【国語】研究会レポート「論理的思考力を養成(小説編)」| 株式会社ラーンズ

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【国語】研究会レポート「論理的思考力を養成(小説編)」

生徒の論理的思考力を養成する~低学年での意識改革(小説編)~

【国語】研究会レポート「論理的思考力を養成(小説編)」

研究会の概要
ラーンズ 研究会レポート Vol.008 国語@大阪
ラーンズ マーケティング・営業部です。
2017年9月24日(日)に大阪で「生徒の『論理的思考力を鍛える』指導 ~読解する方法を身につけるには~」と題する研究会を開催しました。
昨今大きく変化してきている高等学校を取り巻く環境の中で「希望進路実現のために生徒が主体性を持ち、効果的且つ効率的な学習スタイルを確立すること」これを実現させることは高等学校において大切なテーマになっております。 そこでこのたび、当勉強会では高校生の実践的な「論理的思考」に着目し、生徒に伝えたいことを指導の「実践事例」を通じてお伝えする【論理的思考力を鍛える指導研究会~読解する方法を身につけるには~】を企画させていただきました。

研究会 テーマ
広島女学院中高の紹介
生徒の論理的思考力を養成する~低学年での意識改革(小説編)~



先生のプロフィール
先生のプロフィール

那須 泰先生
広島女学院中学高等学校。
広島県生まれ。高校時代「文学」にはまり、むさぼるように本を読みあさる中、「思考の原点は言語力(=国語力)」と確信。理系コースから3年次に文転し、早稲田大学 教育学部 国語国文科に進学。「論理的言語力が人生を変える」という信念のもと「情熱」をもって教壇に立ち、教師歴19年目を迎えている。前任校では幅広い学力層の生徒を対象に「論理」に着目させる授業を展開し、毎年、国語のクラスの平均偏差値を7ポイント以上伸ばし続けたという実績を持つ。現在、広島女学院中学高等学校 教諭。驚異的な成果を出し、注目度はさらに高まっている。

広島女学院中高の紹介

中高一貫の女子校。生徒数220ぐらいで、一学年5クラスです。中学校入試で入ってくるのですが、ペーパーテストの学力は高くても、論理的思考力や主体性といった点では受け身というところがあります。平和観を基に対話をして平和にアプローチするリーダーを作りたい、また、社会に出て活躍して女性が新しい世界を作っていくような子どもたちを育てたいということで、SGH(スーパーグローバルハイスクール)の一校になっています。
今年高校2年生から担任に入って、高2を5クラス持っています。1年生の段階では論理的な読み方の習得が十分ではなく、模擬試験における現代文の成績は下がってきていました。ここからどうやって上げようかというところも含めて今日はご紹介します。小説に関しては間違いなく読み方が変わりました。2年前に卒業した子たちにどんなふうに高1のときから指導してきたかということと、今の高2生への実践を合わせてご紹介したいと思います。


生徒の論理的思考力を養成する~低学年での意識改革(小説編)~

【国語】研究会レポート「論理的思考力を養成(小説編)」

小説 授業展開のベース

生徒たちは、文章にどう向き合っていくかという、まずその心を覚悟させることができたときに初めて授業を聞く。そして、何かを受け取ろうとするという姿勢が生まれてくる。ここを作らないと授業はただ教師の独演会になります。『羅生門』を読んでも、それが全然子どもたちのテリトリーに入らない。何のために書いたか、設定をなぜ平安時代のあの状況にしないといけなかったかということを捉えていく視点がないと、小説を読むという視点になりません。教師歴20年の中で、どうすれば子どもたちのテキストに向かう姿勢が変わるのか、どうやったらその姿勢が変わる方向の授業ができるのか、そして、結果として学力も上がっていく。この三つを追うことを常に考えて授業をしてきました。その授業の展開のベースとして、次の四段階を常に意識しています。①まず気づきを起こさせる。②それがどこにつながっているかゴールを見せる。ここで目の前の模擬試験や大学入試を絡めていきます。自分がやっていることが成果になるということが目の前で見えないと、子どもたちは絶対にやらない。③それが成果になるというところをつなげていく。④生徒の心に火をつける。すると、勝手に学力が伸びていく。この四つのステップをどうやって組むか。教師がファシリテート役として、教科書の教材や模擬試験等をどう結びつけて見せていくかということだと思っています。

※この実践については、「小説世界を自己に投影していくための試み―生徒の『主体的な学び』を促す授業実践」(「早稲田大学 国語教育学会 第37集」)をご覧ください。


『山月記』実践紹介

普段の授業がおろそかにならないように、教科書の問題が模試にも生きるし、入試にも生きるということを意識させるようにしています。ソウトレの視点5「表現の工夫」、これを教えようと思うと大変です。こういうときに事例を使っていく。例えば、人称が変化するというのは、センター試験にも出ています。センター試験の問題を使って、何かの距離が変化するという話をすると、トラに近い、離れるというところが見えてくる。また、本校の生徒は目の前の模試にはすごく敏感ですから、模試の問題も絡めていきます。ゴールを少し見せて今やっているものを考えると、モチベーションが全然違う。教師が一方的に「このかぎ括弧は何」なんてやっても、学びません。かぎ括弧がある・ないという表現方法によって筆者は何かをしようとしているという視点に気づくだけで違う。いろんな題材を見ながら、今やっているものとどうつなげられるか常に考えて授業をするようにしています。現代文は週に2時間しかありませんから、表現に特化して実践しました。すると、子どもたちは表現を探しながら、それはどんな効果を持っているかというのを見るようになる。その意識が芽生えてきたときに、『山月記』をまねて変身譚の短編小説を書かせました。場面設定も考えさせて、情景描写を必ず入れるように条件をつけました。そして、何の意図でこの人物がこれに変身するのか、この情景描写はどういう意味を持っているのか説明しながら、グループワークをしました。それが子どもたちのテキストにあたる意識を変えたなと思っています。例えば、情景描写になぜ太陽を使ったのかと聞くと、模試をヒントにしたと言っていたので、まさにこれが汎用的な、あるいはさまざまな資料から自分の考えを出していくという力であり、成功したなと思いました。


応用実践編

さらに力として結びつけていきたいと思い、以下の実践をしました。『石径の果て』という作品のこの部分をテストに出すと言って、那須がどんな問題を作るか考えさせてグループワークをしました。テストに出そうな語彙を探して調べる。心情問題が問えるところに棒線を引いて、どんな問題が作れるかを考える。そして、発展問題として表現問題を作らせました。グループで一番よいものを選んで、よい問題は使うと言って教室に貼っておく。問題を作るということをやった成果が、今回の模試の結果に結びついたなというところです。とにかく表現に注目するという、ここの部分は成功しただろうなと思っています。

最後にご紹介するのは、高校1年生の「現代社会」の定期テストの問題です。他教科ともしっかり連携して汎用的な力を高めていくことをしないと、国語だけやってもだめだと感じていて、他の教科との結びつきも重要視しながら、広島女学院は実践をしています。とにかく意識を持たせる。そして、意識を定着させて初見の文章に生かすという、このサイクルを授業の中で築いていく。そうすると、ちょっとした工夫だけでも子どもたちの意識は変わっていくと思っています。みんな心の翼を広げよう。そのために教師は少しでも気づきを与えていく。生徒たちが伸びている姿を見ると、今までの苦労は吹っ飛びます。だから、教師の心の翼も広がっていく。そんな授業を日々心がけています。


研究会の感想
ラーンズ企画制作部 国語編集課 大野 那津子より
那須先生のご講演は何度もお聴きする機会がありましたが、今回はまさにこの1学期での実践も含めてお話しくださいました。「論理的読解」と小説とはなかなか結びつきにくいイメージがあるかもしれませんが、表現に着目するという「視点」に気づかせることで生徒のテキストにあたる意識が変わり、最後には自分で試験問題が作れるまでになったというのですから驚きです。汎用的な力とはこのように身につけていくものだという実例を示していただいたように思います。私たちも「心の翼を広げ」て、よりよい教材をつくっていこうという気持ちを新たにしました。ありがとうございました。

※先生方のプロフィールは研究会当時のものです。


2017年10月30日 公開