研究会レポート(国語)『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~』

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2023年6月24日 開催 研究会レポート(国語)
『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~』

2023年6月24日(土)、東京都 芝中学校・芝高等学校石渡健児先生、西山晴明先生をお招きし、オンラインにて『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~』を開催いたしました。ご講演の内容をレポートいたします。

研究会の詳細

講師紹介

石渡 健児先生(東京都 芝中学校・芝高等学校)
古文担当
逗子開成中学校・高等学校を卒業後、國學院大學・同大学院で文学を学ぶ。在学中は『源氏物語』および『古今和歌集』の勉強会に参加。芝中学校・芝高等学校の専任教諭となってからも、クラス運営や生徒対応に活かすため、大学に学士編入し心理学を学ぶ。ガイダンスカウンセラー・公認心理師の資格を持つ。授業では主に古文を担当し、直近3年間は続けて高校3年生を受け持つ。座右の銘は「文武両道」「一意専心」。

西山 晴明先生(東京都 芝中学校・芝高等学校)
漢文担当
教員歴25年目。群馬県沼田市出身。小学校から高校の間に所属していた卓球クラブチームで、仲間の応援や後輩のサポートをきっかけに教えることにやりがいを感じ、国語教員を志す。大学では中国文学科で学び、中国語の辞書と格闘する生活を送った。芝中学校・芝高等学校の専任教諭となってからは、6年間学年を持ち上がる形で、3度卒業生を送り出した。「楽しくなければ学校ではない」を大事にしている。

研究会

研究会 『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~』
日時 2023年6月24日(土)
対象 全国の高等学校・中高一貫校(中等教育学校)の先生
開催形式 ZoomでのLIVE配信

研究会レポート

講演の主な内容

・3年生1年間の指導について
・古文の指導について:石渡 健児先生
・漢文の指導について:西山 晴明先生
・さいごに

3年生1年間の指導について

古文・漢文指導のポイント

進行役
さっそくですが、3年生の古文・漢文指導のポイントをお聞かせください。
石渡先生(古文)
2年生までは検定教科書に採録されている作品をじっくり読む、教科書を使い尽くすというところがひとつのポイントです。教科書を使った普段の授業が入試に繋がっていることは特に意識しています。3年生1学期までは源氏物語を読み、3年生2学期には『重要問題演習』を用いた演習と国公立大学の二次対策を実施します。
西山先生(漢文)
漢文は高校3年生の時に何かをするというよりはそれより前のところで各ジャンルの全訳を中心に、広い視点から細かい話に展開するという方向性で授業をしています。その延長で大学入試の問題をやっていく形です。具体的には1学期中間考査まで老子・荘子の時間内全訳、1学期期末考査までにセンター・共通テスト過去問演習と私大過去問演習、2学期期末考査までに『重要問題演習』を用いた共通テスト演習を実施します。

共通テスト指導で意識していること

進行役
具体的に共通テスト指導で意識していることをそれぞれお聞かせください。
石渡先生(古文)
最終目標は「初見の古文を自力で現代語訳できる」です。そのために必要な能力が単語力・文法語法力・読解力・古文常識力・情報処理能力の5つです。文法語法だけでなく古文常識などを総動員して、幅広い意味での読解力が必要になると思います。だからこそ理系の生徒であっても入試で古文があり、必要な情報を見極める力や情報処理能力が試されているのだと考えています。
西山先生(漢文)
共通テスト指導で意識していることの1点目が「内容理解の正確さ」です。漢文は、現代文・古文と比べると学習事項が少なく、暗記量も少ないので正確に理解できれば高得点に繋がります。ただし逆に正確に理解できていないと大きな失点になります。2点目が「読解のスピード」です。共通テストの国語は情報処理の量が多く時間がかかるので、最も知識量が少なく解け、時間が省略できる漢文で、解答時間に余裕を持たせるのも使命だと感じています。

直前期における二次対策との兼ね合い

進行役
次に直前期における個別試験対策との兼ね合いについてご紹介下さい。
石渡先生(古文)
どの大学であってもベースは的確に読めること。直前はあくまでさまざまな練習をする時期で、高校3年生1学期までに内容を読み取るためのベーシックな内容を共有しておけるかが大事だと考えています。
西山先生(漢文)
私は個別試験対策から始めています。人の思考をまとめる時には文字に起こすのが一番有効な手段と思っているので、全訳をしています。いくら選択肢を選ぼうとしても頭の中で想像したものが本当に解答になっているかどうかは書かないとわかりません。各大学に合わせた答え方の指導をすることはありますが、直前期になってから特別に対策するわけではありません。

古文の指導について:石渡健児先生

取りこぼさないように情報処理能力を育てる。問題演習の繰り返しも必要

前回の共通テストを見ていくと、国語の大問中で古文の平均点が一番低くなっています。また、データを見ても上位層では得点できていますが、中間層からは得点ができず、差がついています。古文・漢文の取りこぼしをどう防ぐかというのは大きな課題です。そのためにも、文法語法や古文常識を総合して活用する情報処理能力を育てていきたいですね。

最後には問題演習も必要だと思います。私は『重要問題演習』を使いました。複数テキストなど新しい傾向の様々なパターンを学べ、問われやすい基礎知識がコラムとして載っているので何度も使用しました。これが個別試験の準備にもつながっています。

共通テスト問題演習の授業の具体例

教材の制限時間20分の所を約17分で解いてもらいます。その後5~7分くらいで現代語訳を一度読んでしまい、その間に自分で丸つけをする。そして周りの仲間と一緒にこの問題が難しかったなど話をさせています。残る15~20分くらいで問いを絞ってあらゆる可能性を共有し、必ず解説をします。残りの復習については細かく指示をだしています。

漢文の指導について:西山晴明先生

最初になぜ漢文を学ぶのか伝える。基礎の穴は問題演習で埋める

まず、なぜ古い上に中国の古典を学ぶのかを一時間かけて話をしてから授業に入るようにしています。漢文学習は句法や単語だけだとパーツは読めても選択肢が選べなくなってしまう。重要なのは、まず基本となる語順の形がきちんと入っていることです。一度理解してしまえばいくらでも転用ができますし、基本が分かれば、時代を経て残っている文章だからこその面白さもあり、生徒は自ら読もうとします。

漢文も取りこぼしが命取りになるので、基礎の穴をなくすために仕上げとして『重要問題演習』を有効活用させてもらっています。

共通テスト問題演習の授業の具体例

導入で大体10分ほど話をし、15~18分を目安に問題を解かせています。その後自由に生徒同士で話し、彼らの中で共通事項を得てもらい、20分ほど解説していきます。ただレベルが上がってないと感じる時には、最初の導入の中でテーマ性に近い小話を入れています。絶対に抑えるべき箇所があれば参考書のページなどを示し、今日寝る前に一回見ておいてと伝えています。

さいごに

石渡先生(古文)
私もまだまだ手探り状態です。5つの力を育てていきたいという話もしましたが、同時に主題の把握や主語を確実に抑える方法を早めに指導しています。単語を覚えれば自力で読めるようになると生徒もわかるので、入試直前まで単語や文法が追いついてくるのを待つイメージです。私もこれから勉強を続けていきたいと思いますので先生方からもお知恵を頂ければ嬉しいです。本日はありがとうございました。
西山先生(漢文)
配付したプリントを見ていただいて分かるように私も苦悩しながら指導しています。先生方は本当にお忙しいと思いますし、嫌になることもあるかもしれないですが、基本的に私たちが楽しく指導しなければ生徒は絶対に楽しく授業を受けてくれません。教員もメンタルケアをしながら一緒に楽しく生徒を育てていければなと思っています。本日はありがとうございました。

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2023年 6月24日 開催
2023年 8月10日 公開

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