指導事例 新課程での指導事例 座談会 第四回

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Learn-S 指導事例【低学年】新課程における指導の在り方を考える座談会 第四回

指導事例 vol.036

さまざまな学校課題や指導テーマに対して指導を工夫されている先生方に取材を行い、その実践をご紹介する連載企画「指導事例」。

一年を通じた低学年の新課程指導事例をお伺いするため、今年度2年生のご担当となった先生方3名による定期開催の座談会を企画しました。これからの共通テスト・進路実現に向けた大学受験指導のご参考になれば幸いです。

新課程での指導事例 座談会 第四回

石鍋 雄大先生
東京都立大泉高等学校附属中学校主任教諭。国語指導担当。
教職歴11年、同校に赴任して7年目。現在は2学年の「論理国語」「古典探究」と、3学年の「現代文B」を担当。「楽しくて力の付く授業」を目指して授業デザインを行っている。 現在は、ICTの使用や外部との連携を通して、生徒が教室の外に目を向けられるような授業を目標としている。

落合 一大先生
岐阜県立大垣北高等学校教諭。数学指導担当。
教職歴24年、同校に赴任して7年目。現在は高校2年生の学年主任を担当。本校赴任前は3年間の県外交流で鹿児島県に県外派遣。生徒に主体的に考えさせる数学の指導法の確立に尽力している。また、校内のICT推進担当として、授業や校務におけるICT化にも力を入れている。

徳永 拓也先生
福岡県立筑紫丘高等学校教諭。英語指導担当。
教職歴14年、同校に赴任して4年目。現在は高校2年生を担当。ICTを活用しながら、母校でもある現任校で学年の先生方とチームとなり生徒の英語力向上に努めている。また、英語教育今井塾やチームキムタツをはじめとする県内外の研修会に参加し、より良い授業を日々探求している。

01. 春休みの振り返り

進行役
昨年もご担当いただいた3名の先生方ですが、ご異動などなく2年に持ち上がりました。早速、春休みの振り返りを教えてください。
落合先生(数学)
春休みは自主的な課題を増やす方針でやってみました。手ごたえもありましたが、取り組みが少ない一部の生徒との二極化も感じました。ところが春休み明けの校内テストは思った以上にできていて感心しました。全国での相対的な立ち位置は、7月模試の結果で確認したいです。
石鍋先生(国語)
春休みは年間通じて取り組む問題集を使用しました。また積み残しをつぶすため、古文の基礎プリントも配布しました。4月の模試では思ったより古文・漢文ができておらず、1年時の積み残しはまだある印象です。
徳永先生(英語)
学校行事が多い3月は、先生は忙しいですが生徒には時間があるので、英文法の課題を「今のうちにやっていたほうがいいよ」と促すような形で課したのですが、周知連絡がうまくいかず、取り組んだ生徒は2~3割で、結果的に春休みに大変な思いをした生徒が多かったです。自主性を生かした取り組みを全体に広げるのは結構難しいと感じました。

02. 2年生の指導のテーマ

進行役
2年生の指導の大きなテーマについてお聞かせください。
落合先生(数学)
国数英に関しては「学習スタイルの確立」をしてほしいです。そして3年生では自走できるようになっていてほしい。数学では、自分はこうやっていけばうまく行くというものをつかめるように、「何をやるか」ではなく、この問題集を「どうやるのか」を留意してもらいたい。模範解答を見るだけでなく、書けなかった一行が書けるようになるための行動を考え、「なぜこうしようと思ったのか」という思考力・「どこを見てこうしようと思ったのか」という判断力を鍛えてほしい。
石鍋先生(国語)
私も2年では教科問わず自走してほしいと思います。本校では7月に来年度の自由選択科目の説明会があり、自分の目標に向けて自走してもらっています。国語に関しては、理系の生徒は今年度で古典の授業が終わってしまうので、今のうちに古典の完成を目指しています。
徳永先生(英語)
英語は一貫して『2年生で完成』をずっと言い続け、浸透してきています。まず英語を仕上げ、他教科に時間を回したいです。気持ちは3年生のつもりで、共通テストや個別大試験も高2の段階でできるように練習しています。高1は文法と単語/高2はライティングと音読/高3は自由英作文など、といったように、計画的に決めて取り組んでいます。

03. 1学期の指導

進行役
1学期の取り組みや時間の使い方をお聞かせください。
徳永先生(英語)
生徒に時間を返す。強制的にさせる量を減らし、予習や宿題含めて自主性を促しています。課題も長いスパンで出し、自分で考えて計画を立てさせる工夫をしています。中だるみしやすい時期なので、とにかく『英語は2年生で完成』を言い続けています。
落合先生(数学)
数学はできる生徒は時間がかからないが、苦手な生徒は時間がかかる傾向にあるので時間の使い方については一概に言えない部分があります。取り組みが不十分な場合については、あとで気づいて反省できればよいと思っています。他教科に時間が必要な場合は、効率的な時間の使い方を考えて数学を後回しにすることがあってもいいと思います。
石鍋先生(国語)
国語は授業で完成させています。長期課題はありつつ、ある程度余裕を持たせて指導していました。

04. 模試の位置づけ

進行役
2年生7月・11月模試の位置づけを教えてください。
徳永先生(英語)
7月模試の位置づけはすごく大事だと思っています。今回生徒たちを自走させるような仕掛けをしているので、例年並みくらいであればうまくいっているかなと思っています。今年、リスニングにも力を入れて取り組んだので例年と比べての定着を確認したいです。
落合先生(数学)
7月模試では2年生のスタートを見ます。11月模試では、これまでの指導、学習の成果を見ます。文系は数Cをしっかりやる分、演習に入るのが遅れる。その影響や、文理差を見てみたいと思っています。
石鍋先生(国語)
模試の位置づけは生徒も教員も、入試を見据えた形成的評価(結果を振り返って今後の指導や学習に活かす)の側面が強いと思っています。新課程でどうしても遅れてしまうところはあって、その中で個々の生徒たちがどのようにできているのか教員側で確認していきたいです。

05. 新課程の影響

進行役
新課程での影響や考えがあればお聞きしたいです。
徳永先生(英語)
地歴公民や情報の影響がどこまで出るかわからないですが、その時に備えて国数英は少しでも時間を渡せるように考えています。できることを先にやっておくのが大事だと思っています。
落合先生(数学)
地理や情報の問題もありますが、歴史は結構時間がかかっていて、探究をじっくりやる時間がないという話も聞いています。国数英の仕上げを早めて高2までにある程度のレベルまで完成させたいと思っています。
石鍋先生(国語)
3年生では理社、数Ⅲに力を注いでほしいと思っているので、国数英に関してはこのタイミングでやらないといけないと感じます。

06. 共通テストに向けて

進行役
いつぐらいから共通テストを意識していきますか? 意識づけはどのように考えられていますか?
落合先生(数学)
教科書の指導が終了する時期が遅くなることを踏まえ、早くから少しずつ触れていきたいと思っています。形式に慣れるために2年生のうちから共通テストの過去問に取り組む経験もさせたいと思っています。新しい分野は過去問がないので練習をどうしたら良いか考えていますが、条件はみんな一緒なので、試行問題を参考にこれから考えます。
石鍋先生(国語)
2年生で同日模試を受けるので、冬休みの課題は問題集を1冊やって備える予定です。古典のカリキュラム上どうにもならない生徒達は学年全体で問題集を買い、履修してなくてもやらせています。
徳永先生(英語)
この時期が来たらするという今までの考え方はやめ、入試から考えた逆算で取り組みます。リスニングに関してはもっと早くやらないといけないと思い、朝課外で取り組んでいます。3年生2学期後半ぐらいからぐっとリーディングを詰めるイメージです。

07. 進路指導

進行役
進路指導の取り組みや、総合型選抜も含めて新入試への生徒の反応があれば教えてください。
落合先生(数学)
新入試については大きな変化は感じません。生徒には、「一般入試は1を10とか100にする生徒、難関の総合型は0を1にする生徒の方が向いている。自分はどちらのタイプなのか夏休みに考えられるといいね」と話はしました。やはり王道は一般入試だと思っています。
石鍋先生(国語)
新入試は私も大きな変化は感じていません。探究にしっかり取り組んできたので総合型選抜を目指す生徒も増える予想でしたが、一般入試をメインにする生徒がほとんどになりそうです。オープンキャンパス参加への意識は例年より強いと思います。
徳永先生(英語)
新入試の影響かはわからないですが、浪人を避けたいという生徒がかなり増えてきたなという印象があります。

08. 2学期に向けて

進行役
2学期に考えていることがあればお伺いできればと思います。
落合先生(数学)
まずは文化祭にのめりこんでほしいです。学校行事の力は大きく、のめりこんだ経験がエネルギーになると思います。勉強は、自分の勉強スタイルを見つめ直す機会を作ります。余裕を持ってできる最後の時間なので、失敗しても、上手くいっても、その後につながるようにしたいです。
石鍋先生(国語)
部活動や学校行事でも中心になる時期なので、受験だけでなく学校生活をきちんと作って楽しんでほしいです。それまでは国数英の課題はあまり多くない印象です。自分のやりたい事、やるべき事に対して一所懸命取り組んでもらえたらいいと思っています。
徳永先生(英語)
来年は3年生になり、運動会のリーダーとして忙しくなるので、夏休みのうちはあまり勉強できません。リーダー経験も大事な経験なので、今年(2年生)のうちに自分たちでやれることを増やし、勉強を頑張ってやっておこうと話をしています。
進行役
新課程で手探りの中でも、昨年から継続してポジティブに捉えてチャレンジされていると感じました。また今年度も引き続き、よろしくお願いします。

学校紹介

東京都立大泉高等学校
1学年約120名、2021年度のおもな進路状況:国公立大43名、(うち難関国立大7名)

岐阜県立大垣北高等学校
1学年約320名、2021年度のおもな進路状況:国公立大200名、(うち難関国立大50名)

福岡県立筑紫丘高等学校
1学年約440名、2021年度のおもな進路状況:国公立大227名、(うち難関国立大106名)

編集後記

営業担当

2年生では、新課程での変化を捉えつつ、入試を見据えて働きかけが進んでいることを教えていただきました。授業だけではなく、行事も良い機会として生徒の主体性を育まれているのが印象的でした。先生方、また今年度もよろしくお願いいたします!

2023年7月 取材
2023年9月19日 公開

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