研究会レポート(教科探究)『Think and Quest』を活用した対話的な授業の実践事例

PICK UP
研究会

研究会情報

指導事例・研究会レポート
Web会員限定コンテンツ
2023年3月30日 開催 研究会レポート
『Think and Quest』を活用した対話的な授業の実践事例

2023年3月30日(木)、三田国際学園中学校・高等学校の大野智久先生をお招きし、オンラインにて「『Think and Quest』を活用した対話的な授業の実践事例」を開催いたしました。ご講演の内容をレポートいたします。

研究会の詳細

講師紹介

大野 智久(オオノ トモヒサ)先生
三田国際学園中学校・高等学校 生物科 教諭。
高等学校学習指導要領(平成30年告示)学習指導要領等の改善に係る検討に必要な専門的作業協力者。東京都生物教育研究会、日本生物教育学会に所属。学生時代は学部から大学院修士課程まで松田良一氏に師事。「これからの理科教育、生物教育」の在り方についてさまざまな刺激を受け、現在に至るさまざまな活動につながっている。2012年度よりアクティブ・ラーニング型授業を実践。現在はPBL型の授業を担当し、よりよい探究とはどのようなものかを模索している。

研究会

研究会 『Think and Quest』を活用した対話的な授業の実践事例
講師 三田国際学園中学校・高等学校 教諭 大野智久先生
日時 2023年3月30日(木)16:00~17:10
対象 全国の高等学校・中高一貫校(中等教育学校)の先生
開催形式 ZoomでのLIVE配信

研究会レポート

講演の主な内容

・アクティブ・ラーニング型授業の必要性と有用性
・『Think and Quest』の概要
・『Think and Quest』を活用した対話的な授業の実践事例
・『Think and Quest』を活用した授業の生徒・教員アンケート結果
・質疑応答

アクティブ・ラーニング型授業の必要性と有用性

新指導要領で明確化された資質・能力

新学習指導要領では、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱から、「資質・能力」を総合的にバランスよく育んでいくことを目指すとされていて、資質・能力がどのようなものであるかが明確化されています。

学習指導要領改訂の考え方では、その育成すべき資質・能力を育むためにどのように学ぶかまで踏み込み、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング=以下AL)の実現に向けた授業改善が必要とされました。

AL型授業の必要性と有用性

ラーニングピラミッド(出典:National Training Laboratories Institute)にもあるように、特に他人に教えることが学習の深い理解につながっていると感じます。また、経済産業省が提唱した社会人基礎力は、前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力の3つの能力から構成されています。デシの自己決定理論も、生徒のやる気を高める・引き出すための要素として、自立性の欲求・有能感の欲求・関係性の欲求の3点があり、これは、えらべる・できる・つながれる、と言い換えられると思います。

どの力も一方向だけの講義ではなかなか身につきにくく、Teachからlearnへの質的転換、生徒の対話的な学びが必要となります。AL型授業の有用性は、生徒同士で繋がれ、取り組むことで、これらの力をバランスよく育めることではないでしょうか。

AL型授業実施のハードル

しかし、AL型授業が必要で有用と感じても、AL型授業実施には大きな二つのハードルが存在します。まず1つ目は教材作成、2つ目は複数の教員で担当する際の目線合わせです。これらは、『Think and Quest』を使うことで越えられると思います。

『Think and Quest』の概要

『Think and Quest』の3つのコンセプト

『Think and Quest』の1つ目のコンセプトは、誰でもすぐ主体的・対話的な授業ができることです。教材作成の必要がなく、ファシリテーションブック(指導書)も付属しているので、生物が専門ではない教員でも使えます。私自身は、全員が同じ課題を実施し、評価材料として使えたところが良かったと感じました。

2つ目は、学習指導要領の内容をカバーしていることです。全30項目で学習指導要領の本文に書かれている内容を網羅しています。対照表もついているので参考にしていただけます。

そして3つ目は、主要な概念の理解に重きを置いていることです。今回の指導要領の解説では、歴史上はじめて、用語の数が限定されています。これは網羅的・羅列的な扱いではなく、概念を中心に本質的な中身をやってほしいというメッセージでもあります。だからこそ、『Think and Quest』は事実的知識ではなく概念的知識に軸足を置いています。

新課程版での改訂内容

より日常生活に関連した新しいコンテンツへの更新、探究活動への接続がなされています。また、単元の振り返りの導入をしていて、生徒本人の成長が可視化(メタ認知)できます。

『Think and Quest』を活用した対話的な授業の実践事例

授業での実践紹介

取り組み時間は基本的に授業後半の15分としていました。グループはひとりでも複数でも自由にし、活動時間にはBGMを流すなどして工夫しています。教員は集中力が切れている生徒への声かけや、質問対応。生徒はそれぞれに取り組み、ワークの右側を埋めていきます。直接書き込んで冊子を提出でもよいと思いますが、本校では紙に書いたものは写真に撮ってデータで提出させています。撮った写真にタッチペンで記入する生徒もいました。

次の授業前半で、前回のワークで良かったものや面白い問いは共有し、よくある誤答は必ず解説していきます。つまずきの解消につながりますし、一度取り組んで間違ったところを解説していくほうが、理解が深まるのではないかと感じました。発展課題は基本的にやらなくてよいとしていましたが自主的に取り組む生徒がいれば紹介していました。

評価について

評価ですが、下手でも自分の言葉で書いてほしいので、ある程度書けていれば減点しないという方針です。ただし、写しただけのものは採点対象外としていました。評価の3観点の中の「主体的に学習に取り組む態度」の評価は特に難しいと感じますし、先生方からの事前質問でも多かった項目です。

国立教育政策研究所の『学習評価の在り方ハンドブック(高等学校編)』にある主体的に学習に取り組む態度の評価イメージでは、「粘り強い取り組みを行おうとする側面」と、「自らの学習を調整しようとする側面」の二軸で評価するとされています。これには取り組みの結果を確認し、改善策を考えて次のプランにつなげ、実行するPDCA(Plan/Do/Check/Action)サイクルが基本となります。教員から指示されたことをやるのではなく、CAP(Check/Action /Plan)を生徒自身が意識して、サイクルを回していくことが極めて重要です。教員は、CAPの部分が出てくるような学習活動を埋め込んでいき、評価していくことが大切です。ワークシートの単元の学習の振り返りからも、これらが評価できるようになっています。

『Think and Quest』を活用した授業の生徒・教員アンケート結果

授業の内容・構成についてよかった点

「自分たちの持っているものをうまく活用しながら、友人たちと解き進めていくスタイルは、自分で考える力がついてよかった」や「インプットとアウトプットともにバランスが良く、グループワークも多くあったためモチベーションを保つことができた」、「共通の教材なのでクラス担当者によるブレがなく、生徒は主体的・対話的な学びをしてくれていた」などの好意的な意見が多くありました。

ワークブックの内容についての意見、感想

「友だちと教え合ったり、調べたりしながら取り組めるので身につく」、「少ない資料からいろんなことを推測したり、読み取ってまとめたりする力がついた」、「自分の理解度を明確にすることができた」、「発展問題が日常に関連していていいと思う」などのよい意見がありました。

また「基礎の部分がもう少しボリュームがあってもいいと思いましたが、それ以外はよい教材だと思います」、「知識はあまり身に着いた感覚はなかったが、名称は分からなくてもなんとなく流れが分かって勉強しやすかった」との意見もあり、知識部分が少ないと感じる生徒もいたようです。ただ、知識を丁寧に教えてもらって解くことには生徒は慣れていますので、自らの活動で知識を獲得していく経験ができることが重要ではないでしょうか。

質疑応答

Q.
これまで教科学習にうまく取り組めなかった生徒に、考察力を身に着けてもらうにはどのように指導すればよいのでしょうか?
A.
考えずに教科書や他の生徒の解答、インターネットを丸写しすることがよくある問題ではないでしょうか。これでは力がつかないと伝えつつ、本当に書くのが苦手な生徒については、段階的な問いかけやアドバイスをするとよいと思います。教科書の該当箇所を読んで意味がわかるか? 理解したことは本文を閉じて自分の口で説明できるか? 文字で書くよりも口で話す方がハードルは低いものなので、まず生徒に段階的に問いかけて話してもらい、それをそのまま文章にすればよいと伝えます。またそれ以上に、思わず生徒が考えたくなる課題も必要だと思います。
Q.
教員間のモチベーションや目線合わせはどうすればよいでしょうか?
A.
教員間でのゆるい視点合わせがポイントです。ワークの前の講義のさじ加減について、ある程度の自由度を確保するとよいでしょう。もし自作プリントを使用するとしても、ゆるさの中で最低限を決めるとよいのではないでしょうか。
Q.
考えさせる問いかけとその評価についてもう少し詳しく教えてください。
A.
思わず考えたくなる問いは『Think and Quest』に出てくる問いを一通り見ると参考になると思います。問いかけ方法、生徒へのアプローチについてもファシリテーションブックでわかるので参考にしてみてください。また、『考えさせる』という外発的なものではなくて、内発的なものを誘発する必要があります。よかった部分に目を向け、褒めてモチベーションを高めながら、授業の雰囲気を作ることが必要です。
Q.
教科書の文章をそのまま記入、抽象的なことばかりする生徒の評価に困ります。
A.
基本的には『Think and Quest』の生徒の記載内容について、差をつけるための評価はしません。まずは楽しく取り組んでもらって、できた実感をもってもらえればと思っています。生物として正しくない内容だけど、与えられている材料からすると間違ってない。その答えがありうるなら○にします。日本語、助詞の間違いが散見されても、生徒が自分で考えたものならよいのではないでしょうか。ただ、あまりにも資料の読み取りをせず、資料とは全然違うことを書いているな、という場合だけは評価を下げます。「生物学的な正しさというよりも、与えられた資料から自分なりに考えるプロセスを大切にしてほしい」と思っています。
Q.
『Think and Quest』活用後、生徒のどういった点に変容を感じますか?
A.
自分たちで学んでいけている点です。きちんと知識を与えられ、それを使って考えるのに生徒は慣れていて得意ですが、基礎的な知識を教科書から自分で獲得していくところは慣れていませんでした。この点は生物基礎だけでなく、あらゆる学習への取り組み方に繋がると思っています。
Q.
主体的に学習に取り組む態度の評価方法について教えてください。
A.
理科の実験は主体的に取りくむ態度の評価はしやすいですよね。まず自分で仮説を立ててもらいます。そしてうまくいかない時に何が問題かを考え、見つけて、自分なりに次に取り組んでいく。この自己調整が主体的に学習に取り組む態度ではないでしょうか。実験だけでなく探究活動でも、自由度が高い活動は自己調整が起こりやすいです。自己調整の変容のプロセスに注目すると、評価しやすいと思います。

Web会員限定コンテンツ

LIVE配信を録画した研究会映像や、講師先生の配布資料などを、弊社のWeb会員限定で公開しております。会員の方は下記「Web会員限定コンテンツを見る」よりログインしてご覧ください。
Web会員への登録がまだの方は、ぜひこの機会にご登録ください。

Web会員限定コンテンツを見る 


2023年 3月30日 開催
2023年 5月15日 公開

おすすめの教材

『Think and Quest(探究型教材)』