指導事例 新課程での指導事例 座談会 第一回

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指導事例【低学年】新課程における指導の在り方を考える座談会 第一回

指導事例 vol.029

さまざまな学校課題や指導テーマに対して指導を工夫されている先生方に取材を行い、その実践をご紹介する連載企画「指導事例」。

一年を通じた低学年の新課程指導事例をお伺いするため、進学校で現1年生ご担当の先生方3名による複数回連続の座談会を企画しました。第1回目の今回は、新課程の変化や、それを踏まえてのご指導を中心にお話をうかがいました。これからの共通テスト・進路実現に向けた大学受験指導のご参考になれば幸いです。

新課程での指導事例 座談会 第一回

石鍋 雄大先生
都立大泉高等学校附属中学校主任教諭。国語指導担当。
教職歴10年、同校に赴任して6年目。現在は1学年の言語文化・現代の国語を担当。「楽しくて力の付く授業」を目指して授業デザインを行っている。 コロナ禍の現在は、ICTの使用や外部との連携を通して、生徒が教室の外に目を向けられるような授業を目標としている。

落合 一大先生
岐阜県立大垣北高等学校教諭。数学指導担当。
教職歴22年、同校に赴任して6年目。現在は高校1年生の学年主任を担当。前任校は3年間の県外交流として鹿児島県で赴任。生徒に主体的に考えさせる数学の指導法の確立に尽力している。また、校内のICT推進担当として、授業や校務におけるICT化にも力を入れている。

徳永 拓也先生
福岡県立筑紫丘高等学校教諭。英語指導担当。
教職歴13年、同校に赴任して3年目。現在は高校1年生を担当。ICTを活用しながら、母校でもある現任校で学年の先生方とチームとなり生徒の英語力向上に努めている。また、英語教育今井塾やチームキムタツをはじめとする県内外の研修会に参加し、より良い授業を日々探求している。

01. 新課程一年生の指導面で変わったこと、変わらないこと

評価方法のガイダンスをより細かくするように

進行役
現在の高校一年生は、中学三年生から新課程で学んできた生徒だと思います。生徒の様子、教科面や導入期指導、評価方法など、今までとの違いがあれば教えてください。
石鍋先生(国語)
私はこれまで附属中学で中学生を教えていました。今の一年生は、表現や話すことへの抵抗感はありませんし、観点別学習状況の評価(以下、「観点別評価」とします)にも慣れていると感じます。単位と成績のつけ方については、生徒だけでなく保護者の方も意識して伝えていきます。授業では、最初にガイダンスを行い、3観点を1:1:1で評価することなども話しました。定期考査でも「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」に分けて出題しています。
落合先生(数学)
私は、今年はじめて一年生を受け持ちましたが、思っていた以上に話し合いに慣れていると感じます。また、中学でもICTを使っているので抵抗感もないです。 評価については、主体的とは何かとか(積極的とは違うこと)具体例を交えながら説明しました。また、授業の中では価値ある記録や行動について細かく話をしています。数学は、きれいな解答やノートは必要なく、「やったことは残し、消しゴムで消してしまわないよう」と解いた痕跡を残すように指導し、具体的にどんなことを記録に残すのかを伝えています。
徳永先生(英語)
本校はChromebookを使用しているのですが、生徒は慣れていて頼もしいですし、グループワークも慣れています。最初に生徒には年間計画を示していますが、今お話を聞き、他の先生ほど丁寧に評価観点の説明ができていないので、今後説明していきたいです。 これから教科「情報」も入り、理数系の進度が間に合わないかもしれないので、英語は二年間で教える事の八割を終えたいと思って取り組んでいます。

※上記は落合先生よりご共有いただいた日々のプリントの抜粋版です。
※表面は問題、裏面は解説入りとなっています。毎回、自己評価の記入欄があり、成績評価に加味する場合は告知を行っています。

変わらず基礎・基本は大切。学習の意図に沿った取捨選択を

進行役
教科の特性もあると思いますが、新課程になって基礎・基本の取り扱いや重要度について、変化はありますでしょうか?
石鍋先生(国語)
国語は本校の場合、国語総合の5単位から言語文化2単位、現代の国語2単位に減ったので「何を教えないといけないか」を意識しています。共通テストでも、複数テキスト問題などは講義形式の授業だけでは難しいと感じています。 基礎的な古典・文法などは必要ですが、共通テストでは単純な暗記ではなく、文脈の中で問われるので、教え方も工夫したいと考えているところです。
落合先生(数学)
基礎・基本の重要度は変わりません。数学ではなぜそう思ったのかというプロセスが大事なので、学力をつけるためには基礎基本が欠かせません。
徳永先生(英語)
英単語や知識の重要性は変わっていません。 演習は一問ずつの解法はせず効率を意識したいです。リスニングに関しては、アクセントを身につけられるよう編集をした動画や音声などを使用しています。二年ではディベートもするなど、知識部分と表現活動のメリハリをつけた指導を目指したいです。

02. 広がるICTの活用と課題

授業やアンケートなど活用の幅は広い。便利な反面、いくつかの課題も……。

進行役
先程、徳永先生から動画の活用についての話が出ましたが、先生方は普段どのようにICTを活用されていますか?
石鍋先生(国語)
主に使用しているものはTeamsとClassiですが、課題やアンケート、感想などの提出に使っています。 プレゼンの共有ができるのも便利ですね。ただ、一人二分の課題であっても、全て確認するのは大変です。生徒も課題がアンケートと重なってしてしまうことがあり、課題は二週間以上余裕を見て提出させるなどして気を付けています。
落合先生(数学)
本校ではTeamsを中心に使用していて、ホームルームの連絡や数学の板書、教科書の解答共有にも活用しています。手書きの方が頭に入ることも多いので、授業ではアナログにするなど、アナログとデジタルの使い分けを意識しています。 アンケート等は、自分の頭の中に何があるか目に見えてわかることで学力向上につながると思いますが、頻度が多くなりすぎる傾向にあるので大事なアンケートはできるだけ授業中にやったほうがいいと思っています。
徳永先生(英語)
どの教科でも観点別評価が導入されたため、生徒に書かせるものが増えました。生徒は感想・反省などを書くことに追われているので教科間の調整が必要だと感じています。 もちろん便利な面も多く、英語のパフォーマンスの一つの方法では、課題フォルダに音読した音声ファイルを入れてもらいそれを評価する方式をとっています。ネイティブの先生と協力して、うまく活用していきたいです。

03. 定期考査と模試の活用

配点のバランスを意識。評価軸が増え、評価されやすくなった生徒も

進行役
定期考査について、学力の三つの要素を意識している点や、今までと違う点、変えた点はありますか?また、定期考査の結果について変化を感じることはありましたか?
徳永先生(英語)
今回、論評の授業を1時間私が持ち、1時間をALTが持ったので、定期考査の45点分はネイティブの先生に担当してもらい、「思考力・判断力・表現力」を評価してもらいました。 ALTの先生の問題は書いた分を評価してもらえるので、全体として点数が落ち着いていました。文法が苦手な生徒も総合すると悪くない結果でした。
石鍋先生(国語)
担当学年では「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を分けて出題しました。今回の定期考査は平均点が高く、苦手意識が強かった生徒も、点数が取れたイメージです。 ただ、これまで知識・技能だけで点数が取れていた生徒は、以前より点数が取りにくかったかもしれません。
落合先生(数学)
50%が知識・技能で、50%が思考力・表現力・判断力を問う問題としていて、それぞれ評価します。問題に大きな変化はありませんが、配点の割合を1:1に調整しています。ものさしが増えた分、今まで評価されにくかった生徒も成績が上がる可能性が高くなったと感じています。
進行役
評価軸が増えて、いままで見られなかったところを評価できるようになったんですね。多面的・総合的な評価と言えますね。

模試は、生徒は実力を測る場。教員は計画の見直しができるいい機会

進行役
定期考査が変化していく中で、模試の位置づけに変化はありましたか?
徳永先生(英語)
模試の位置づけは変わっていません。 今は、模試への準備はあまりさせすぎずに取り組ませるようにしています。
石鍋先生(国語)
本校も特に準備をしていませんが、模試は生徒にとっては「自分の実力がどの程度か」ということを認識する場だと感じています。 また教員にとっては、授業でできてないところを見つけて、授業改善を図ることができるので、改めて存在が大きくなりました。極端に生徒ができていない部分がわかれば、年間の授業計画を修正し、方向転換することも視野に入れます。自身の年間計画の見直しができるいい機会になっていると思っています。
進行役
定着度を測るのが定期考査、模試は受験に向けた生徒自らの状況の把握や先生方の指導の振り返りと、活用方法はそれぞれですね。

04. 夏休み明け・一年間で目指す生徒像

夏休みに基礎知識や学習習慣をつけておいてほしい。一年での成長を意識。

進行役
一年間で、生徒にどのような状態になっておいてほしいでしょうか。今後、文理選択もありますが、夏休みの過ごし方として学校や学年でのしかけなどもあれば教えてください。
徳永先生(英語)
教科では、一年生のうちに基礎的な単語や文法を定着させたいです。生徒には夏休み前に計画表を作らせ、保護者も含めた面談で「何をするか」宣言してもらいました。学校独自のしかけで、二年生で東京・京都研修があり、東大や関西の大学を見学します。
落合先生(数学)
一年生の終わりには自分のスタイルを作っていてほしいです。そのためにトライ&エラーをくりかえす夏休みであってほしいと思います。東京での大学見学ツアーがコロナの影響で中止になりました。体験の機会がないままでの進路選択になってしまわないかが少し気がかりです。
石鍋先生(国語)
一年を通して学校に元気に楽しく来てくれるのが一番です。夏休みは学習習慣を身につけて、自分の学力や学習状況などのメタ認知ができるようになっていてほしいです。夏休み後、模試や課題テストをし、計画を修正・変更したいと思っています。二年生での文理選択は大きいので、進路について具体的に調べるような課題を出しています。

05. これからの目標(まとめ)

基礎的な力を着実につけ、失敗体験も大切に。自分自身も勉強していきたい。

進行役
これから先生がチャレンジしてみたいことや、大事にしたいことを教えてください。
石鍋先生(国語)
新課程になっても、必要な基礎的読解力は変わらないと思っています。だからこそ、基礎・基本の力を着実につけていきたいです。また、新学習指導要領の目指す教育に「社会に開かれた教育課程」とありますので、今は外に開いた形で授業展開ができないかと考えています。それが入試につながっていくのではないかと感じています。
落合先生(数学)
生徒には、今のうちにトライ&エラーの経験をたくさん積み重ねていってほしいです。コロナや新課程などいろいろありますが、コロナだからこそ、これまでの延長でできないこと、という視点も教材になるのではないでしょうか。生徒には今のうちにどんどん失敗してほしいですし、教員側も挑戦する姿を見せていきたいです。
徳永先生(英語)
ICTなど、生徒の方ができることも増えているので、生徒から学ぶ・生徒がともに学ぶこと(生徒どうしの教え合い・学び合い)を意識したいと思っています。ディベートや普段できない活動もしていきたいですし、チームでしっかり協力する姿勢も身につけていきたいです。生徒により深い学力を身につけてもらえるように自分自身もしっかり勉強していきたいです。
進行役
三名の先生方のお話を伺っていると共通して見えた点もあり、気づきが多かったように思います。とても参考になりました。先生方、本日はありがとうございました。このメンバーでの座談会は今後も定期的に実施していきます。次回もよろしくおねがいします。

学校紹介

東京都立大泉高等学校
1学年約120名、2021年度のおもな進路状況:国公立大43名、(うち難関国立大7名)

岐阜県立大垣北高等学校
1学年約320名、2021年度のおもな進路状況:国公立大200名、(うち難関国立大50名)

福岡県立筑紫丘高等学校
1学年約440名、2021年度のおもな進路状況:国公立大227名、(うち難関国立大106名)

編集後記

営業担当

環境が大きく変化する中、生徒達と一緒にチャレンジしていく先生方のお話をお聞きでき、大きな刺激をいただきました!この連載記事では、引き続き時期ごとにお話を伺っていく予定です。ご指導にお困りの先生方にとって、ご参考となりましたら幸いです。

2022年7月 取材
2022年9月2日 公開

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