指導事例 新課程での指導事例 座談会 第三回

PICK UP
指導事例【低学年】新課程における指導の在り方を考える座談会 第三回

指導事例 vol.035

さまざまな学校課題や指導テーマに対して指導を工夫されている先生方に取材を行い、その実践をご紹介する連載企画「指導事例」。

一年を通じた低学年の新課程指導事例をお伺いするため、進学校で現1年生ご担当の先生方3名による複数回連続の座談会を企画しました。第1回は入学時から1学期の指導、第2回は夏休み前後の指導と学校行事を含めた2学期の指導を中心にお話をうかがいました。最終回の今回は、2年生に向けてのご指導や一年の振り返りを中心にお話をうかがいました。これからの共通テスト・進路実現に向けた大学受験指導のご参考になれば幸いです。

新課程での指導事例 座談会 第三回

石鍋 雄大先生
東京都立大泉高等学校附属中学校主任教諭。国語指導担当。
教職歴10年、同校に赴任して6年目。現在は1学年の「言語文化」・「現代の国語」を担当。「楽しくて力の付く授業」を目指して授業デザインを行っている。 コロナ禍の現在は、ICTの使用や外部との連携を通して、生徒が教室の外に目を向けられるような授業を目標としている。

落合 一大先生
岐阜県立大垣北高等学校教諭。数学指導担当。
教職歴22年、同校に赴任して6年目。現在は高校1年生の学年主任を担当。前任校は3年間の県外交流として鹿児島県内に赴任。生徒に主体的に考えさせる数学の指導法の確立に尽力している。また、校内のICT推進担当として、授業や校務におけるICT化にも力を入れている。

徳永 拓也先生
福岡県立筑紫丘高等学校教諭。英語指導担当。
教職歴13年、同校に赴任して3年目。現在は高校1年生を担当。ICTを活用しながら、母校でもある現任校で学年の先生方とチームとなり生徒の英語力向上に努めている。また、英語教育今井塾やチームキムタツをはじめとする県内外の研修会に参加し、より良い授業を日々探求している。

01. 3学期の状況について

さまざまな行事や教科以外の活動もあり、時間に余裕のない3学期

進行役
冬休みを終えて、3学期(年明けから現在)の状況を教えてください。
石鍋先生(国語)
中学・高校入試や、新課程になって探究の発表などもあり、思っていたより時間に余裕がないと思いました。国語はやりたかったディベートまでまだやりきることができていません。探究のプレゼンテーションの資料作りなど、探究活動を念頭に置いた年間計画を立てることが出来なかったため、あわただしいなかで定期考査まで来てしまったという感覚です。
徳永先生(英語)
1月に実力考査と英語検定、2月に定期考査と探究の発表会、3月は入試などの行事があり、3学期は本当に早いですね。冬休みは、夏休みにできなかったことができた生徒が増え、主体的に学習する生徒も増えてきたように感じます。3学期は探究の発表がありましたが、生徒に任せている部分も多いので、教員の負荷は大きくありません。しかし生徒は大変だったと思います。英語では、動画やプリントも使用してディベートを行いました。準備は大変でしたが、生徒も楽しんでくれて、やってよかったと思っています。
落合先生(数学)
秋の模試や後期中間考査を踏まえて、学習計画表を作りました。
また、冬の面談では、この先どのように勉強するかを生徒が保護者に説明し、計画をやり切るという宣言もしてもらいました。。

1月模試の結果を見ると、ある程度うまくやっていたのではないかと思います。生徒の学習時間については、時期ごとに比較していますが、だんだん増えています。

ただ、学習に関しては二極化してきている様子もうかがえて、学習した時間よりも学習する中身が大事で、「テストに合格するための学習ではなく、自分のための学習をしよう」と生徒には伝えています。
進行役
生徒と目線合わせをし、「何のためにやるか」を明確にすることは大事ですね。また、先生方のお話から、3学期は限られた時間の中でのバランスのとり方が難しいと感じます。

学習計画書

02. 模試前後の動きや工夫

フィードバックは早ければ早いほうがいい

進行役
模試の話も出ましたが、11月模試から1月模試の前後で、気を付けていることはありますか? 外部試験の話もあればお願いします。
徳永先生(英語)
今回は生徒と一緒に私も英語検定を受検しました。生徒と一緒に達成できて良かったですし、生徒も結果がついてくることでモチベーションになったと思います。模試については、2月中旬実施のハイレベル模試を規定日より早めに実施しました。レベルが高くて良い点もありましたが、すぐにフィードバックできなかったのが反省点でした。模試の復習は早ければ早いほど良いと思っています。
石鍋先生(国語)
生徒が模試の結果をネットで見て、教員より先に知っていたりしますよね。今年本校では、学年の進路担当から、過年度の比較を保護者に報告しました。この話を生徒にもしたいと考えています。例年は徐々に国語の成績が落ちていきがちですが、今年度は少しずつ上がっています。具体的な指導では、とにかく書かせることを重視しています。生徒は記述に対する抵抗感がなく、そのおかげで少しずつ模試の成績が上がっている感じです。
落合先生(数学)
模試の集計結果は生徒に見せました。数学は、成績下位層が減り上位層が増えて、過年度比較で見てもいい状態だと教科担任の立場で感じています。もう少しできることがある生徒や気になる生徒とは、春休み前に面談しようと思っています。
また、数学の定期テストは既習範囲全部から出題して、最近習ったことは基礎的なことを、以前習ったことは深く出題しています。学年末考査の範囲は1年分の既習範囲で、模試もテスト範囲に入れています。そこへの導きとして毎日の復習プリントである「日々プリ」があり、優先度の高い問題を何度も出しています。また、計算自体は易しく、考え方を押さえられるように問題を工夫しています。考え方が定着すれば応用もでき、見たことのない問題を解けるようになると考えています。
進行役
模試は、フィードバックのスピードが大事だとあらためて感じました。間が開くと忘れてしまいますよね。アウトプットの力がじわじわきいてくるという話もとても興味深いと思いました。他に、模試結果の活用方法など、工夫されたりしていること、また関連した行事などはありますか?
落合先生(数学)
2月は学び方を学ぶための学年集会を実施しました。模試結果を見せ、計画が予定通りに進んでいるかを考えます。また、自分がどのような学び方をしたことがあるかが視覚化できるパターンランゲージのレーダーチャートを作りました。その紙をもって他の生徒に具体例な勉強方法を聞いて、生徒は他の生徒の学び方を知った上で、春休みをどう過ごすかを考えました。

03. 春休み、2年生に向けて

積み残さないように基礎を完璧に

進行役
春休みに定着させたいこと、2年生に向けて教科としての課題や目標があれば教えてください。
徳永先生(英語)
まず、語彙と文法だと思っています。特に単語は英語から日本語がすぐ出るようにしたいです。今回英文解釈のテキストも購入し、春休みに進めていったらいいとアドバイスするつもりです。また、CNNのリスニング教材などを使い、生徒自ら取り組めるような形に持っていきたいです。自分の苦手を自発的にやろうと思えるような仕掛けをしたいと考えています。
落合先生(数学)
できないことと向き合う時間が大事だと考えているので、自分で優先順位を決めてやってほしいと集会でも話しました。

そのために一律の課題の負担は減らし、春休みの課題の提出物は学習記録と感想を書くだけの簡単なものにします。

質問がしたい、添削をしてほしいなど、内容を見てもらいたい生徒だけノートを出します。
石鍋先生(国語)
国語の場合、覚えなければいけないものは多くないですが、積み残してしまうと、置いていかれ続ける結果になります。積み残さず、今年度のことは今年度のうちに全て解決し、1年の終わりには基礎を確実にしていきたいです。国語は、3年間の中で完璧にしなければならないものは繰り返そうと思っています。
進行役
共通テストの国語も文法の知識がないと解けない問題でしたね。まずきちんと基礎を抑えることが大事だと感じました。

R04春休み課題表(印刷用)

04. 教科「情報」の状況

情報を見据えて、主要教科は授業の前倒しも検討

進行役
教科「情報」について、他教科への影響や担当の先生についてのお話をお聞かせください。
徳永先生(英語)
教科「情報」も見据えて、英語は2年生が終わった時点で一歩ひきたいと思っています。3年生では、自宅で解いてきて授業で解説するイメージです。情報は、今年は数学の先生で情報が得意な先生が担当しています。次年度以降は情報の専任が実施予定です。
石鍋先生(国語)
具体的に話しているわけではありませんが、国語も2年生までのイメージです。今年度の本校の情報担当は講師の先生です。今後についてはまだはっきりとは決まっていません。
落合先生(数学)
理科・地歴公民・情報を見据え、国数英は前倒しで終わらなければいけないと思っています。一教科増えるのはすごく大きいですね。多くの国公立大学の受験科目で必要となるので、どこかで情報のための時間を確保してあげたいです。

05. 「総合的な探究の時間」について

探究の成果や経験を高大接続につなげる

進行役
探究活動は新課程では重視され、大学入試、特に総合型選抜に繋がると言われます。それぞれの学校の中での探究の位置づけや、取り組んだことがどう大学入試に繋がっていくのか、状況や学校内における先生の共感度なども教えてください。
石鍋先生(国語)
本校は中学もあるからだと思いますが、「探究部」という分掌として5名の先生が中心に推進しています。「探究の大泉」と言われており、探究部と探究担当の先生方で協力して総合的な探究の時間を行っています。
徳永先生(英語)
SDGsを絡めるなど、取り組み内容はプラスになっています。教員の負担もそこまでない点ではいいのですが、本校では定型化してしまっている部分もあるので、もっと踏み込んでやっていくと、さらに成果が出るかもしれないと感じています。
落合先生(数学)
SGH指定校だったころからの流れで、探究はやるものと思っていて、学校全体で力を入れています。学習計画書は京大の推薦に、探究は東大の推薦論文に使えるので、探究の大切さがわかると、結果的に欲しいものが手に入るという経験につなげていきたいです。主体性評価では物差しが増えたので、行動することが評価されるとの意識共有も大事です。生徒にも、失敗するとしてもやってみることそのものに価値があると捉えてほしいです。

06. 一年を振り返って

新課程だからこそできた新しいことへのチャレンジ

進行役
1年を振り返り、印象的だったことなどをお聞かせください。新課程や評価軸についても感想があれば教えてください。
落合先生(数学)
本校では1年生の学年主任をはじめて担当しましたが、新課程でよかったことがたくさんありました。新課程については個人的には、やりたいことを前例に遠慮せずにできると思っているのでこれからもうまく利用したいです。主体性評価についてもありがたく感じていて、生徒には失敗するチャンスをあげたいと話しています。この学校に来てよかったと思ってもらえるようにこれからも頑張っていきたいです。
石鍋先生(国語)
新課程は、一言で言えば「バランス」がキーワードだと思います。これまでも必要だった学習とこれまでやれなかったことをやる両立のバランスです。教科内で言えば、話す・聞く・読む全てやらなければいけない中でのバランスのとり方が重要でした。学校内外の様々なお話をお聞きしながら、新課程では前例にとらわれることなく、やりたいことやれたと思います。
徳永先生(英語)
新課程になったからこそ様々なことに挑戦でき、たくさん種を撒けたと思います。ディベートや教科「情報」を見据えた学習進度など、新課程がなかったらきっと例年通りだったと思います。新課程で新しいことにチャレンジでき、それに生徒がついてきてくれている感じもあるので、来年も楽しみにしています。
進行役
新課程をポジティブに感じられていたところが印象的でした。1年間、様々なお話をありがとうございました。3回の座談会を通じて、新課程の輪郭がはっきりしたと感じています。私自身も軸を持てました。ありがとうございました。

学校紹介

東京都立大泉高等学校
1学年約120名、2021年度のおもな進路状況:国公立大43名、(うち難関国立大7名)

岐阜県立大垣北高等学校
1学年約320名、2021年度のおもな進路状況:国公立大200名、(うち難関国立大50名)

福岡県立筑紫丘高等学校
1学年約440名、2021年度のおもな進路状況:国公立大227名、(うち難関国立大106名)

編集後記

営業担当

1年間、新課程をテーマに語りあっていただきました。
地域、学校、教科は違っても、先生方も生徒たちと同じように、前例がない中で試行錯誤し、チャレンジしていく姿勢がとても心に残っております。我々も、今後も先生方と一緒に語りあい、できることを考えてまいります。

2023年1月 取材
2023年4月 3日 公開

おすすめの教材

基礎事項の深い理解を通して、確かな学力を身につけることを目指す『進研WINSTEPシリーズ』。2022年度よりスタートする教育課程に対応し、新課程版としてリニューアルいたしました。難易度・目的・時期などに応じて様々な教材をご用意しております。

『進研WINSTEPシリーズ』