研究会レポート(地理総合)『これからの地理総合・歴史総合・公共のご指導を考える会』

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研究会の詳細

2022年11月5日(土)、神奈川県立希望ヶ丘高等学校 井上 明日香先生をお招きし、オンラインにて『これからの地理総合・歴史総合・公共のご指導を考える会』を開催いたしました。ご講演の内容をレポートいたします。

講師紹介

井上 明日香(イノウエ アスカ)先生
神奈川県立希望ヶ丘高等学校 教諭。地理総合担当。
教職12年目。同校に今年度より着任。現在は高校1年生を担当。地理の学習を少しでも楽しく、有意義なものとなるように、日々教材研究にいそしむ。また、県内外とわず先生方と授業方法や教材等について情報共有を行い、ブラッシュアップしている。

研究会レポート(地理総合)

講演の主な内容

  • 地理総合の授業について
  • 地理総合の実践例
  • 地理総合の課題

「地理総合」の授業について

授業計画では、1年間で「地理総合」の内容をすべて終わらせることになっています。しかし、教科書の内容をすべて細かく見ていくと最後まで終わらないので、精選する必要があります。「教科書を見ておいてね」で終わらせる単元もあります。教科書で太字になっているところに触れないと不安になるという生徒もいますが、生徒には「語句の暗記だけが勉強じゃないからね」という話をしています。教科書を教えるのではなく、「教科書に書いてある概念や考え方を身に付けていく」、「教科書に書いてある事例を身近な地域に当てはめて考えていく」というような学習活動を展開していくので、教科書の記述を丁寧にさらっていくというようなことは基本的にはしていません。教科書はあくまで生徒が自分で学習を深めたいというときに活用できるものだと考えています。

実は、今年度転勤してきたばかりで、どのように授業を展開していけばいいかわからなかったということもあり、前期の授業では講義型の授業を展開していました。生徒から「話を聞くだけで退屈だ」という声が上がっていたり、つまらなそうにしている様子がみられたりして、授業内容の転換が必要だと感じていました。その反省から、最近はアクティブラーニングを積極的に取り入れる形で授業を展開しています。これは「できることから」取り入れるというのがとても重要で、はじめからいきなり大きなことをやろうと思うと、それこそ持続可能でなくなってしまいます。限られた時間の中でできることをやっていくということが重要だと考えています。

アクティブラーニングではそれぞれの理解度に応じた学習活動ができるので、理解度にバラつきがある中で生徒の知的関心・興味を広げることにつながりました。知識の獲得を目標とするのではなく、「AIにはできないこと」を追求する授業を考えています。「地理総合」の授業で従来の「地理A」のような授業をするのではなく、「地理総合」で意図されている内容を教えるべきだと考えます。

「地理総合」の実践例

授業で使っているプリントでは、用語はほとんど書きませんし、板書も少なめです。回収もしないので、たくさん書く生徒もいれば全く書かない生徒もいます。ところどころに参考になるサイトのリンクを貼っているので、授業中に共有したり、あとで生徒に見ておいてもらったりしています。プリントは自分で運営しているホームページにのせているので、自由に見ることができます。プリントは回収しませんが、学びの振り返りとしてFormsを活用し、評価に含めています。こちらはテストの日に〆切を設定していますので、授業後すぐに実施する生徒もいれば、テスト前に勉強を兼ねて実施する生徒もいます。

テストはマークシート8割・記述2割で作成しています。本当は記述をもっと増やしたいのですが、採点のことを考えると難しい、そのかわりとしてマークシートでも知識によらない問題を出す工夫をしています。問題は全部自分で作るというよりは、入試問題などで優れた問題を活用するようにしています。すべて似たような問題にならないように、斬新な、新しい発想を取り入れるためにもこのような方法をとっています。結果的に問題を作る時間を短縮することにもつながっています。

「地理総合」の課題

先生の中には、「地理専門ではないのに地理総合を担当するかもしれない」という方が多くいらっしゃると思います。地理専門の教員が少ないという課題は多く耳にします。それを不安に感じてらっしゃる方も多いと思うのですが、専門家でないからこそ地理に関して疑問を持ちやすく、生徒と近い目線で授業ができるのではないかと感じています。

また、複数人で授業を担当する際に、足並みをそろえるのが難しいという課題もあります。これに関しては「先にテストを作っておく」というのが有効だと考えています。テストを作るということは「どのような力を身に付けさせるのか」を考えることになるので、それを授業に落とし込んでいけば自然と足並みがそろっていくのではないかと考えています。

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研究会を終えて

本研究会にご参加いただいた先生方からご感想をいただきました。

導入校の声
関東地区
T高等学校
M先生

地理総合の井上先生の実践は、本校の方針と重なる部分(進度など)が多くあって励まされるとともに、改善に向けて学ぶ部分が多くありました。今回の内容を一年前に聞けていたら、と強く思いました。そのくらい良かったです。

導入校の声
北海道・東北地区
Y高等学校
S先生

井上先生のテストを事前に配って取り組ませるというお話を伺い、目からうろこがとれた気がしました。スタートする時にゴールを提示してもらうと、どこに走っていけばいいのかがわかりますので、私自身もやってみようと思います。ありがとうございました。

導入校の声
関東地区
M高等学校
K先生

地理総合が必修になり、複数人の先生で持つときにどうしたらよいか悩んでいたのでとても参考になりました。また、授業プリントの構成等もとても勉強になりました。ありがとうございました。


2022年11月 5日 取材
2022年12月 6日 公開

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