは、日本語教師として32歳から34歳までベラルーシ共和国に住んでいた時のことです。北方系の白人が主で、アジア系の人種が少ない環境で、私への対応だけが明らかに違うということが多々ありました。多数派から一転、マイノリティ側へと置かれた時の、寄るべなさを自分なりに体験し、人をラベルで見る怖さを感じました。同時に、自分自身も人を肩書きで判断していたことに気づき、この体験が自分に戻ってきたのだなと。それから人を、一人ひとりとして見ることの大切さ、不安な思いをせずにお互いを理解しあい、誰もが自分のよさを発揮できるような社会をつくれたらと思うようになりました。


Q:住みやすい社会をつくろうと思ってから、具体的にはどのような行動を?

神吉
まず帰国してから、自分が担当する日本語の授業を変えようと思いました。せっかく世界中から学生が集まっているのですから、ここから相互理解を始めようと。いろいろなテーマで学生に作文を書いてきてもらい、私が添削してみんなの前で発表し、その後、ディスカッションする「作文スピーチ」を始めました。
1年目は、当たり障りのない話ばかりでしたが、2年目から日本語教育でタブーとされている政治の話をテーマにすると、がぜんおもしろくなりました。


例えば、台湾から来た学生が台湾の話をしたいけど、中国人学生の前で話すのが怖いと。その学生は、台湾の外省人(第二次世界大戦後に台湾に定住した人)と内省人(それ以前から定住していた人)について話をしました。中国の学生たちは、台湾は中国の一部だから知らないことはないと言っていたのに、その話は知らなかった。また、あるときは、日本の戦後補償を批判していた中国人学生が、ベトナム人学生から中国がベトナムを支配していたことを初めて聞いたり…。彼らは自分たちが知っていると思い込んでいたことは、ほんの一面だけだったことに気がつき、お互いが知っていることをもっと話そうという雰囲気になっていきました。そんな彼らとはいまだに付き合いがあります。こうした「教室コミュニティ」は、日本語を教えていた2007年頃までずっと続きました。


Q:ラーンズと共に多文化共生事業に関わるようになったきっかけは?

神吉
AOTS日本語教育センターに所属していたとき、当時は外国人介護士の受け入れなど、多方面から日本語ビジネスの新しい話が持ち込まれていました。

そのなかで、『「多文化共生」という観点で事業をしたい』というラーンズは、『ちょっとおもしろいな』と。私自身、多文化共生に興味があったし、話を聞いてみようと思いました。たくさんの企業とつきあいがありましたが、ラーンズは、多文化共生を本気でビジネスにしたいという姿勢がすぐに伝わりました。あまり迷いませんでしたね。4年ほど前から、事業開発アドバイザーを務めています。



日本の未来のために誰もが幸せになれる社会を目指して

Q:多文化共生社会を実現する上で、日本語教育の役割と課題は?

神吉
まず、異文化の人々が集まれる「場」としての機能が、社会的な意味をもつと思います。いろいろな国の外国人が日本に来たら、共通項となるのが「ことば」の問題です。せっかく日本に来たからには日本語を覚えたい、習いたい、そういう人たちが集まってくる「場」であることは、日本の社会とつながる接点になります。外国人は、思ったほど簡単には集められないんですね。つながっていない人は、本当にどこにいるかさえわからない。そんな孤立した状況は個人にとっても、社会にとってもいいとは言えません。
日本語が読める、漢字を覚える、何をするかが重要ではなくて、ひとつの場に集まる、日本の社会と接点をもつ、それが日本語教育のいちばん大きな役割だと思います。


また、日本人側にとっても外国人と接触できる場にもなるということ。これは課題でもあるのですが、日本語教育の場は日本語ができるようになればそれでいいのか。相互理解という点からいえば、一方通行ではなく双方向で交流できる場にならないと。

今、個人やNPOなどがやっている地域の日本語教室には、たくさんのお年寄りが集まってきています。日本語は誰にも負けないというような高齢者が集まって、外国人を相手に日本語を教えている現場も少なくありません。高齢者のやりがいにもつながり、そんな「場」が発展していけば、もっとおもしろくなるかもしれません。


Q:多文化共生社会における企業の役割と課題は?

神吉
外国人を雇用している場合は、外国人をよく知ろうとすること。雇用していなくても、今や取引先など仕事関係で外国人に触れる機会は多いと思います。外国人だけのことではありませんが、人として人それぞれの生活があり、企業活動はその上に成り立っているという、そんな当たり前のことをきちんと意識することが大切です。少子化で働く人が少なくなり、外国人に頼らざるを得ない状況でも、今までの企業文化に外国人を当てはめようとする企業はとても多いのが現状です。

日本人が思っている当たり前が、世界から見たらそうではない。日本人は、開始時間は厳守するのに、終了時間はいい加減だったりもします。でも、それは外国人には理解できない。終了時間ピッタリに帰る外国人だっています。日本人が時間に正確というのは一面的で、世界的に見れば終わる時間が正確な方が平和でいいといえるかもしれません。世界は広いのですから、視野も広く、共感と寛容性をもって、企業も変わらざるを得ないでしょう。


Q:ラーンズと二人三脚で取り組んでいる事業における今後の夢は?

神吉
ラーンズで、多文化共生事業をビジネスとして確立したいですね。潜在ニーズはあるのですが、まだきちんと形になっていないので、それを仕事として回していきたい。ことばの教育というものを通じて、人と人が交流して、豊かで安定した社会を築き、みんなが幸せになれることに寄与できる仕事がしたいですね。

前はそんな夢のような話ばかりしていましたが、今は現実的になってきました。僕らがやる仕事はこれから先、何十年という社会をつくるために必要なことだと思っています。これからも夢と誇りをもってやっていきたいですね。



2019年1月24日 公開



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