【地歴】研究会レポート「大学における歴史教育の意味と役割について」

高校歴史科目の今後のありかた

【地歴】研究会レポート「大学における歴史教育の意味と役割について」

研究会の概要
ラーンズ 研究会レポート Vol.011 地歴公民@東京
ラーンズ マーケティング・営業部です。
2017年9月2日に東京で「高校歴史科目の今後のありかた」と題する研究会を開催しました。大学で歴史学を教えている経験から,歴史教育の意味や役割および実際の授業の様子を,事例とともにお話しをいただきました。

研究会 テーマ
大学からの専門的な歴史教育の特質
自分で探究する態度



先生のプロフィール
先生のプロフィール

野々瀬 浩司先生
1964年生まれ。
一橋大学社会学部卒業。慶應義塾大学文学研究科にて修士・博士課程修了。防衛大学人文科学教室講師,同大学人間文化学科准教授,同学科教授などを経て,2014年から慶應義塾大学文学部西洋史学専攻教授。専門は,16世紀スイスの宗教改革史や社会史。新しい宗教思想が当時のヨーロッパ社会に与えた影響などを研究。

大学からの専門的な歴史教育の特質

【地歴】研究会レポート「大学における歴史教育の意味と役割について」

「大学における歴史教育は単なる暗記科目ではありません。幅広く学習する高校までとはちがい,大学ではあるテーマに関連したものを深めていくという学習をします。暗記はある程度は必要ですが,それを土台として探究し,深めていくことになります。研究のためには,歴史的なものの見方の養成が必要になります。それはどういったものかというと,特定の地域や時代をそれ自体として分析する,研究するということです。実際の出来事の背景を,いまの価値観ではなく,過去に遡ってその時代性の中で探究する精神が必要になります。」


大学での授業の進め方

「ゼミナール形式での授業を例にしますと,4年生は,卒論のテーマをどんどん調べて中間報告を行い,それをもとに議論をします。議論は学問の基本です。対話がなく一人だけで,沈黙の中でただ発信するというのは学問ではありません。対話をして,批判を受けて,またそれに答えることが,学問には必要なのです。一方,卒論報告以外の場合にはあるテキストを決め,この日の報告担当者を事前に決めておきます。報告者には,テキストを書いたのはどういう人で,どういう背景で書かれたのかを調べてきてもらいます。報告者はテキストの内容を可能な限り正確に要約し,それから必ずどんな文章でも問題点があるので,著者の論旨の中でおかしいと思ったことを挙げることで,ディスカッションする題材をつくっていきます。」


史料批判の態度

「歴史家には厳密な史料批判を行う能力が求められます。可能な限り客観的なものを追究するのです。これは真理とそうでないものを見分ける能力ともいえます。その過程で自分のおかれた時代や環境と,ほかの時代や地域のことを研究しますから,少なくとも二つの視点で今を比較することができます。あるいは今とか自分というものを,相対化することになります。このように,現在を突き放して見ることができるというのは,歴史学の特徴ではないかと思います。」


史料への向き合い方

「史料を読む際には,「自分が何を知りたいのか」という問いがないと,いくらどんなに語学力や学力があってもだめです。よい問いが優れた研究につながることが多いのです。史料を読むことは,自己否定と自己肯定の小刻みな緊張の連続です。自己否定というのは,自分の価値観で独善的に史料を読まないという態度ですね。それと同時に自己肯定というのは,自分が知りたいという問題意識を絶えず持つということです。」


自分で探究する態度

「歴史学というのは,ある意味で「自分とは何か」を問う学問だと思います。自分の知りたいことを調べ,追究する学問ですので,自己追究型の学問といえるでしょう。そのために何が必要かというと,「知りたい問いを見つける」ということです。「知的欲求」ともいいかえられるでしょう。歴史学の問いというのは,正解のない問いが多いです。よい問いを見つける能力を身につけさせるのも,大学での歴史教育の一つだと私は思います。」


高校の歴史教育に期待すること

「まず,生徒に本を読む習慣を身につけさせてほしいと思います。インターネットなどの普及により,今はいとも簡単に情報が得たり調べたりすることができます。しかし,だからこそ本を読み,本から情報得て,必要な情報は何かを自分で判断する力を身につけてほしいのです。だから,多種多用な本が提供されている図書館の利用をぜひおすすめします。図書館の大切さも若い頃から認識してほしいですね。次に,人文地理の知識は歴史研究にとって必要不可欠です。地理と歴史はある意味では表裏一体のような側面があるからです。
そして,自分にとって興味があるものとは何かについて考える習慣を身につけてもらいたいです。どうやって身につけたらよいのかというと,今は本を読む習慣ぐらいしか申し上げられませんが,それは優れた問いを見つける能力にもつながります。
最後に,すべての学問に通じることですが,批判的精神も重要です。教えられた内容をそのまま信じ込むのではなくて,まず疑う態度を育ててください。さまざま議論の弱いところを批判する精神を身につけておいてほしいと考えております。」


研究会の感想
ラーンズ企画制作部 地歴公民編集課 M田恭子より
今回は,大学の歴史教育の現状について,慶應大学文学部教授の野々瀬浩司先生からお話しをいただきました。「ゼミナール系の授業形式」「歴史学系の卒業論文の書き方」でお話しくださった内容は,高校現場における今後のアクティブラーニング型授業に応用できる事例も多々あり,非常に勉強になりました。また,「教えられた内容をそのまま信じ込むのではなく,合理的根拠に基づいて,それを検証する姿勢が大切である」という先生のお言葉は,高校でこれから求められる,思考力・判断力・表現力につながるものと思いました。今回のご講演では,この力を育むことの大切を改めて教えていただきました。野々瀬先生,ありがとうございました。

※先生方のプロフィールは研究会当時のものです。


2017年11月24日 公開



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