指導事例 新課程での指導事例 座談会 第五回

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指導事例【低学年】新課程における指導の在り方を考える座談会 第四回

指導事例 vol.041

さまざまな学校課題や指導テーマに対して指導を工夫されている先生方に取材を行い、その実践をご紹介する連載企画「指導事例」。

新課程における指導事例をお伺いするため、2022年度に1年生、2023年度に2年生をご担当されている先生方3名による定期開催の座談会を企画しました。これからの共通テスト・進路実現に向けた大学受験指導のご参考になれば幸いです。

新課程での指導事例 座談会 第五回

石鍋 雄大先生
東京都立大泉高等学校附属中学校主任教諭。国語指導担当。
教職歴11年、同校に赴任して7年目。現在は2学年の「論理国語」「古典探究」と、3学年の「現代文B」を担当。「楽しくて力の付く授業」を目指して授業デザインを行っている。 現在は、ICTの使用や外部との連携を通して、生徒が教室の外に目を向けられるような授業を目標としている。

落合 一大先生
岐阜県立大垣北高等学校教諭。数学指導担当。
教職歴24年、同校に赴任して7年目。現在は高校2年生の学年主任を担当。本校赴任前は3年間の県外交流で鹿児島県に県外派遣。生徒が主体的に考えさせる数学の指導法の確立に尽力している。また、校内のICT推進担当として、授業や校務におけるICT化にも力を入れている。

徳永 拓也先生
福岡県立筑紫丘高等学校教諭。英語指導担当。
教職歴14年、同校に赴任して4年目。現在は高校2年生を担当。ICTを活用しながら、母校でもある現任校で学年の先生方とチームとなり生徒の英語力向上に努めている。また、英語教育今井塾やチームキムタツをはじめとする県内外の研修会に参加し、より良い授業を日々探求している。

01. 2学期の振り返り

進行役
2学期全体を通していかがでしたか?
落合先生(数学)
今年は、コロナ禍で中断していたかつての文化祭が実施できました。生徒にとっては初体験で、ゼロベースでしたがよくやったと思います。学年全体で非認知能力を大事にしており、準備等も含めて人を楽しませることに目が向いたことはよかったと思います。前期が終わったところ(9月末)で、「学年全体で、ここから勉強に向かっていくぞ」という進路集会を行いました。
徳永先生(英語)
コロナ禍以前の形に近い体育祭では、慣れていないこともあり準備等大変そうでしたが、なんとかやり切ることができました。いい経験になったと思います。行事が多い2学期でしたが、スケジュールを都度告げて、一つひとつを頑張ってきたら、ここまで来られたという感じです。
石鍋先生(国語)
文化祭、修学旅行、インドネシアからの留学生受け入れ、探究の論文提出があり、生徒にとってはすさまじい2学期だったと思います。忙しい中でも規律を守り、力を発揮できていました。
進行役
「探究」として新たに加わった行事などはありますか?
石鍋先生(国語)
本校は、東京都の「知的探究イノベーター推進校」だったので、新課程を前倒しで探究活動の「探究論文」に取り組んでいました。
落合先生(数学)
以前のSGH指定校の流れで、地域にも目を向けたグローカルな視点も取り入れてSDGsの観点を取り入れた探究活動に取り組んでいます。
徳永先生(英語)
本校は新課程になってから変わったという行事はないですが、個人研究やグループ研究をバランスよく行っています。

02. 2年生の大きなテーマの進捗状況(国数英の完成)

進行役
教科指導の面で、変化したこと(進度やトピック)はありますか?
落合先生(数学)
新課程になって文系も全員「数学C」を履修しているので学習量は増えています。あまり深い内容までは扱わず、2年生の終わりで理系に「数学Ⅲ」が少し残るくらいのペースで進めています。文系の生徒は統計的な推測・式と曲線・複素数平面の3分野が追加され、今までの1.5倍くらいの量があります。勉強のキャパシティが少ない生徒をどこまでひっぱるか注意をしていかなければならないと思っています。試作問題をみると、複素数平面と式と曲線で1つの大問なので内容は浅く、統計的な推測と複素数平面、式と曲線とあと1つやれば対応ができるのではないかということと、さらに式と曲線を学習すれば2次関数の理解も深まる、複素数平面を学習すればとベクトルの理解も深まるということで「数学C」をやっています。頭に入れることが多いのでバランスをとる必要があります。
徳永先生(英語)
共通テスト型のリスニング教材は2冊終えることができました。教科書は11月頭に終わって従来は3年生で使っていた問題集で演習に入っています。2年生の3学期は神戸大や大阪大の問題を入れて英語を完成させる予定です。リスニングの時間は文法の時間を削って確保しました。また、予習を減らしましたが模試の結果はよく、非常に良い状態だと思います。
石鍋先生(国語)
現代文は文系理系とも問題がありませんが、理系の古文漢文は3年生で時間が取れないので、今後自分で学習が進められる素地をつくっておきたいと思っています。問題集や辞書を引く習慣をつけさせるために、図書館で辞書や全集、単語帳などの資料を参考に源氏物語や史記などを訳させました。源氏物語を選んだのは、一文が長く訳出がしにくいこと、主語が不明瞭でしっかり読む必要があること、敬語表現が多いこと、図書館にたくさんの資料が揃っていることなどが理由です。理系は共通テストを目標に2年生の3学期中に基礎を完成させる予定です。

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03. 2年生11月模試の振り返り

進行役
2年生11月模試の結果をみてよかったところ、改善点などがあれば教えてください。
落合先生(数学)
生徒には「夏休みにきちっと学習していたら2年11月の模試で手ごたえがわかる」と指導していました。結果は7月に比べて文系が少し落ち込んだものの学年全体では例年並でした。この時期は2次曲線や複素数平面を履修中だったのである程度予測はついていました。文系の進度は統計的な推測を1ヶ月半かけてじっくりやるので、年内か年明け1週間で終わる予定です。理系の進度はこれまでと変わりありません。
徳永先生(英語)
平均点、偏差値ともに、目標よりも良い結果になりました。全体的にすべての学力層で伸びており、理想的な結果になったと思っています。
リスニングは朝のトレーニングや海外のニュース教材を自主的に取り組ませていたのが功を奏したと思います。文法は、小テストをやっていないにもかかわらず点数が落ちていませんでした。一方、小説系の長文読解が弱く、国語の新課程の影響(授業で小説をあまり扱えていない)もあると思っています。説明文の長文読解はできていたので、生徒の特徴も出ていると思います。

良い結果が出たのは、模試の前に基礎英文精講を宿題としてやっていたことが大きかったと思います。また、得点の下位層は声かけや再テストをしっかりやったのと、生徒自身に宿題を決めさせていたことが、よい結果に結びついたと思います。

文法は共通テストで出題されなくなったこともあり、教え込みからプリントを配ってわからないところだけを解説するなど、重みと方法を変えました。それでも読解はできているので効率が良くなっていると思います。

石鍋先生(国語)
論理的な文章は、単位数が減っていないのと書かせる時間を多く取っていることもあって、成績はよいです。入試小論文や信州大学などの記述問題を例にし、生徒に長めの文を書かせる中で論理的思考や文章が構築できるよう取り組んでいます。

04. 国・数・英と理科・地歴公民・情報の学習バランス

進行役
国数英以外の理科・地歴公民・情報が入ってきた際のバランスはどうでしょうか?
落合先生(数学)
情報は、2年生で履修しているので、3年生での対応が課題になってきます。主には共通テスト前に対応する事になると思いますが、他教科とのバランスも考えながら調整する必要があると思います。また、地歴公民に本格的に取り組むためにも国数英を2年生までに今まで以上に仕上げないといけないと強く思っています。生徒も理科・地歴公民と情報への対応はだんだんリアルに感じるようになります。
徳永先生(英語)
情報は2年生で履修して、共通テストへ向けては3年生の放課後の課外補習で対応する予定ですが、まだ詳しいことは決めていません。特に模試対策はやっておらず、2年生のうちに国数英を完成させて、理科・地歴公民は3年生で完成させることは生徒との共通認識になっています。
石鍋先生(国語)
情報は1年生でやっており試作問題もある程度解けたようなので、生徒に焦りはないようです。理科・地歴公民は最後まで終わらないということを生徒たちは理解しているので、国数英は2年生で完成させないといけないという気持ちを持っているようです。

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05. 2年生1月模試、2年2月共通テスト模試の位置づけ

進行役
1月模試、2月共通テスト模試の位置づけをお聞かせください。
落合先生(数学)
模試で点数を取ろうという話よりも、自分が何をしたいのか、これからどうするのかを学習計画シートを使って見つめようという話を保護者面談でしています。1月模試の2週間後にマーク模試がありますが、初めてのマーク模試は、見たことがない問題に触れるチャンスでもあるので普段の勉強でどのくらい点数が取れるかを見て、自分の勉強の振り返りと事後指導に活かせればいいと思います。
徳永先生(英語)
冬休みの学習計画を立てさせて、その結果を1月模試で見ようと生徒たちに伝えています。
石鍋先生(国語)
1月・2月に模試という話よりも、生徒にも保護者にも3年の4月模試の得点率と(大学入試の)合格率の関連性の話をしています。

06. 共通テストの対策・指導について

進行役
共通テストを見据えた指導の流れや変化はどうでしょうか?
落合先生(数学)
情報量が増えたので、生徒が取捨選択をする場面が多くなりました。選択する際の優先順位の付け方など、ある程度ガイドをしていかないといけないと考えています。ひと通り教科書が終わったあとで、各分野のどの問題を優先するかなど、例えば微積の問題で今の段階ではこの問題は解けなくてはいけないが、この問題はまだ解けなくてもいいなどを全体に向けて伝えています。
徳永先生(英語)
リスニングは2年生までである程度できたので安心しています。リーディングは2次(試験対策)の問題をやりながら切り替えていく予定です。ただ、不安な生徒だけ朝課外にリーディングの時間を取らせようと思っています。また、下の層もはっきりしてきたので、この生徒たちの力を上げていくかが今後の課題になっています。
石鍋先生(国語)
共通テストで加わる実用文に関しては、これまでと変わりはないと思います。ただ、共通テストの国語は文字数が増え、90分で問題を解くことは難しいので、時間感覚と問題形式に慣れさせるため、冬休みは共通テスト型の問題集を一冊用意して最低2セットはやるよう指導しています。

07. 2年生のゴール

進行役
3年生になるまでに、できておいてほしいことを教えてください。
石鍋先生(国語)
現代文に関してはすぐ問題に取りかかれるようになってほしいです。特に理系の古文・漢文は模試の解説が読めるようになって、自分で勉強ができるようになっていてほしいです。
落合先生(数学)
数学では、模試で解けなかった問題を振り返ったときに、解答を導く着眼点に気づけるようになっておいてほしいです。例えば、白紙解答だった問題の解説を読んだときに、問題文のこの部分に着目しておけば解けたんだ、と気づく力が身についていると、自分で勉強を進められる状態になっていると思っています。
徳永先生(英語)
生徒たちが少しでも2年生までに完成したと思えるようになってほしいです。例えば、共通テストで90%や目標単語数をほぼクリアしたなど英語に自信を持って、他教科の学習に取り組めるようになってほしいです。

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学校紹介

東京都立大泉高等学校
1学年約120名、2021年度のおもな進路状況:国公立大43名、(うち難関国立大7名)

岐阜県立大垣北高等学校
1学年約320名、2021年度のおもな進路状況:国公立大200名、(うち難関国立大50名)

福岡県立筑紫丘高等学校
1学年約440名、2021年度のおもな進路状況:国公立大227名、(うち難関国立大106名)

編集後記

営業担当

高校3年間の折り返し地点を過ぎ、先生方が、新課程の背景を押さえながら、入試の変化に対しても創意工夫をされていることがよくわかりました。この連載では、引き続き、近づいてくる新課程入試に向けて、先生方と一緒に考えていきたいと思います。

2024年2月 取材
2024年3月21日 公開

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